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ブルマの長老、かつ兵衛

白天狗の案内に従い、広場を抜けた一行は、集落の奥にひっそりと佇む一際大きな木造の屋敷へと通された。


「長老。愛の導きにより、客人をお連れいたしました」


白天狗が恭しく襖を開けると、奥の上座には一人の人物が鎮座していた。


その姿を見た瞬間、はじめの思考はまたしても完全にショートした。


そこにいたのは、燃えるような長い赤髪を持つ天狗だった。


顔には鼻の長いお面、足元はピンヒールにサイハイソックス、そして胸には大きな白いポンポン。ここまでは外にいる他の天狗たちと同じである。


しかし、唯一にして決定的に違う点があった。


エナメルのビキニパンツではなく、なぜか**紺色の『ブルマ』**を着用していたのだ。


「ブルマは、我が集落を束ねる長老たる証。そして、長老だけが我々の中で『正式な名前』を持つことを許されているのだ」


白天狗が胸を張り、ひどく誇らしげに解説する。


「ようこそ、愛深き迷える旅人たちよ。私がこの集落の長老、『かつ兵衛』だ」


名乗ったその声は、他の屈強な男たちのものとは似ても似つかない、まるで鈴を転がすような『可憐な少女の声』だった。


さらに、体格も他の天狗たちに比べて随分と小柄で華奢である。


赤髪の可憐な少女(のような声と体格)が、天狗のお面にハイヒール、そしてブルマ姿で「かつ兵衛」と名乗る。


その存在はまさしく異質そのもの、カオスの極みであった。


(これ以上の変態がいるだと……!?)


はじめは顔を引きつらせ、心の中で盛大に絶望のツッコミを入れた。


はじめの激しいドン引き具合など全く気にする様子もなく、かつ兵衛はお面の奥でニコニコと愛想よく笑っている。


「して、愛の導き手たちよ。お前たちは何を求めてこの地へ来たのかな?」


「あ、えっと、俺たちは……その、キシアに……」


はじめは、ここにきた目的とポータルの解放をかつ兵衛にお願いしようと口を開いた。


しかし、目の前の『ブルマを履いた赤髪少女ボイスのかつ兵衛』というあまりにも圧倒的な情報量と視覚的破壊力に脳の処理が追いつかず、完全にしどろもどろになってしまった。


「俺の……親父が、謎の男に……いや、その前にあんたの格好が気になって話が頭に入ってこないというか……そもそもなんでブルマ……」


色々と混乱しすぎて要領を得ないはじめを見かねて、アリスを背負ったままのクレアが小さくため息をつき、静かに前に出た。


「代わろう。私が説明する」


クレアは一切の動揺を顔に出さず、かつ兵衛を真っ直ぐに見据えた。


「我々は、隣国のキシアへ渡る手段を探している。彼、はじめの父親を救出するため、この林の奥に封印されている『ポータル』を我々の手で解放し、そこを通らせていただきたいのだ」


元ERage幹部としての冷静かつ理路整然とした口調で、クレアは事の経緯と目的を手短に、そして正確に伝えた。


その毅然とした態度と声を聞き、かつ兵衛の動きがピタリと止まる。


「ほう……」


かつ兵衛はお面の奥から、ひどく興味深そうな、値踏みするような目を細めた。


可憐な少女の声の奥に隠された、何百年も生きているかのような長老としての鋭い知性。


その視線は、混乱するはじめでもなく、精霊のカエデでもなく、真っ直ぐにクレアへと注がれていた。

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