王国チャットの前哨戦 << マイノス 33 >>
懲罰ギルドでは、集団リンチのようなことが起きていた。
サブリーダーのロンドモーレが懲罰ギルドを追放され、そのメンバーから総攻撃を受けていた。
いくらロンドモーレが優れたプレイヤーであろうとも、いくら懲罰ギルドの主力部隊が壊滅していたとしても、中堅ギルドから総攻撃を受けたらひとたまりもない。
王国最強の私の町ですら、壊滅寸前に陥ったように。
彼の町は廃墟となった。
私はこれを見て、敵の敵は味方、チャンスだと気づいた。
すぐにロンドモーレにメールを送った。
「あなたが優れたプレイヤーだということは以前から知っていた。あなたの今までの貢献に対する懲罰ギルドの仕打ちは、あまりにも酷いものだ。私たちのギルドには懲罰ギルドのような縛りも、恐怖もない。あなたが望むように遊ぶことが出来る。私たちのギルドに来ませんか。私たちはあなたが移籍してくだされば、大歓迎致します」
ロンドモーレからの返信は早かった。
「私もびっくりしました。町は破壊されましたが、将校は残っています。でもこのままだと、あなたのギルドに行っても、狙われて迷惑をかけるだけです。あなたがどう思っていたかわかりませんが、私は性別を偽って遊んでいました。本来の性別である女性に戻して、名前も変えます。その方が私自身も素に帰って遊べます」
そして彼女はエリスと名前を変えて、私たちの拠点に向かって移動を開始した。
イザベラ配下のサブリーダーが、実は女性だったという話には、実はイザベラのサブプレイヤーではないのかという懸念もあった。
でもその時はその時で対処すれば良いと考えて、私は積極的に採用することにした。
また同時期に、ドノフから連絡があり、小都市アルンの状況を確認した。
初撃は耐えたようで、王妃ザラが戦死したかも知れないという。
私は彼女と流氷港の戦いで戦ったことがあるが、彼女は戦闘向きではない。
その割には前線に出てくるので、戦死しても不思議ではない。
ひとまずその日は、私たちはギルド拠点に戻り、体制を整えることを伝えた。
その後、王立騎士団の軍団が小都市アルンから姿を消したという連絡があった。
私はドノフとマールを呼び戻して、本拠地防衛の準備を進めた。
小都市アルンから罠の設置を行っていたロボシンクからは、「そちらに王立騎士団が向かっている気配は見えない」という連絡があった。
念のために、私は彼らも本拠地に戻した。
それからしばらくして、新世界ギルドのチャードンが、王都に宣戦布告した。
私は王都の輪番制のことを聞いていたので、王立騎士団が小都市アルンから姿を消したら、王都方面ではなく、南方の私たちの方に来るものだと予想していた。
王立騎士団のグループは、今回のガルナス王国遠征で大きな損害を出していたはずだ。
私たちとの戦いとロンドモーレとの戦いで、王立騎士団はともかく、商人ギルドの戦力は半減しているはずだし、懲罰ギルドに至ってはまともな戦力はほとんど残っていないはずだ。
一方の新世界ギルドは、ガルナス王国遠征でほとんど被害を出していない。
王都は新世界ギルドのものになるというのが、私の見立てだった。
しかし実際に、新世界ギルドが王都に宣戦布告すると、王立騎士団のシンシアという外務大臣から、「なぜ宣戦布告しているのか」という書き込みが王国チャットにされた。
「王都の輪番制をセルバート王が受け入れたんや。セルバート王、仲間には怖くてそれは伝えられんかったか?イキったセルバート王がガルナス王国に宣戦布告したおかげで、多大な被害を出したもんな。その後始末は、わいらがやったんやで。和平できたんは、わいらが尽力したからや。その代わり、王国政権の輪番制をセルバート王は受け入れたんや。そうやったな、セルバート王。情けない男やで。敗北を仲間に伝えるべきや。あんたはわいらの前に降伏したんや。隠し通せると思っとったか?発覚する、その時が来たんやで」
「お前、頭大丈夫か?私がいつ輪番制を認めた?」
「www受けるわ!本気で言ってないよな?セルバート王、現実と妄想の区別がつかなくなったか?」
チャードンの書き込みに対して、セルバート王が返信し、さらにチャードンが書き込んだところで、またシンシアが書き込んだ。
「なぜガルナス王国との和平するために、王都を新世界ギルドに渡さなければならないの?それってロマール王国に対する脅迫じゃないの?」
「王立騎士団が出鱈目な戦争をして手に負えなくなったんを、尻拭いしてやったと言わんかったか?あんたも今言われたことを忘れる年齢か?シンシア婆さん」
「ガルナス王国は他国でしょ。他国との取引に、王国内ギルドの取引を強要してますよね?あなた方がやっていることは、ロマール王国への売国行為です!違いますか?」
「それを受け入れたのが、セルバート王であり、王立騎士団や」
「あのな」とセルバート王は書き込んだ。
「そんな要求、受け入れていないんだが?ところで、新世界ギルドリーダーのチャードン。あなたはロマール王国に対し、上記で言われた売国行為、脅迫行為を公式に要求するということでいいんだな?これは最終確認だ」
「・・・。セルバート王。それはあなた方から見た見方や。わいらかしたら、お前は約束を守らん出鱈目な悪党や。これは戦争ゲームや。どっちが正義か、戦えば分かるやろうて。王都、及び王立騎士団に宣戦布告や」
「正体を表したようだな。新世界ギルドは売国ギルドであり、ロマール王国の破壊を宣言した。王立騎士団グループは、新世界ギルド討伐を宣言する。宣戦布告する!」
私はこれは見過ごせないと思い、王立騎士団グループは、島ギルドとビッグレイクギルドへの攻撃を宣戦布告無しに行い、都市保有ギルドの中央ギルドに対しても同様に宣戦布告無しに攻撃したことを発表した。
そしてビッグレイクギルドとして、王立騎士団グループに対して宣戦布告した。
その直後、「で、マイノス。お前は何をできるんだ?王立騎士団と戦う兵力はあるのか?城に籠って震えてる以外に出来ることはあるのか?」と、シャルルがすぐに対応の書き込みをした。
こういうところは、王立騎士団を見習わなければならない。
ギルド役員というのは、喧嘩の口上や理屈を公の場で発言できなければならない。
ビッグレイクギルドではドノフがそれが出来たが、この時間は彼のタイムゾーンが深夜なのが辛い。
私はギルドメンバーに王立騎士団グループとの戦争が、改めて開始されたことを伝えた。
私は新世界ギルドによる王都攻略戦の様子を固唾を呑んで見守った。




