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妹の安堵と、ビジン林への旅立ち

顔を真っ赤にして縮こまってしまったリフリッジに対し、アリスは一つ小さく咳払いをしてから、ゆっくりと語り始めた。


「ゴホッ……細かい経緯は省くけどね。私は見ての通り体が弱くて、もう長くない。


だから最期は、故郷のキシアで迎えたいと思って……あんたのお兄ちゃんたちの旅に同行させてもらう事になったってわけさ」


キシアの工作員であることや「鍵」に関わる厄介な事情は上手くぼかしつつ、病弱な身で故郷へ帰りたいという切実な願いだけをリフリッジに伝えた。


「そう……だったんですか」


アリスの説明を聞いて、リフリッジは胸を撫で下ろした。


(なんだ、お兄ちゃんとの間に色恋の関係があるわけじゃないんだ……よかったぁ)


大きな不安要素が一つ消え、肩の力が抜ける。


だが、過去のイオリの件(からのプロポーション抜群なマナの登場)もある。


リフリッジは「とはいえ、油断は出来ない」といった様子で、ジッと鋭い目つきではじめを監視するように見つめた。


そんな妹の視線にはじめが苦笑いしていると、玄関の扉が開き、大きな荷物を背負ったクレアが戻ってきた。


「待たせたな。野営に必要なテントや保存食は一通り揃えてきた。……出発の準備は出来ているか?」


タバコの匂いと共に現れたクレアが、部屋の面々に尋ねる。


「ああ。いつでも大丈夫だ」


はじめが力強く頷き、自分の荷物を肩にかけた。


いよいよ出発の時。


リフリッジは、頭では父親を助けに行かなければならないと分かっていても、いざ大好きな兄が遠く危険な旅へ向かってしまう現実に直面し、心がザワザワと波立つのを抑えきれなかった。


俯き、ギュッと両手を握りしめるリフリッジ。


その不安げな様子に気づいたはじめは、ゆっくりと妹の前に歩み寄り、安心させるようにその小さな体を優しく抱きしめた。


「えっ……お、お兄ちゃん……?」


突然抱きしめられ、リフリッジは驚いて目を丸くした。


「大丈夫だ。……親父も連れて、絶対に皆でこの家に帰ってくるから。安心して待っててくれ」


はじめの温かく、力強い声が耳元で響く。


その言葉と温もりに、ザワついていたリフリッジの心は不思議とスッと落ち着きを取り戻していった。


彼女は少し慌てながらも、顔を赤らめてはじめの背中に腕を回し、優しく抱き返した。


「うん……。ありがとう、お兄ちゃん……」


そんな感動的な兄妹のハグを、少し離れた場所から見ていた子供の姿のマナは、「ひゅーひゅー♪」と言わんばかりにニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていた。


その横では、クレア、カエデ、そしてアリスが、邪魔をしないようにそれぞれ荷物の最終確認や出発の準備を黙々と整えている。


シーンは変わり、村の入り口。


雲ひとつない晴天の下、はじめ、マナ、クレア、カエデ、そして巨大な茄子のゴーレム(いらじ)に乗ったアリスの五人が、キシアの国境へと通じる『ビジン林』に向けてついに歩き出した。


「お兄ちゃん、気をつけて行ってきてね!」


「お兄様、どうかご無事で……!」


村に残る事になったリフリッジとイオリが、遠ざかっていく一行の背中に向かって大きく手を振って声をかける。


はじめが一度だけ振り返り、力強く手を振り返した。


次第に小さくなっていく彼らの姿が見えなくなるまで、リフリッジとイオリはその場に立ち尽くし、胸の前で手を組みながら「二人がどうか無事に帰ってこれますように」と、ただひたすらに祈りながら見守り続けるのだった。

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