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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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狩人と槍使い

前書き


人は、


自分と違う相手を嫌う。


だが、


違うからこそ見える景色もある。


狩人と兵士。


森を知る男と、


戦場を知る男。


決して交わらないと思われた二人は、


一つの足跡を追うことになる。

《相良ユウキ視点》


翌朝。


まだ霧が残る森だった。


砦の門前では準備が進んでいる。


クリフさんが弓を点検していた。


その横では。


ルガーが無言で槍を研いでいる。


……


空気が重い。


重すぎる。


俺はよっしーを見る。


よっしーも俺を見る。


「……胃が痛なるわ。」


同感である。



ガレスが現れた。


「今日は森を調べる。」


「昨夜の襲撃者を探す。」


俺たちは頷く。


「ルガー。」


「はい。」


「クリフと組め。」


……


静まり返る。


ルガーの眉がぴくりと動いた。


「俺が?」


「そうだ。」


「信用できません。」


即答だった。


クリフさんも苦笑する。


「俺もだ。」


よっしーが吹きそうになる。


「仲良しか!」



ガレスは腕を組んだ。


「だからだ。」


「違う目が必要だ。」


「一人では見落とす。」


「二人なら拾える。」


ルガーは黙る。


クリフさんも少し考え、


「……仕方ねぇな。」


そう呟いた。



森へ入る。


俺。


よっしー。


あーさん。


ガレス。


クリフさん。


ルガー。


六人だった。


朝露が草を濡らしている。


クリフさんがしゃがんだ。


「足跡。」


ルガーも見る。


「四人。」


クリフさん。


「いや五人。」


ルガー。


「……。」


クリフさん。


「一人は荷物持ち。」


ルガー。


「どうして分かる。」


「沈み方だ。」


「重心が違う。」


ルガーも地面へ膝をつく。


しばらく見つめる。


そして。


「……本当だ。」


初めてだった。


ルガーが誰かを認めたのは。



さらに進む。


折れた枝。


踏まれた苔。


擦れた木肌。


クリフさんは次々見つける。


「焦って逃げてる。」


「夜だったからな。」


ルガーも周囲を見る。


「待て。」


槍で地面を指した。


「ここ。」


俺たちが近寄る。


「血?」


「違う。」


赤黒い粉。


カシオンから預かった袋へ入れる。


「火薬だ。」


俺が呟く。


ガレスが振り向く。


「火薬?」


「荷車を燃やした時の。」


なるほど。


つまり。


襲撃者は弓だけじゃない。


火も使う。



さらに歩く。


突然。


クリフさんが立ち止まった。


「変だ。」


「どうした?」


「足跡が消えた。」


俺も見る。


確かに。


ここで終わっている。


「ありえねぇ。」


ルガーが周囲を見る。


その時だった。


風が吹いた。


草が揺れる。


ルガーの目が細くなる。


「違う。」


「上だ。」


全員が見上げた。


木の枝。


縄。


滑車。


……


空中移動。


「なるほど。」


クリフさんが笑う。


「森を知ってる。」


「しかもかなりな。」



その時。


俺の耳に。


カラン……


小さな金属音が届いた。


「誰かいる!」


俺が叫ぶ。


黒い影が木々の間を駆ける。


速い。


クリフさんが矢を放つ。


ヒュン!


だが。


枝一本を蹴って軌道を変える。


「避けた!?」


ルガーが槍を投げる。


一直線。


ドォン!!


木へ突き刺さる。


しかし。


影はもういない。



残されていたのは。


一本の短剣。


黒い鞘。


見覚えがある。


ガレスが拾い上げた。


顔色が変わる。


「……馬鹿な。」


「知ってるのか?」


ガレスは静かに頷く。


「この紋章は……」


短剣の柄には、


黒狼ではなく、


銀色の鷹が刻まれていた。


ルガーが息を呑む。


「ありえない……」


クリフさんが眉をひそめる。


「誰なんだ?」


ガレスは低い声で答えた。


「王国直属――」


「《白鷹隊》の紋章だ。」


その場に、


重い沈黙が落ちた。


黒狼団を襲っているのは、


ただの盗賊ではない。


王国の精鋭部隊に繋がる者が、


この森で暗躍しているのかもしれない。


モンテーヌ編。


物語は、


さらに予想外の方向へ動き始める。


(続く)




後書き


ここまで読んでいただきありがとうございます。


今回は、クリフとルガーという「互いを信用していない二人」が共同で捜査を行いました。


敵対していた二人だからこそ、それぞれの経験が噛み合い、少しずつ真相へ近づいていきます。


そして最後に現れた「白鷹隊」の紋章。


これは本物なのか、それとも誰かが意図的に残した偽装なのか。


次回、モンテーヌ編はさらに大きなどんでん返しへと繋がっていきます。




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