現場から見る景色、王都から見る景色 << セルバート王 >>
意味がわからない。
新世界ギルドのチャードンから、ガルナス王国と和平が出来るかも知れないので、急遽その時が来たら、連絡取れるようにして欲しいというメッセージが来た。
どう考えても、奴らはこの王国の王都を目指して進軍してくるだろう。
私は一度解散した役員や友好ギルドのリーダーに、いつでも連絡が取れるように、遠隔通信を可能な限り繋いで置くように指示をした。
和平が出来る?
そんな奇跡が起きるのか。
私はザラと通信を繋ぎ、どういうことだろうかと聞いた。
彼女は少し考えたあとに、「20万の大軍を維持できる場所は、ロマール王国にはかろうじて王都ができるくらいかと思います。ガルナス王国からの補給線を維持する難しさはあろうかと思います」とまず言ったあとに、それとリゼア王国との停戦がいつまで続くかという不安定要素が彼らにはありますね。都市を奪われた状態で和平はないと、リゼア王国のモラルード王はと言ってましたから」と言った。
もちろん、それはあるだろう。
だがそれは見方の一面であって、都市で略奪を続けながら王都を目指し、一気に攻略してロマール王国を滅ぼしてしまう道もあるだろう。
ザラもその辺りは分かっていると思うが、私は少し考える必要がある。
余りにも良い話には何かしらの罠があるだろう。
「セルバート王、考えるのはこのタイミングではありません。彼らの話をまず聞いてみて、それから考えましょう。私は皆さんの帰りを待って、ずいぶんと心配し、気疲れしました。少し休みたいです」
ザラには無理をさせた。
私は自分自身に何をやっているんだと叱咤し、ザラにゆっくり休むように伝えた。
そして他の役員や、友好ギルドのリーダーにも、急な連絡をしたことをまず詫びて、今日はゆっくり休んでほしいと伝えた。
翌日の朝早くに、チャードンから再び連絡が来た。
遠隔通信の先に、サブリーダーのグリーンの映像が見えた。
私はザラとフェアリーにだけ、遠隔通信を開くように連絡を入れた。
そしてグリーンは和平について話し始めた。
「セルバート王、そして王立騎士団グループの皆さん、今回の和平については、私の方で勝手に話を持ちかけましたので、リーダーのチャードンにもまだ詳細を話していません。そのことを御理解の上、聞いてください。和平の内容は、期限のない和平で、ガルナス王国が獲得した小都市モルトをロマール王国に返還し、越境した軍団をガルナス王国の領内に戻すという内容です。現状では王都まで進軍される危険が高く、その経路の都市は略奪と虐殺で、復興の目処が立たなくなるくらい破壊されるでしょう。この和平をすれば、それは回避できます。締結していだけますか?」
私はザラと顔を見合わせ、「なぜそんなに条件が良いのか、我々が提供しなければならないことが隠されているのではないか」と聞いた。
詳細は言わないことが和平の条件になっていますが、不利な約束はありません。
役員待遇で列席してもらったフェアリーが、ここで発言した。
「セルバート王、決して良い条件ではないです。振り出しに戻ったようなものです。彼らからしたら、リゼア王国を滅ぼすまでロマール王国と和平すれば、そのあとはいかようにもできます。その約束を、この和平はするということです。リゼア王国を滅ぼすまでの和平であり、この王国への縛りです」
「そうかも知れません。ではリゼア王国より先に、ひとまずロマール王国が滅ぼされますか?生きていれば対策はいかようにも出来ますが、滅亡したら対策は出来ません」
グリーンは感情を込めることなく訥々と話した。
私はチャードンの表情を見た。
この話をチャードンが知らないということはないだろう。
チャードンはどう考えるかと聞いた。
「わいらはこの交渉を今すぐに破壊することが出来るんですわ。わいらから、2つ条件言わせてもらいます。一つは王都の管理を輪番制にしてもうことです。新世界ギルドと王立騎士団で1か月交代で王都を管理する。もう一つ。都市の管理の変更や。ビッグレイクギルドに小都市ランタンを与え、西の強国ギルドには小都市シエラ移転してもらう。この2つや。都市の管理の変更は、新世界ギルドが小都市一つをビッグレイクギルドに与える形や。王立騎士団は損することではない」
チャードンがしゃあしゃあと言いたいことをいうので、それは今回の和平とは関係ないだろうと私は言った。
すると今度はグリーンが「関係あります。それは条件の一つです」と言った。
「ガルナス王国には関係のない話だろう」と私が重ねていうと、チャードンが「今回はわいらが王国を救うんです。あんたらが交渉と称して無謀な戦争に持ち込んだ、その尻拭いをわいらがやっているんです。対価は頂きます。それがその条件や。嫌ならいいんやで。王都は阿鼻叫喚の地獄になるで」と言った。
ザラが「それは脅迫ですか?そもそもガルナス王国が進軍を続けて、真っ先に破壊されるのは新世界ギルドの領土です。跡形もなく更地となるでしょうね」と笑った。
ここでチャードンが発言した。
「そうとは限らんで。わいも実は和平条件の詳細はわかってない。わかってないが、交渉に持ち込む何らかの材料がこちらにあるということや。王立騎士団グループの領土だけ破壊する話に持ち込むことも出来るかも知れんで」
「リーダー。私はそういう交渉はするつもりはありませんが、セルバート王が私たちの貢献を侮辱するというのなら、天罰が下るでしょう」
我々は大根役者の演劇を見せられているようだ。
白々しい。
だが、私は一つ良い選択をした。
この話を聞いているのは、王立騎士団グループでは、ザラとフェアリーだけだ。
私はこの条件を飲んだ。
ガルナス王国軍が撤退すれば、おそらく再侵攻はない。
その時までの話だ。
チャードン。
お前らはわかっていない。
この王都から見る景色は、お前らが見る景色とは全く違うんだよ。
ここからなら、手の届く景色があるんだ。




