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等価交換の信仰と、繋がる感覚

真っ白な夢の世界で、空中に浮かぶ「信仰心が足りません」


という赤いエラーメッセージを前に、しばらくうなだれていたマナだったが、やがてバッと顔を上げた。


「……ここで悩んでいても仕方ないわ!」

子供の姿のマナが、小さな両手で自分の頬をパンッと叩いて気合を入れ直す。


そして、はじめの顔を真っ直ぐに見つめて、勢いよく両手を差し出した。


「はじめちゃん! 私の『信者』になって!」


「……やはり、そうなるのか」


はじめは額に手を当てて深くため息をついた。


リフリッジの勧誘劇を見た後だ、いつか自分にもお鉢が回ってくる予感はしていた。


「でも、信者になってマナに何をすればいいんだ? お祈りとかお布施とかか? それに、何か俺に不都合な事はないんだろうな?」


慎重に聞き返すはじめに対し、マナはあっけらかんと首を横に振った。


「別に毎日お祈りしろとは言わないわ。私とはじめちゃんの魂の『繋がり』が強化されるだけで、特に日常で問題はないよ。


それに、信者になれば神様からのご加護で、願い事があればそれが叶いやすくなるっていう特典付き!」


「ほう……」


はじめは少し感心した。


(厄介な縛りがあるのかと思いきや、意外と至れり尽くせりなんだな……。リフリッジがあんなに喜んでいたのも頷ける)


少しだけ安心したように表情を緩めたはじめを見て、マナは人差し指をビシッと突きつけた。


「ただし!」


「うおっ、なんだよ」


「はじめちゃん自身に重大な『使命』があったり、神様への願い事が多かったり、あまりにも大きすぎたりすると


世界の理の『バランス』をとるために、それと同等かそれ以上の『大きな困難』がやってくる事があるから、そこは絶対に注意してね!」


「……等価交換ってやつか」


はじめの顔が引きつる。


願いが叶う分、試練も重くなるというシステムらしい。


マナは腕を組み、空を仰いで口を尖らせた。


「人間ってほんと身勝手なのよねー。ご利益だけはちゃっかりいただいておいて、いざそういう困難が来ると


『神様が守ってくれない!』とか

『全部マナが悪い!』とか言い出すんだから……。


割に合わないったらありゃしないわ」


ブツブツと神様らしからぬリアルな独り言(愚痴)をこぼすマナを見て、はじめは思わず苦笑した。


「わかったよ。もし困難が来ても、マナのせいにはしない。自分で乗り越えるさ」


はじめが真っ直ぐな目でそう約束すると、マナは「当たり前でしょ!」と少し嬉しそうに言い返した。


「じゃあ、いくよ。目を閉じて、私に意識を集中して」


「ああ」


はじめは目を閉じ、目の前にいるマナの存在を強く意識した。


静寂の中、胸の奥底でカチリと何かの歯車が噛み合うような、不思議な感覚がはじめの全身を駆け巡った。


それは熱を帯びた波のように広がり、自分の魂の根源に太く強い線が一本、真っ直ぐに繋がったような確かな感触だった。


(これが……神様と『繋がる』って事か)


目を開けると、マナが満足そうに微笑みながら頷いていた。


神としての威厳を取り戻したマナが、再び空中の家系図のパネルに向かって手をかざす。


スゥッ……。


先ほどまで黒く塗りつぶされ、「信仰心が足りません」と拒絶されていたリフリッジの『父親』の項目が、淡い光を帯びてゆっくりと解除されていく。


隠されていた文字と情報が、ついにその姿を現し始めた。


「……開いたぞ」


はじめがゴクリと唾を飲み込む。


果たして、リフリッジの父親とは何者なのか。


仮面の青年が放った「神龍の一族」という言葉の真意は、ここにあるのか。


はじめとマナは固唾を呑んで、空中に浮かび上がるその情報を確認しようと、静かにパネルを覗き込んだ。

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