違和感 << マイネ 22 >>
何かがいつもと違う。
王国チャットで、懲罰ギルドとビッグレイクギルドが喧嘩したあと、連合軍チャットに、懲罰ギルド内で内紛が起きているという書き込みがされた。
サブリーダーのロンドモーレが、一人だけ無傷で退却したことに、メンバーから怒りの声が出ているようなのだ。
王立騎士団の役員もそのことには気づいていて、マリスが「イザベラの管理能力のお手並み拝見ですね」とまで言っている。
今回のビッグレイクギルドと島ギルドへの攻撃には、マイノスが時間差でどちらも応戦した。
そして見たことのない水神を召喚して、商人ギルドと懲罰ギルドの船団を壊滅させていた。
多くの兵士と将校が溺死したことは間違いない。
イザベラは王立騎士団が対応を見ていることを知っているのか、連合軍チャットでロンドモーレに話しかけた。
「ロンドモーレ。懲罰ギルドの規則で、私の指示無しに退却してはならないというのは知っているな。規則を守る者だけがメンバーになれるし、理解し実行する者だけを役員にしてきた。お前はそれを破った」
「イザベラさん、お言葉ですが、無駄死にすれば良かったと?あの状況において、一つでも多くの部隊を救援するのが私の義務だと判断した。そもそもあなたは退却の指示を出したことがない。退却の判断が出来ないから退却禁止の規則にしているのではないか?」
「ロンドモーレ。なぜ私がここで話しているかわかるか?私たちは連合軍で動いているんだ。私たちには私たちの役割がある。そしてこれからお前にも、その役割がある。残念だ。ここで別れだ」
イザベラはロンドモーレをギルドから追放し、懲罰ギルドにロンドモーレの町への全軍総攻撃を命じたようだった。
それは見せしめのようだった。
僕がそう言うと、マリスが横から口を挟んだ。
「見せしめじゃないんじゃないかな。彼女はメンバーに、特にプレイヤー将校が死んでしまったメンバーに、再び立ち直ってもらうために、勝てる戦いを用意したんだよ」
ロンドモーレは領主ランキング、村ランキングで王国20位以内に入るトッププレイヤーだったけど、しばらくして、ロンドモーレ本人の戦死の報が王国チャットに流れた。
30分後、ロンドモーレはどちらのランキングからも、トップ300から消えた。
話を聞くと、ロンドモーレの町を攻撃したのは、各プレイヤーの二軍以下の部隊だった。 始めのうちはロンドモーレの無事だった一軍部隊が、包囲しようとする部隊を次々に撃破していた。
けれどもワープホールが作られて、次々と部隊が送り込まれていたので、それはきりがなかった。
40部隊破壊を超えることから、少しずつ兵士の補充と疲労度の回復が間に合わなくなった。
破壊が80部隊を超えるころには、ロンドモーレの部隊は半減していて、包囲部隊数が200を超えたことを王国チャットでロンドモーレに伝えた。
彼の「ああ、わかった」という声を聞いたとき、彼の闘志が切れたのを感じた。
町レベル25を超えて、村を移転させたり、破壊されたりすると、廃墟として町の跡が一定期間残る。
そしてその廃墟では、探索をするとそのプレイヤーが保持していた技術やアイテムが発見されることがある。
その全ての遺物を見つけきった時、その廃墟は消滅する。
探索での発見はとても低い確率だ。
しかし懲罰ギルド200部隊が探索したら、それは誰かが発見する。
翌日には、ロンドモーレの町は跡形もなく消えると思う。
何か、いつもと違う。
何か、嫌な予感がする。
僕はこの戦いが始まる前に、フェアリーに言った。
「ガルナス王国との和平は、どうして出来たんだろう。僕、なんか嫌な予感がするんだよ。何かわからないけど、気になるのはまずその件。どうしたって和平ができるとは思えなかった」
「私はその交渉の場にいた。詳しいことは守秘義務があるから、マイネにも言えない。でも、結局その場にいた人もわからなかった。チャードンももしかしたらわかってなかったかも知れない。交渉をまとめたのが、新世界ギルドのサブリーダーのグリーンで、彼だけが知っていた可能性が高い。そしてその内容は言わなかったのよ。こちらに不利な話はないと言って」
「そうなんだ。何だろうな、この嫌な予感。ところで中央ギルドのブレイクナイトって、どういう人なの?ずいぶんやんちゃな感じの人っていう印象だけど」
「あー。いわゆるゴミ男ね。性格悪いくせに、変に女にだけには最初は優しいのよ。でも付き合うと性格の悪さが隠しきれなくて、速攻別れたくなるタイプね」
「・・・付き合ったことあるの?」
「いや、そうじゃなくて、そういう予感がするのよ。現実世界でそういう人がいたの。似ているタイプだと思ったの」
「まぁ、人生経験は僕の3倍くらいあるフェアリーだから、そうなのかも知れない」
「2倍よ!あなたのお母さんじゃないわよ!」
「え、そうなの?」
「え、あ、何か興奮して、変なこと言ったかも。忘れて」
微妙な空気が流れたけど、僕はフェアリーの年齢が、あの時見た姿と一致し、納得した。
中央ギルドの小都市アルンでの攻防は、僕たちの予想を超えるものだった。
「何か、こいつら強くないか?」
シャルルがギルドチャットで疑問の声を上げた。
シャルルが大きな被害を受けたわけではない。
でも僕も上空から戦っていて気づいたのだけど、中央ギルドの兵士は、上空からの攻撃にも適宜盾で防衛して対処している。
暫定ギルドとの大都市グレイスの戦いでは、敵はパニックになって攻撃し放題だったのに、今回は時折反撃の射撃も来る。
練度が高い兵士が多いのだと思う。
もちろん、僕の麒麟やグリフォンを射抜くような射撃は、まず発生しないけど、でもザラの空軍は防御力が僕らほどないから、危険があるかも知れない。
そう思った時だ。
嫌な予感が的中した。
ザラが射抜かれた!
その一団の雲が浮遊力を失い急降下していくのが見えた。
地面に叩きつけられるような落下ではない。
でも、落下先は城内なので、敵に囲まれ、皆殺しに合うだろう。
僕はギルドチャットに、ザラを救援するための応援を要請した。




