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偽造報告書と、新たなトラブルの種

隣町から村へと続く、のどかな街道。


茄子のゴーレム・いらじの巨体がドスドスと重い足音を響かせて歩く横で、クレアが咥えタバコを揺らしながら、ガラス越しにアリスへと話しかけた。


「しかし……あの治療の後に起きて、キシアへの偽の報告書を書いていたのか。病弱な体にしては、ずいぶんとご苦労な事だな」


「あぁ……」


いらじのコックピットの中で、アリスはゴホッと小さく咳き込んでから苦笑した。


「あのタヌキの娘の術が、あまりにも気持ちよくてね。本当は朝まで泥のように眠っていたかったんだけど……自分の命と帰郷がかかってるからね。何とか無理やり身体を起こして書いたのさ」


その後方では、昨夜の激しすぎる妄想のせいで完全に寝不足になり、フラフラと歩いていたイオリが、ついに力尽きていた。


「お兄様がおぶろうか?」とはじめが手を差し伸べたものの、すかさずカエデが「このケダモノ! はじめちゃんには絶対に任せられない!」と猛反発し、結局カエデがイオリをおんぶして道を歩いていた。


「すみません、カエデさん……ぼくが、変なことばっかり考えたせいで……」


カエデの背中に揺られながら、イオリは自分の煩悩の深さを反省し、すっかり落ち込んだ声を出していた。


「いいのいいの。女の子(?)の貞操は、私がしっかり守ってあげるからねー」


カエデは全く気にした様子もなく、軽快な足取りで進んでいく。


やがて、見慣れたのどかな風景と共に、はじめの家が見えてきた。


玄関先では、エプロン姿のリフリッジが、何度も背伸びをしたりウロウロと歩き回ったりして、ひどく落ち着きのない様子で道を眺めていた。


(リフリッジのやつ……やっぱり、俺が帰ってこなかったから心配だったんだな)


その健気な姿に、はじめの胸に温かいものが広がる。


「あっ!」


遠くから歩いてくるはじめの姿をいち早く見つけたリフリッジは、パァッと顔を輝かせた。


「お兄ちゃ――」


弾んだ声で駆け寄ろうとしたリフリッジだったが、次の瞬間、ピタリと全身を硬直させて石のように固まった。


はじめの後ろを、ドスドスと地面を揺らして歩いてくる巨大な異形。


(えっ……今度はなんか、すっごく変な泥人形みたいなの引き連れてるんだけど……っ!? しかも中から青白い女の人の顔が見えるし!!)


(なんでお兄ちゃんって……いつもいつも、息をするように変なトラブルばっかり持ってくるの……!?)


リフリッジの頭の中で、感動の再会ムードが一瞬にしてカオスな疑問符へと塗り替えられていった。


「ただいま、リフリッジ。遅くなって悪かったな」


はじめが優しく声をかける。


「お、おかえり……なさい……?」


リフリッジは完全にフリーズした脳を必死に動かし、数秒遅れて、ひどく困惑した引きつり笑顔で挨拶を返した。


その分かりやすすぎるリフリッジの戸惑い顔を見て、カエデは(おっ、これはまた面白いことになるかなぁ……)と内心でニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべていた。


一方、カエデの背中におんぶされていたイオリは、一定の心地よい揺れと温かさがよほど気持ちよかったのか、落ち込んでいたのも束の間、すでにスヤスヤと平和な寝息を立てて夢の中へと旅立っていたのだった。

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