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深い森の中、泉と妖精と

前書き

険しい山道を越え、ユウキたちがたどり着いたのは、深い森の奥にひっそりとむ美しい泉だった。旅の疲れを癒やすべく、一行はそこで休憩をとることにする。

よっしーが取り出したのは、彼がいた平成元年の日本で流行した懐かしいお菓子。しかし、その甘い香りに誘われて姿を現したのは、手のひらサイズの小さな妖精だった。

ユニコーンを待つことになった一行は、それぞれが持つ故郷の記憶を語り合う。そこには、バブル景気の熱狂を知るよっしーと、失われた30年を経験したユウキの間にある、埋めがたい価値観の溝があった。

これは、異なる時代、異なる世界を生き抜いてきた者たちが、異世界で出会い、互いを理解しようとする、小さくも大切な物語の始まりだ。



(主人公・相良ユウキの視点)


山を越え、谷を越え、ひたすら歩き続けると、深い森の中にひっそりと美しい泉があった。周りの景色も相まって、水面がキラキラと輝き、水底までくっきりと見えるほど澄んでいる。


「ヤべえ、超綺麗な所じゃん。これは癒やされるね」


俺は、思わず声を上げた。


「なあ、そろそろここらへんで休憩せえへんか?」

よっしーは、そう言いながら虚空庫アイテムボックスからレジャーシートを取り出し、さっと広げて座り始めた。


「うむ。確かに少し休みたいな」

クリフさんが、大きく伸びをした。


「我が主人あるじよ、休憩も大事ですニャ」ニーヤも、俺の肩で頷く。


「そうだね」


俺たちは、泉のほとりに腰を下るし、ひとときの安息に浸ることにした。

よっしーは、虚空庫アイテムボックスから森永のチョコボールの箱とコカ・コーラ、そして紙コップを取り出した。


「ワイの好きなチョコボールや!ピーナッツも、キャラメルも、どっちも美味いねんで!あと、コカ・コーラもあるで。これが、このお菓子と合うねん」


よっしーは、得意げにそう言って、チョコボールの箱を開け、皆の真ん中に置いた。

さっそくクリフさんとニーヤが、それに手を伸ばす。


「パリパリがたまらないニャ!」


ニーヤは、チョコボールを一粒口にすると、目を輝かせた。


「うむ。不思議だ。何故か手が止まらない......」


クリフさんも、次から次へと口に運んでいる。




俺は、コカ・コーラを紙コップに注ぎ、みんなに配っていった。


「むむ。これは、炭酸水に何かを混ぜたものか?」


クリフさんは、コップの中の泡を不思議そうに見つめ

る。


「シュワシュワいってるニヤ」


思った通り、二人とも炭酸飲料にびっくりしている。千鶴も、一口飲んでみて、驚いたように目を丸くしていた。


「ユウキさん、これは、なんとも不思議な飲み物でございますね......。喉がシュワシュワして、まるで、生きているかのようでございます」


千鶴の言葉に、俺は思わず笑ってしまった。

その時、よっしーが、**虚空庫アイテムボックス**からもう一つ、お菓子を取り出した。それは、グリ◎のカプリコだ。


「よっしゃ、次はこれや!カプリコ!ワイらの時代には、これ、めっちゃ流行ってたんやで!」


よっしーは、カプリコのパッケージを破り、皆に配り始めた。


「うわあ.......なんとも、変わった形のお菓子でございますね......」


千鶴が、カプリコを不思議そうに見つめている。


「そやる?これ、食べてみい。めっちゃ美味しいから!」


千鶴は、よっしーに勧められるまま、一口かじった。

......!なんと、ふわふわで、甘くて、まるで、雲を食べているようでございます.....!」


千鶴はその味に感動し、たとうだった


よっしーは、千鶴の喜ぶ顔を見て、満足そうに笑ってい

・・•

る。

そんな平和なひとときが、そこで終わった。

「なんだ、アレは?」

俺は、目を凝らしてよく見ると、木の葉の影に隠れている何かを発見した。それは、とても小さく、葉っぱに隠れているつもりだろうが、残念ながら卵がはみ出している。まあ、おそらく虫か何かだろう。

俺がそれに向かって指を指すと、それはサッとどこかへ飛び去っていった。すると、俺の肩に止まっていたプラックが、バサッと音を立てて、それに飛びかかっていった。

数分後、森の奥の方から悲鳴が聞こえてきた。

「うわぁああ!誰か助けてぇええええ!」バサバサと音を立てて、ブラックが獲物を咥えて、俺たちの元へ帰ってきた。


「ふむ。これは妖精フェアリーじゃないか」

クリフさんが、ブラックの咥えているものを見て、そう呟いた。


それはまさに、手のひらサイズの、背中に二対四枚の蝶のような が生えている、耳の長い緑色の髪の少女だった。


「イテテテッ!おい、ちょっと離せってんだよ、このお化け鴉が!チクショウ、こうなったらオシッコかけてやるぞ!」


「どうやら、これは邪妖精のようだな」

クリフさんが、険しい表情で呟く。


「誰が邪妖精だ、このMハゲ!アタシは、れっきとした妖精だっつーの!」


妖精は、罵詈雑言を浴びせる。

「うむ。どうやら、これは邪妖精ではなく、悪魔だそうなので、皆で退治しようじゃないか」


クリフさんは、ニコニコしながら、ブラックの口から妖精をスパッと取り、強く握りしめた。


「うわあ.....。クリフさんの顔は笑っているけど、目が全然笑ってねえじゃん!」


俺は、そう思った。コイツ、今、押しちゃいけないスイッチを押してしまったな。怒りという名の....・。



「ギャァアアアッ!ちょっとタンマ〜!アタシは、その食べ物の匂いにつられて来ただけなんだってばーっ!こんだけあるんだから、ちょっとくらいつまんだっていいだろ!?……だからな!な!」


妖精は、必死に命乞いをする。


「ええやん、クリフ。もう離したろうや」

よっしーが、クリフさんをなだめた。


クリフさんの手から離れると、妖精はサッとチョコボールにかぶりついていった。


「そういや、あんた、ここで何してたんや?」よっしーが、チョコボールを食べまくっている妖精に尋ねる。


彼女は、フレリーヌという名前らしく、ニーヤ曰く、名前持ちだということは、それなりの高位の妖精なのだとか。彼女は、夜にこの泉に時々現れるユニコーンを見に来たのだという。


「ふむ。ユニコーンって、たしか希少種じゃないのか?」


クリフさんが、真剣な表情で尋ねる。


「処女しか認めない。角は、霊薬の材料になるといわれる馬ニャ」


ニーヤが、ユニコーンについて説明する。


「でも、なぜか最近なかなか現れなくてさ。前は、そうでもなかったのに......」


フレリーヌが、悲しそうな顔で言った。

よっしーが、俺の隣に座り、なぜか俺の肩を叩いた。


よっしーが、チョコボールを食べまくっている妖精に尋ねる。


彼女は、フレリーヌという名前らしく、ニー曰く、名前持ちだということは、それなりの高位の妖精なのだとか。彼女は、夜にこの泉に時々現れるユニコーンを見に来たのだという。


「ふむ。ユニコーンって、たしか希少種じゃないのか?」


クリフさんが、真剣な表情で尋ねる。

「処女しか認めない。角は、霊薬の材料になるといわれる馬ニャ」


ニーヤが、ユニコーンについて説明する。


「でも、なぜか最近なかなか現れなくてさ。前は、そうでもなかったのに......」


フレリーヌが、悲しそうな顔で言った。

よっしーが、俺の隣に座り、なぜか俺の肩を叩いた。

「それやったら、ユウキのモノの方がユニコーンの角よりも立派やってことを世間のご婦人方に証明せんとアカンな」


「ハア!?」


俺は、思わず叫んだ。


「お前、何言ってんの!?」


「なんや、照れとるんか?大丈夫やって、自信持っていけや!な!!」



ビール瓶を股間に押し付けるよっしー


「フハハ、ユウキ君。よっしーさんは、君を、心から応援しているのだよ。せっかく別の世界に来たんだから少しくらいハメをはずしてもいいんじゃないかって!!

ちょっと伝わりにくいだろうけど」



クリフさんが、俺の肩を叩く。


「いやいや、応援とかそういう問題じゃないっすから!……今のは流石にないっしょ」


俺は、心の中で、よっしーとクリフさんにツッコミを入れた。


よっしーは、平成年、バブル景気の熱狂の真っただ中を生きてきた男だ。彼の価値観は、**「やればできる」「頑張ればなんとかなる」**という、ポジティブな希望に満ちている。


一方、俺は、失われた30年を経験してきた、令和の人間だ。どんなに頑張っても、報われないことが多かった。努力が必ずしも結果に結びつかない社会で生きてきた俺は、よっしーのような楽観的な考え方が、少し苦手だ。


そんな俺たちのやり取りを、千鶴は、不思議そうに見つめていた。


「わたくしの時代では、そのような.......そのように、率直な物言いをすることはございませんでした......」

千鶴が、恥ずかしそうに呟く。

「そうやろ?ワイらの時代は、イケイケやったんや!恋愛も仕事も、全部、ガツガツいかなアカンかったん

や!」


よっしーが、熱弁を振るう。


「しかし、ユウキ君たちの時代は、そうなのですね......」クリフさんが、俺に尋ねる。


「.....まあ、そうっすね。恋愛とかも、あんまりガツガツいかないっす。ていうか、そもそも、恋愛してる余裕がないっていうか......。みんな、自分が生きていくので精一杯で、他人のことまで気にしてられないっていうか......」


俺は、自分の生きた時代の生きづらさを、二人には分かりやすいように、簡単に説明した。


「そうか......。それは、なんとも、寂しい時代だな...... 」クリフさんが、悲しそうな顔で言った。


「寂しい時代......。そうっすね。寂しい時代だったのかもしれないっす」


俺は、クリフさんの言葉に、深く頷いた。

しかし、そんな俺たちも、この異世界で、こうして出会うことができた。


よっしーの熱い希望。クリフさんの優しさ。ニーヤとブラックの純粋さ。そして、千鶴の芯の通った強さ。


俺は、この旅を通して、少しずつ、前向きな気持ちになれているような気がした。


結局、俺たちは、フレリーヌとともに、夜を待つことにした。



後書き

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

美しい泉で、ひとときの休息をとるユウキたち。しかし、その憩いの場には、ユニコーンを狙う者たちの影が忍び寄っていました。

今回は、よっしーとユウキの、異なる時代を生きてきた二人の価値観のぶつかり合いを描きました。これは、この旅を通して、互いを理解し、成長していく彼らの、小さくも重要な一歩となります。

次回、ついにユニコーンを巡る争いが勃発します。ユニコーンを守ろうとするユウキたちの前に立ちはだかるのは、いったい誰なのでしょうか?そして、あーさんこと千鶴の能力は、どのように発動するのでしょうか?

応援コメントや好評価をいただけると幸いです。

まだまだ未熟ですが、よろしくお願いします。

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