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マナのネットワークと、明日の約束

アリスたちとの密談を終えてホテルの外に出ると、空はすでに茜色から深い群青色へと変わり、すっかり日が落ちていた。


「……参ったな。この時間からじゃ、村に帰るのは難しいか」


はじめは夜空を見上げ、深くため息をついた。


頭をよぎるのは、今朝玄関先で「とびっきりのご馳走を用意して待ってるからね!」と満面の笑みで手を振っていたリフリッジの姿だ。


(リフリッジのやつ……夕飯作って待ってるって言ってたな。せっかく用意してくれてるのに、無断外泊はさすがに悪い……)


はじめがどうしたものかと思い悩んでいると、そこへトテトテと子供の姿のマナがやってきた。


「はじめちゃん、どうかしたの? もしかして、リフリッジちゃんと連絡取りたいの?」


図星を突かれたはじめは目を丸くした。


「そうだけど……今からそんな事、出来るのか?」


「ふっふっふっ……任せて!」


マナは小さな胸をドンと叩き、自信満々に笑った。


シーンは変わり、復興したばかりの町の噴水広場。


夜の静寂の中、水音が涼しげに響いている。


「こんなところに、なんの用事だ?」


不思議そうに噴水を見つめるはじめに対し、マナは再び「ふっふっふ」と不敵に笑った。


「はじめちゃん、私と契約して『信者』になったでしょ? 信者同士になるとね、このマナちゃんを通じて『ネットワーク』を繋げる事ができるのよ!」


「ネットワーク?」


はじめが聞き返す。


「とりあえず繋げるから、そこで見てて!」


マナは噴水の水面に向かって何やらブツブツと呪文のようなものを呟き、小さな両手をパッとかざした。


すると、水面が淡い黄金色に光り輝き、そこに鏡のようにひとつの映像が浮かび上がった。


エプロン姿で、お玉を片手にオロオロしているリフリッジの姿だった。


『えっ……!? マナちゃんと……お兄ちゃん?』


水面に映るリフリッジが、驚いたようにこちらを見つめて声を上げた。


噴水越しに、彼女の声がはっきりと聞こえてくる。


『夕飯の準備をしようとしてたら、頭の中にいきなりマナちゃんの声が聞こえてきて……それに、目の前の空間にお兄ちゃんたちの姿が浮かんでるんだけど……。これ、マナちゃんの力なの?』


「そうよー!」


マナが自慢げにピースサインを作った。


「信者同士だと、こうやって神の力を通じて、離れていてもやり取りできるようになるの。昔はコレを使って、遠方の信者の人たちともやり取りをしてたんだから!」


「へぇ……大したもんだな」


はじめは素直に感心しつつ、水面に向かって身を乗り出した。


「リフリッジ、聞こえるか? 実はちょっと込み入った事があって、今日は村に戻れそうにないんだ」


『あ……そうなんだ……』


リフリッジの表情が、目に見えてシュンと落ち込み、少し寂しそうな顔になった。手にしたお玉が所在なさげに揺れる。


『……いつ頃、戻れそう?』


「おそらく、明日の昼頃には戻れると思う。本当にごめんな」


はじめが申し訳なさそうに謝ると、リフリッジはすぐに気を取り直したようにパッと顔を上げた。


『ううん、お仕事なら仕方ないよ! わかった……じゃあ、明日のお昼ご飯は、予定してた夕飯よりもっと豪華な料理にして待ってるね!』


「ああ、楽しみにしてる。火の元には気をつけてな」


はじめが優しく微笑みかけると、リフリッジも嬉しそうに頷いた。


そこで水面の光がスッと消え、通信は穏やかに終了した。


「……さてと」


はじめは伸びをして、後ろで待っていたクレアやイオリたちの方を振り返った。


「今日はもう、この町に泊まった方がいいな。……さっきのホテルのオーナーに、部屋が空いてるか聞いてみよう」


アリスという新たな同行者(?)も加わり、一行は夜の町で宿を探すべく、再びホテルへと足を向けるのだった。

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