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黄昏に鳴らぬ鐘、イシュタムの魂を宿すさえない俺  作者: 和泉發仙


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黒狼団の真実




前書き


悪人とは何でしょうか。


人を傷付ける者でしょうか。


人から奪う者でしょうか。


それとも――


生きるために法を破った者でしょうか。


ライラを追い、黒狼団の砦へ辿り着いたユウキたち。


そこで待っていたのは、

想像していた山賊の姿ではありませんでした。



《主人公・相良ユウキ視点》


黒狼団の砦へ入った瞬間。


俺は違和感を覚えた。


大きな違和感だ。



山賊のアジト。


そう聞いて想像するのは、


酒。


博打。


略奪品。


怒号。


乱暴者。



そんな光景だった。



だが。



実際は違った。



「おかえりー!」



子供が走る。



「薬できたぞー」



老婆が笑う。



「薪運んどいてくれ」



若者が汗を流す。



なんだここ。



村じゃねぇか。




「ライラ!!」



その声が響いた瞬間。


砦の奥から男女が飛び出してきた。



ライラが固まる。



男も固まる。



女も固まる。



次の瞬間。



「父ちゃん!!」



ライラが駆け出した。



「ライラ!!」



男が娘を抱きしめる。



女が泣き崩れる。



「ごめんね……」



「ごめんねぇ……」



ライラも泣いていた。



「ばかぁ……」



「生きてるなら帰ってこいよぉ……」



それを見て。



あーさんがハンカチを出した。



泣いてる。



早い。



めちゃくちゃ早い。



「うぅ……よかったですぅ……」



感情移入が早すぎる。



よっしーも目を擦っていた。



「あかんわ……こういうの弱いねん……」



俺も少し胸が熱くなった。




だが。


問題はここからだった。



「攫ったんじゃないのか?」



俺が尋ねる。



ガレスが首を振る。



「違う」



「俺たちは保護した」



保護?



「どういう意味だ?」



クリフさんが聞く。



ガレスは焚き火の前に腰を下ろした。



「聞いていけ」



そう言って語り始めた。




ライラの父。


名前はロベルト。



代々続く薬師だった。



だが近年。



税。



借金。



薬草の値下げ。



仕入れ値高騰。



全てが重なった。



「店を続けても赤字だった」



ロベルトは言った。



「それでも続けた」



「だが無理だった」




そして。



ある日。



借金取りが来た。



娘を売れ。



そう言われた。



ライラが震える。



「……」



俺も言葉を失った。



そんな話。



地球でもある。



昔も。



今も。




「だから逃げた」



ロベルトが言う。



「娘を守るために」



「店を捨てて」



「森へ入った」




そこで出会ったのが。



ガレスだった。




「俺も似たようなもんだ」



ガレスが笑う。



「戦争が終わったら捨てられた」



元兵士。



故郷なし。



家族なし。



仕事なし。



「気付いたら山賊になってた」



あっさり言う。




「ただな」



ガレスが続ける。



「子供からは奪わない」



「女からは奪わない」



「腹減った奴がいたら食わせる」



「それだけは守ってきた」



周囲を見る。



確かに。



ここには。



孤児。



未亡人。



老人。



傷痍兵。



そういう人ばかりだった。




「なんか……」



よっしーが言う。



「ワイが思ってた山賊とちゃうな」



「だろうな」



ガレスが苦笑する。




その時。



「頭領」



声がした。



槍を持った男。



ルガーだ。



険しい顔。



俺達を見る目は変わらない。



敵を見る目だ。



「外の人間にそこまで話す必要がありますか」



ピリッ



空気が変わる。



ガレスは黙る。



ルガーは続ける。



「また裏切られたらどうするんです」



「また仲間が死んだらどうするんです」



そこには怒りがあった。



恐怖もあった。



そして。



過去があった。




「やめろルガー」



「……失礼しました」



そう言って去る。



だが。



最後まで俺達を睨んでいた。




夜。



夕食が始まる。



スープ。



黒パン。



干し肉。



質素だった。



でも。



笑顔があった。



ライラも。



両親も。



婆ちゃんも。



笑っていた。



そして俺は思う。



もしかしたら。



本当に悪い奴は。



別にいるんじゃないか?



その時だった。



外から。



絶叫が響いた。



「頭領ぉぉぉぉ!!」



全員が立ち上がる。



門の方からだった。



ガレスが駆け出す。



俺達も続く。



そして。



門の前に。



一つの死体が転がっていた。



首には木札。



そこに刻まれていた文字は。



【黒狼団に死を】



静寂が落ちた。



モンテーヌ編。



第二幕が始まる。



(続く)


後書き


ここまで読んでいただきありがとうございます。


ついにライラの両親との再会。


そして明かされた黒狼団の実態。


しかし物語はここで終わりません。


次回より、


黒狼団を陥れようとする者との戦いが始まります。


ガレス。


ルガー。


カシオン。


アーサー。


そしてユウキたち。


それぞれの正義が交差するモンテーヌ編第二幕をお楽しみください。

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