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神の強制操作と、100Excelの因果

神の奇跡によって、瓦礫の山から完全に元の姿を取り戻した隣町。


クレアは、建物の細かい修復具合や、町の人々の意識・記憶に妙な変化や後遺症が残っていないかを確認するため、一人で情報収集に出かけて行った。


残されたはじめ、マナ、イオリ、カエデの四人も、なんとなくその場から歩き出し、復興した町をのんびりと見て回る事になった。


ふと、見覚えのある建物の前を通りかかった時のことだ。


「誰だよ!! 俺のホテルの扉を、こんなにめちゃくちゃにぶっ壊したやつは!!」


エアリアルとの戦いの発端となった、あのホテルの前で、オーナーの怒り狂う大声が響き渡っていた。


見れば、他の建物は完璧に直っているのに、なぜかこのホテルの扉だけが、あの夜に蹴り破られた時の無惨な姿のまま放置されている。


(あれ……ホテルの扉は、マナの魔法で修復できなかったのかな?)


はじめが不思議に思って隣を見ると、マナは「うーん」と顎に手を当てて、もっともらしい顔で頷いた。


「これは『因果』ね……。この扉は、はじめちゃん自身が直さないとダメみたい」


「ちょっと待て。扉を壊したのは、俺じゃなくてマナ……」


はじめが猛烈なツッコミを入れようと口を開いた、その瞬間だった。


ピタッ。


突然、はじめの声帯が完全に言うことを聞かなくなった。


それどころか、自分の意思とは無関係に体が勝手に動き出し、怒り狂うオーナーの目の前へとズンズン歩いていってしまったのだ。


「すみません」


はじめの口が勝手に動き、はっきりとした声でオーナーに話しかけた。


「おん!?」


血走った目で振り返るオーナー。


「俺は今、誰がこの扉を壊したか気になってて腹が立ってるんだ! 気安く話しかけるな!」


「それ、俺が壊しました」


(バカッ! 何言ってんだ俺の口!!)


はじめの心の中の絶叫も虚しく、口は勝手に自白を完了させていた。


「なんだと……!?」


オーナーの顔がピクピクと引きつり、怒りがさらに頂点へと達して爆発しようとした、まさにその時。


はじめの体は、見事な直角で深く頭を下げ、さらに懐から自分の財布を取り出すと、弁償のためのお金をスッと差し出していた。


「これで足りなければ、責任を持って扉を修理しますから」


あまりにも流れるような、完璧な謝罪と賠償のコンボ。


はじめの口が勝手にそう宣言した。


「えっ……あ、ああ……」


予想外に素直で誠実すぎる謝罪に、オーナーは完全に毒気を抜かれ、困惑しながらも差し出されたお金を受け取った。


「まぁ……そこまで言うのなら……」


オーナーが受け取ったお金を数えると、ちょうど『100Excel』あった。


(※Excel:この世界のお金の単位。1Excelは日本円で約1000円相当であるため、約10万円の出費となる)


「修理代としては少し足りないが……お前さんが本当に直してくれるのなら問題ない。こちらとしても助かるよ」


オーナーの怒りはすっかり収まったようだった。


「はい。誠心誠意、直させて頂きます」


はじめの口が爽やかにそう答えた瞬間、フッと全身の縛りが解け、身体の自由が完全に戻ってきた。


「……っ!!」


はじめは即座にマナの方へと振り向き、鬼の形相で怒鳴りつけた。


「お前、今何をしたんだよ!!」


「はじめちゃんの『因果の清算』を、手伝ってあげただけだよ?」


マナは全く悪びれる様子もなく、ニコニコと天使のような笑顔で答えた。


「因果も何も、扉を蹴り破ったのはお前だろ! それに俺の金だって……!」


10万円相当の大金が強制的に財布から消えた悲しみに、はじめはぶつくさと文句を言い続けるしかなかった。


神の力(物理・精神操作)の前では、一般人はあまりにも無力だった。


「モグモグ……まぁ、決まったことは仕方ないじゃない」


横では、カエデがお菓子を頬張りながら、無責任な発言をしている。


はじめがため息をつき、途方に暮れて壊れた扉を見上げていると。


「あ、あの……! 私も、お手伝いしますっ」


イオリが、パタパタとしっぽを揺らしながら歩み寄ってきた。


その顔は「お兄様との共同作業!」と言わんばかりに、パァッと明るく輝いている。


「……あぁ、悪いな。助かるよ」


はじめは毒気を抜かれたように苦笑し、頭をかいた。


こうして、神様にハメられたはじめは、嬉しそうに工具を手にするイオリと二人で、ギコギコとホテルのドアの修理を始めるのだった。

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