ビッグレイクギルドの防衛体制 << マール 53 >>
小都市アルンを攻撃していた王立騎士団の軍団が行方をくらませたことで、私たちビッグレイクギルドの本拠地に攻め込んで来るのではないかと、私たちは急遽防衛体制を作ることになりました。
本土決戦の準備です。
マイノスさんはこのビッグレイクギルドが攻撃される場合、もっとも可能性が高いのが南方の海からの攻撃の可能性が高いと考えていて、そのために南東の最も海に近い場所にギルド拠点を建設しました。
そして実際に、商人ギルドは南方より船団を率いて攻撃に来ていて、マイノスさんはギルド拠点からリヴァイアサンを召喚して、船団を壊滅させました。
ビッグレイクギルドの本拠地への攻撃経路は、他に2つあり、一つは西方からの攻撃です。
これは西の強国ギルドからの攻撃が想定されますが、湖の砦という防衛拠点を確保していることと、西の強国ギルドの更に西方には私たちの同盟ギルドである新世界ギルドがあるので、こちらはほとんど心配はないだろうと考えていました。
そして、逆にあまり想定していなかったのが、北方からの侵入経路です。
王都から小都市アルンを経由して南下し、大きな湖を通って海へと流れるロマール河の脇を通る陸路がありました。
この経路に関しては、途中にある小都市アルンが中央ギルドのものであり、この中央ギルドは私たちとかつて対戦したギルドではありましたが、勢力は大きくはなく、進行されるとは考えていなかったのです。
しかも中央ギルドは王立騎士団と敵対しているようで、先日は私たちが救援に行ったくらいでしたので、敵対者と想定する必要はありませんでした。
でも、王立騎士団が今回のように南下してくる可能性があるとなると、私たちはその準備が足りないことに気づいたのです。
まず、その陸路の一部にはロボシンクらが罠を設置してくれましたが、それは完全ではありません。
一時的に相手の行軍を警戒させる程度のものしか作れていません。
また北方からの行軍に対する防衛拠点もないことから、対策を考える必要がありました。
王立騎士団は、陸軍と空軍を保有していることは知られていましたが、王立騎士団の海軍は聞いたことがありません。
内陸部のギルドなので、海軍はほとんど保有していないでしょうし、技術の進歩もしていないでしょう。
ですので、河を下ってくる分には、ビッグレイクギルドの海軍の敵ではないでしょう。
しかし、陸軍や空軍で襲ってくるとなると、私たちが対処することは極めて難しいと思われました。
特に防衛拠点がないことが、大きなネックになるように思われました。
そのため、メンバーの村を重点的に強化して、防衛拠点の代替として利用させてもらおうということになりました。
候補は2つありました。
北東にあるベスレアさんの村と、北西にあるロボシンクの村です。
重要度からいうと、北西のあるロボシンクの村は極めて重要な位置にありました。
というのは、北東にあるベスレアさんの村はその先には海へと通じるロマール河があるだけだったからです。
一方、北西のロボシンクさんの村は、湖を左回りに進むと、陸路でその先の湖の砦、そして南東に湖伝いに進むとギルド拠点に到達するからです。
そして多くの人から出た意見が、西方そして南方へと陸路が通じるロボシンクの村を強化するより、その先に何もないベスレアさんの村を強化したほうが、敵の戦力を分散させるのには良いのではないかという意見でした。
ロボシンクさんの村に全ての戦力を集めてしまうと、敵はそこに集中して攻撃してしまう。
避けたほうが良いのではないかという意見が大きくなりました。
私たちもそれは一理あると考え、ベスレアさんの村を北方からの行軍に対する防衛拠点として育成することにしました。
もちろん、私も、誰かの村を重点的に強化するという、微妙な心理を理解していないわけではありません。
あえて、利害関係のまだ少ない新人のベスレアさんの村が選ばれたのも、そういう心理が働いてはいたでしょう。
また、私はミナコとローラに部隊が割り当てられたことに少し驚きました。
「早くないですか?」とマイノスさんに言いました。
「私やマイノスさんの側近を部隊長にした方が良いのではないでしょうか?」と聞きましたら、「彼女たちには部隊のリーダーとして成長してもらう必要がある。それと、私とマールの部隊は、可能な限り最強にしておく必要がある。村で動員できる兵力にはまだ限りがある。戦力は集中させる」と言いました。
現時点で、マイノスさんの戦略は完璧です。
商人ギルド、懲罰ギルドの攻撃を撃退しています。
私はマイノスさんの指示に従い、ミナコとローラに軍事物資の調達の仕方とか、軍団編成や軍事訓練の施し方を教えました。
私たちの村の軍団は、植民前から兵種混合軍の編成が可能でした。
この軍事技術のおかげで、私たちは各兵種の良い部分を、部隊として備えることができました。
歩兵隊の防御陣形、騎兵隊の走力、弓兵隊の遠距離攻撃のすべてを、私たちの部隊は行うことが出来ました。
その部隊行動を使うのと使わないのでは効果は全く違います。
効果持続時間は1/3でも、短期決戦では十分な効果なのです。
また兵種による得手不得手がなくなることも大きいのです。
槍兵>騎兵>弓兵>槍兵という得手不得手が、敵兵種に合わせて有利に展開できるので、一般的な部隊より2倍近い強さを持っていました。
総じて見た、単一兵種の部隊との戦力差は、3倍はあると思っています。
そしてガルナス王国遠征でみたような、棍棒兵とか剣士を主体とした、槍を持たない歩兵部隊に対しては、5倍の力の差があると感じています。
戦いの技術はどんどん進歩しています。
私はその進歩を更に進めるよう、日々考えて活動しています。
その日のギルド拠点には、多くのメンバーが集まっていました。
マイノスさんが新世界ギルドと遠隔通信の魔法を通して、王国政権の引き渡しが無事にされるのか確認していました。
私たちは、王立騎士団に強襲されていたので、素直に彼らが王都を引き渡すとは思えませんでした。
そして案の定でした。
王都には商人ギルドが支援入城し、新世界ギルドの王都入城を拒みました。
これに対して、新世界ギルドは支配する各都市からワープホールで追加部隊を送り込み、戦闘を開始したようでした。
そこから先は、魔法の映像が乱れ、状況は良くわからなくなりました。
でも魔法通信の一部には、リゼア王国の大軍勢が王都防衛に参戦し、新世界ギルドの部隊が強襲を受けたという話がありました。
また魔法都市ライツが王立騎士団に宣宣戦布告され、黄金都市ミダースが商人ギルドに宣戦布告されたという連絡もありました。
小都市アルンを攻めていた王立騎士団がどこに消えたのかが、これで判明しました。
そしてその予想される戦力から言って、新世界ギルドが危機に陥っているのではないかと、マイノスさんは戦況を心配しました。




