ビジン林への道のりと、空回りする妹
キシアへ向かうための「ビジン林のポータル」を目指すことが決まり、はじめの家のリビングは慌ただしい空気に包まれていた。
「ビジン林まで行くとなれば、道中で野営が必要になるだろう」
クレアが立ち上がり、タバコを灰皿に押し付けた。
「私が必要な物資を調達してくる。お前たちはここで出発の準備を進めておけ」
そう言い残し、彼女は足早に家を出て行った。
残された子供の姿のマナは、小さな指を折って日数を計算し始めた。
「えーっとね、ここからビジン林までの距離だと……歩きとゴーレムの移動を合わせて、だいたい1週間ぐらいかかると思うわ」
「1週間か……」
長旅になることを覚悟したはじめの横で、アリスがゴホッと小さく咳き込んだ。
「足手まといにならないよう、あんたらについていけるように努力するよ……」
「いざとなったら、私がたっぷり治療してあげるから安心してねー!」
カエデが気楽な調子で請け負い、アリスの背中をポンポンと叩く。
そんな深刻な冒険の計画が進む中。
リフリッジは完全に話の輪に上手く入ることができず、エプロンの裾を握りしめながら、部屋の端で落ち着かない様子でソワソワと身を揺らしていた。
そして、そんなリフリッジの所在なさげな様子を見て、今回「お留守番」を命じられているイオリも、つられてなんだかソワソワと落ち着きをなくしている。
はじめは、不安そうに揺れるイオリのしっぽを見て、優しく微笑みかけた。
「イオリ。心配しなくても大丈夫だ。……みんな必ず無事に戻ってくるから、安心してこの家で待っていてくれ」
「お兄様……っ」
自分を気遣ってくれたはじめの言葉に、イオリはポッと頬を赤らめて潤んだ瞳で頷いた。
「…………っ」
それを見たリフリッジは、はじめの隣でぷくぅっと限界まで頬を膨らませた。
(心配なのは、私も同じなのに……! お兄ちゃんってば、イオリちゃんにばっかり甘いんだから!)
その分かりやすすぎる嫉妬のオーラを、アリスが見逃すはずがなかった。
「ところで……」
アリスはいらじのコックピットに乗り込む時と同じような、どこか面白がるような目を向けてはじめに尋ねた。
「そこの威勢のいいお嬢ちゃんは、あんたの妹かい?」
自分に話題が振られた!
リフリッジは(ついに聞き出すチャンスがきた!)と思い、勢いよく前のめりになってアリスに詰め寄った。
「そ、そうです! 私はお兄ちゃんの妹です! それよりも、アリスさんは一体お兄ちゃんとどういう関係なんですか!? なんで一緒に来たんですか!?」
矢継ぎ早に質問を浴びせかけるリフリッジ。
しかし、アリスは全く動じることなく、クックックと喉の奥で自嘲気味に笑った。
「フフッ……そんなに慌てて噛みつかなくても、私は逃げやしないよ。ゆっくり話してあげるからさ」
大人の余裕たっぷりにいなされ、リフリッジはハッとした。
(私……また一人で勝手に熱くなって、空回りしてる……!?)
「うぅ……っ」
一人で暴走していた事の恥ずかしさに気づいたリフリッジは、一瞬にして顔を真っ赤に茹で上げ、恥ずかしそうに両手で顔を覆ってシュンと縮こまってしまうのだった。




