異変 << マール 55 >>
北からの砂塵を含んだ風は、先程よりも強くなっている。
砂の含有量がかなり増えている。
髪にざらつくだけでなく、口にも入る。
何でもいい。
喰らいたい。
しかし、前方の王立騎士団のマリスは挑発に応じない。
マイノスさんの部隊から伝令が来て、小都市シエラが西の強国ギルドによって陥落したとのこと。
新世界ギルドの都市は、後方の小都市ポプラのみになったとのことでした。
負けるわけにはいかない。
軽率な行動は出来ない。
「都市の戦況はどうですか?」と、伝令役としてきていたマイノスさんの側近のゼノンに聞きましたら、「苦戦している」とのことでした。
特に、都市内で裏切りが発生しているかも知れないとのこと。
王立騎士団と戦闘の発生していない場所で、新世界ギルドの部隊に負傷兵が発生しているとのことでした。
私はその話を聞いて、ふとある可能性を感じました。
新世界ギルドに裏切りなんか発生するでしょうか?
私は気心知れた仲の良さを感じていました。
裏切りというよりはむしろ・・・。
私は伝令役のゼノンに、マイノスさんに2つのことを伝えてもらうことにしました。
一つは、王立騎士団のシャルルとマイネの姿を見かけていますか?ということ。
もしいなければ・・・。
もう一つは、北から何かが来ているというということ。
たぶん、それはマイノスさんが手配したものです。
私は、弱そうで臆病なマリスの部隊に、突撃を仕掛けたい誘惑を抑えました。
劣勢で、最後の力を振り絞り、無我夢中で攻撃する時だとは思いませんでした。
勝ち筋を見極め、冷静に歩を進める時だと感じていました。
私はゼノンがマイノスさんの陣に戻るのを見届け、再びマリスの陣に目を凝らしました。
何かが見えました。
マリスの陣の先の先に、何かが見えました。
戦いの女神が、私の鼻腔に甘い香りを漂わせたのです。
「がっ!」
私は大声で、全軍に戦闘態勢に入ることを伝えました。
何だ。
あれは何だ。
私はそれを見極めようと、身体の力を抜き、目を凝らしました。




