↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/460

銀の鷹は誰のために飛ぶ

前書き


嘘には種類があります。


口でつく嘘。


紙に書く嘘。


そして、


証拠を残す嘘。


本当に恐ろしい者は、


自分の手を汚さず、


誰かを犯人に仕立て上げます。


その時初めて、


正義は凶器へと変わるのです。


《主人公・相良ユウキ視点》


砦へ戻る道中。


誰も喋らなかった。


ガレスが持つ一本の短剣。


柄には、


銀色の鷹。


俺は横を歩くクリフさんを見る。


「知ってるんですか?」


「いや。」


短く答える。


その代わり、


ガレスが口を開いた。


「十五年前。」


静かな声だった。


「王都直属の討伐部隊があった。」


「白鷹隊。」


「盗賊討伐専門の精鋭だ。」



「強かったんですか?」


あーさんが聞く。


ガレスは苦笑した。


「強いなんてもんじゃない。」


「百人の盗賊団を二十人で潰す。」


「そんな奴らだった。」


俺は思わず口を開く。


「じゃあ黒狼団なんて……」


「一日で終わる。」


……


重い。


つまり。


白鷹隊が本当に敵なら、


俺たちは今頃生きていない。



「だからおかしい。」


クリフさんが言う。


「こんな小細工をする必要がない。」


確かに。


死体を置く。


木札を残す。


脅迫する。


全部回りくどい。


白鷹隊なら、


正面から潰せる。



「偽物か。」


俺が呟く。


ガレスは静かに頷いた。


「俺もそう思う。」



砦へ戻ると、


カシオンが短剣を受け取った。


じっと眺める。


裏返す。


鞘を抜く。


「……。」


眉が動く。


「偽物です。」


「え?」


「この紋章。」


「本物より少し歪んでいます。」


全員が近寄る。


「職人なら分かります。」


「これは写し。」


なるほど。


つまり。


誰かが、


白鷹隊に罪を着せようとしている。



「頭領!」


門番が駆け込んできた。


「町から商人が!」


ガレスが振り向く。


「通せ。」



現れたのは、


五十代ほどの男だった。


荷馬車を引いている。


商人らしい。


しかし。


顔色が悪い。


汗だくだ。


「お願いです……」


震えている。


「助けて下さい……」


ガレスが椅子を勧める。


「落ち着け。」


男は首を振った。


「もう……終わりなんです。」



男の名は、


エドワルド。


行商人だった。


村から村へ薬や布を売っている。


「昨日。」


「町で衛兵に止められました。」


「黒狼団へ物資を運んでいるだろう。」


「そう言われました。」



「違うのか?」


ガレスが聞く。


「違います!」


「私は誰にでも売ります!」


「村人にも!」


「教会にも!」


「衛兵にも!」


「黒狼団にも!」


商人として当たり前だった。



「でも。」


エドワルドは俯いた。


「荷物を全部燃やされました。」


「商売も終わりです。」


あーさんが目を潤ませる。


「そんな……。」



「誰の命令だ?」


ルガーが聞く。


「徴税官です。」


……


また、


バルトン。



「証人は?」


クリフさん。


「います。」


「でも……」


「誰も証言しません。」


「逆らえば税を倍にされます。」


砦の空気が冷える。


これでは、


誰も逆らえない。



その夜。


エドワルドは砦へ泊まることになった。


子供達は、


珍しい荷馬車を見てはしゃいでいる。


ライラも笑っていた。


久しぶりの笑顔だった。


俺も少し安心する。


その時だった。


ガタン。


馬が鳴く。


クリフさんが立ち上がる。


「静かすぎる。」


俺も外を見る。


焚き火が消えていた。


風もない。


なのに。


「……誰かいる。」



屋根の上。


黒い影。


一人。


月明かりの中で、


長い外套が揺れる。


顔は仮面。


白い狐の面。


腰には二本の短剣。


影はこちらを見ると、


ゆっくり笑うように首を傾けた。


そして。


ヒュン。


屋根から飛び降りる。


「待て!」


俺が駆け出す。


クリフさんの矢。


ルガーの槍。


どちらも届かない。


信じられない速度だった。



影が森へ消える直前。


小さく呟いた。


「……ようやく来たか。」


誰に向けた言葉なのか。


俺達ではない。


まるで、


誰か別の人物を待っているようだった。


そして影は、


完全に夜へ溶け込んだ。



翌朝。


砦の門には、


新しい木札が打ち付けられていた。


そこには、昨日までとは違う文字が刻まれていた。


【偽物を追うな。本物は王都にいる。】


ガレスも、


クリフも、


ルガーも、


その一文を見て動きを止める。


俺は直感した。


この事件は、


もうモンテーヌだけの話じゃない。


王都を巻き込む、


もっと大きな陰謀の入り口なのだと――。


(続く)




後書き


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は「白鷹隊の紋章」が偽物であることが判明し、新たな行商人エドワルドも登場しました。


そして最後に姿を見せた、白い狐の面を付けた謎の人物。


彼は敵なのか、味方なのか、それとも第三勢力なのか。


次回はいよいよ、このモンテーヌ編最大のどんでん返しへと繋がります。黒幕の正体だけでなく、ガレスやルガーの過去にも関わる新キャラクターが登場し、物語は大きく動き始めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。