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x-LOGOS —凍てついた世界で僕は『兵器』の少女を掘り起こした—  作者: 操野形人
Season1:フリーランズ争乱 ―決戦!ゴミ捨て場の街の奪還劇―
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Ch.2『10チップの依頼と野良猫に隠された秘密・2』

お読みいただきありがとうございます!

操野形人と申します。

本作は【SFファンタジー人形劇】と銘打った、凍てつく大地を舞台に熱血漢のメカニックの少年とアンドロイドの少女が太陽を取り戻す物語となっております。少し不器用な彼らの旅をぜひ楽しんでいってください!

フリーランズの朝は早い。


狭い路地では、早朝から開店準備を急ぐ店主たちの怒号と喧騒が渦巻いている。瑠美とリアは、ひしめき合う人混みをまるで舞うように縫って歩いていた。


「理髪店……ですか?」


リアが不思議そうに瑠美の長い黒髪を見やる。瑠美は自身の艶やかな三つ編みを軽く指先で遊ばせると、楽しげに微笑んだ。


「ああ、勘違いしないで。散髪が目的じゃないわ。ま、行けば分かるわよ」


迷宮のように入り組んだ路地を抜けた先、少し色褪せた看板を掲げる一軒の店があった。この街唯一の理髪店だ。


「おはよう、ロンさん。お邪魔するわね」


瑠美が扉の鈴の軽やかな音色を鳴らし、店内へ滑り込む。


「よう、瑠美か。その面構え……どうやら髪を切りに来たわけじゃなさそうだな」


店の奥から現れたのは、ロマンスグレーの髪をオールバックに固めた、筋骨隆々の厳つい顔立ちの初老の男だった。鋭い眼光が、サングラス越しに瑠美の背後にいるリアを射抜く。


「……ほう。噂に聞いていたキッドの連れってのは、アンタか」


男は無骨な手を差し出した。


「俺はロン。この理髪店の店主だ。……もっとも、表向きはな。客のちょっとした『お願い』を取りまとめるのが本来の仕事でね。ようこそ、フリーランズへ。何にもないが、探せば何でも手に入る街だ。歓迎するぜ」


男の大きな掌が、リアの華奢な手を包み込んだ。


「よろしくお願いします、ロン様。なるほど、ここが依頼【クエスト】を取りまとめる中枢というわけですか」


リアは淡々と事実を確認し、納得したように小さく頷く。そのあまりに無機質かつ的確な分析に、ロンは思わず苦笑した。


「……仕事だな?」


「話が早くて助かるわ、ロンさん。ま、単刀直入に言うとね。この子に稼がせてやってほしいの。今日一日で、ざっと500チップほど」


瑠美は手のひらで五本の指をパッと広げて見せる。


「……おいおい。新人への初仕事にしては、随分と景気のいい数字じゃねえか」


ロンはリアと瑠美を交互に見比べ、眉間に深い皺を寄せた。


「普通ならね! でも安心して。この街いちの事情通である私が横でバッチリとサポートするから、多少難易度の高い仕事でも……って、あら?」


言い終わらないうちに、瑠美の懐で軽快な電子音が鳴り響いた。彼女は素早く小型の通信デバイスを取り出し、ディスプレイに流れる文字列を睨みつける。


「はーあ、なんだってこんな時に……タイミング最悪じゃない」


瑠美はこれ以上ないほど露骨に肩を落とす。リアは心配そうに彼女の横顔を覗き込んだ。 


「瑠美様、どうかされましたか?」 


瑠美はリアとロンに向かって両手を合わせ、大袈裟なほど深々と頭を下げる。


「ごめんなさい! 本当に本当にごめん! ちょっと行商の『超』が付くお得意様から呼び出しでね、どうしても外せない用事ができちゃったのよ!」


「それは仕方ありません。ですが困りました……。瑠美様がご不在となると、稼働効率が50%以上低下すると思われます」


リアは眉を寄せ、露骨に不安げな表情を浮かべる。


「そうよねぇ……どうしたものかしら。……あっ!そうだ!」


瑠美は何かを閃いたようにパン!と手を叩き、からりと笑った。


「良いことを思いついたわ!まあ、私ほど頼れるわけじゃないけれど……ちょっとリアちゃんに紹介したい子がいるの」


瑠美は慣れた手つきで電子手帳を操作する。画面に表示された情報を流し読みし、満足げに頷いた。


「なるほど。今日のこの時間は……肉屋ね」


手帳をパチリと閉じ、ロンへと向き直る。


「ごめん、ロンさん!出直すわ!」


言い終わるや否や、瑠美は「さ、行きましょ!善は急げよ!」とリアの手を引いた。呆気にとられるリアを伴い、二人は再びフリーランズの雑踏へと駆け出していく。


来た道を中腹まで戻ったところで、瑠美は急ブレーキをかけるように立ち止まった。目の前には、仄かな生臭さが漂う精肉店がある。 


「おーっと!ここよ、ここ!」


「……瑠美様?」


リアは、瑠美が何故わざわざ精肉店の前で足を止めたのか理解できず、瑠美のお腹のあたりを怪訝そうに見つめる。 


「だーかーら!空腹じゃないってば!」


「あ!ししょー!!」


瑠美の姿を認めるや、店の中で帳簿を付けていた小さな女の子が勢いよく飛び出してきた。

体格に合わないぶかぶかのエプロンを纏い、亜麻色の髪を二つ結びにした少女――ミナだ。


「ミナ!よかった、やっぱりここにいたのね!」


「ルミししょー? そんなにいそいでどーしたの?」


「ミナ、実はね……」


挿絵(By みてみん)


瑠美は、リアに今日中に500チップ稼がせる必要があること、そして自分にどうしても外せない急用が入ってしまったことを簡潔に説明した。


「それでね、ミナ。私の代わりにリアをサポートしてあげてほしいの」


「待ってください、瑠美様」


リアが瑠美とミナの会話にピシャリと割って入る。


「お言葉ですが、そんな子供に瑠美様の代わりが務まるとは……。到底、合理的とは言えません」


その言葉に、ミナは頬を膨らませて怒りを露わにした。


「なんだとー! ミナはルミししょーのつぎにこのまちにくわしいんだ! ほんとーだもん! このまちのことはなんでもしってるもん!」


「こらこら、二人とも喧嘩しないの」


瑠美は二人の間に割って入り、苦笑しながら仲裁する。


「リアちゃん、この子の言うことは本当よ。毎日いろんな店を渡り歩いて手伝いをしてるから、そこらの大人よりずっと街の事情に通じているわ。……それこそ、私の次くらいにはね」


リアは信じられないものを見る目で、二人を交互に見つめた。


「そんなわけだからミナ、お願いできないかしら?」


「むむー! ししょーのたのみならやってやらないこともないけど……」


ミナは不機嫌そうに鼻を鳴らし、リアを値踏みするように睨みつけた。


「ひとつ! じょーけんがあるよ!」


ミナは一本の指を高く突き立てる。


「ルミししょーはミナのししょーだけど、ミナはアンタのししょーなんだからね! だからアンタはミナを「ミナししょー」ってよぶこと! わかったらよんで! さん、はいっ!」


「……貴女は私より随分と小柄ですし、データベース上の年齢推定値も……「師匠」と呼ぶには些か不適格かと」


リアが冷徹に分析を並べ立てる横で、瑠美は「悪いけど付き合ってあげて」とリアにだけ聞こえるように耳打ちする。


「荒っぽい仕事以外なら、抜群に活躍してくれるって保証するから」


瑠美の言葉に、リアは渋々といった様子で深く溜息をついた。


「……分かりました。ミナ……ししょー」


「よろしい!」


ミナは勝ち誇ったように胸を張る。瑠美はそんな二人を見つめ、楽しげに笑った。


「じゃあお願いね、二人とも仲良くやるのよ! リアちゃんも頑張って。夜には一度戻るから、結果を聞かせてよね!」


言い終わるが早いか、瑠美は風のようにフリーランズの雑踏へと駆け出していった。


後に残された凸凹コンビ。互いに見つめ合うその視線の間には、早くも火花が散っていた。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

楽しんでいただけましたでしょうか?

次回!はじめてのクエストオーダー!

もし続きが気になったら、ぜひブックマークと評価で応援していただけると、激務の合間に執筆している私の大きな糧になります……!

次回の更新もぜひ楽しみにしていてください!

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