帰りたい。マイノスさんのもとへ << マール >>
小都市ハールとガルナス王国からの撤退が全軍に告げられたようで、ロマール王国軍は砂埃が舞い上がる中、続々と隊列を整えていました。
王立騎士団の伝令は私たちに、「これから姿を隠す魔法を散布する、それを飲み込めば、私たちの姿は見えなくなる」と言った。
鎧や馬も見えなくなるのかと聞きたくなったが、多分、今は信じるしかないのだと思った。
軍団のざわめきと馬のいななきがその指示をかき消そうとしていたので、私とペラーは傭兵団に同じことを繰り返し大声で伝えました。
そして、私たちは新世界ギルドと共に、大都市ミダースで防衛線を張り直すことになっていたので、大都市ミダースで集結しようと、傭兵団に伝えました。
そんな準備が終わる頃、王立騎士団から「北方の敵およそ10万人!」という信じられない連絡が来た。
北方の退路に10万、南方からも10万。
リゼア王国が劣勢なのも仕方ない戦力でした。
ロマール王国の全ての兵士を数えても、10万人はいないかも知れない。
退却の指示がなければ、どうなっていたか。
たとえ、姿を魔法で隠しても勝てなかったでしょう。
北方の敵軍勢から、降伏勧告が来ていたものの、もうそんなことを受け入れる余裕すらありませんでした。
私は傭兵団とお互いに姿が見えなくなったことを確認すると、大軍勢を迂回するように、馬を走らせました。
これは魔力の付着と、魔法の発動が同時にされている、かなり高度なものだと思いました。
それから2週間。
私の食料は3日で尽き、野生の獣を仕留めながら逃亡を続けました。
一週間を過ぎて、疲労が限界を超えそうになった時、私はマイノスさんに、馬はなぜ草食なのに、筋肉があるのか聞いた日のことを思い出しました。
あれはマイノスさんが、私の乗馬を褒めてくれた出会ってすぐのことです。
今までそんな褒められ方をされたことがなかったので、嬉しくなり、突然そんなことを、近くにいた父親に聞いてしまったのです。
父のクルーズに聞いたら、「わからんよ。神の思し召しだ」と何やら難しいことをいうので、マイノスさんの方を見て笑ったら、マイノスさんが答えてくれたのです。
「草には植物性のタンパク質があり、それを馬の中にいる共生微生物が分解・合成して、筋肉を作るんだ」
もっと難しいですと私は笑って言って、手を取るマイノスのさんの方に馬から降りようとしたら、態勢を崩して、マイノスさんに抱きついてしまったのです。
シマッた!すみませんとマイノスさんに謝って、ふとその先で見えた父の顔が微笑んでいたのをみたら、抱きとめてくれたマイノスさんに身体を委ねても大丈夫なんだと安心したことを、そんなことを思い出したのです。
帰りたい。
マイノスさんの元へ。
私はネックレスを見ました。
すると漆黒の色だったネックレスは、幾分薄くなっていて、命の危険が遠ざかっていることに気づきました。
大丈夫。
帰れる。
私は馬を休ませ、私自身も休息を取りました。




