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仮面の青年と、神龍の一族

パチン、と弾けるような感覚と共に、はじめとマナは外界から完全に隔離された、真っ白な夢の世界へと降り立った。


「よし、ここなら誰にも見られないし、魔力の干渉も外には漏れないわ」


子供の姿のマナが腕を組んで頷く。


「あぁ、助かる」


はじめは深く息を吐き出し、意を決してポケットからあの気味が悪い『真っ赤な封筒』を取り出した。


封を切った瞬間――。


「なっ……!?」


手紙の便箋を取り出そうとしたはじめの目の前で、封筒からブワッと強烈な魔力の光が溢れ出し、空中に巨大な『ホログラムのような立体映像』を映し出したのだ。


そこに映し出されていたのは、見慣れた父親の姿だった。


しかし、父親は両手を縛られ、苦痛に顔を歪めて膝をついている。


そしてその後ろには、不気味な仮面をつけた見知らぬ青年が立ち、父親の首筋に冷たい剣の切っ先をピタリと突きつけていた。


『――神龍の一族のものよ』


仮面の青年が、低く冷酷な声で語りかけてきた。


封筒の中に入っていた便箋の文字も、父親の几帳面な筆跡ではなく、この青年が書いたと思われる乱暴で鋭い文字で同じ内容が綴られていた。


『貴様には、その大いなる鍵を扱う資格はない。


……お前の仲間の”邪神マナ”が持っている鍵と、お前が持っている鍵。


その二つを大人しく渡せば、この父親は解放してやろう』


「邪神ですって……!?」


理不尽な呼ばれ方にマナがムッとして声を荒げたが、ホログラムの青年は構わず言葉を続けた。


『これから3ヶ月以内に、キシアのニール鉱山に来い。


……もし返事がなければ、あるいは妙な真似をすれば、この父親の命はないだろう』


冷酷な宣告を言い捨てると、青年が剣を振り上げる動作を見せ――その瞬間に映像はノイズにまみれ、フッと完全に空間から消滅した。


真っ赤な封筒の魔力も完全に消え失せ、後にはただの紙切れだけが残された。


白い空間に、重苦しい沈黙が降りた。


「親父が、人質に……」


はじめは血の気が引くのを感じながら、呆然と立ち尽くしていた。


だが、父親の危機に対する焦燥感と同時に、青年の放ったある言葉が、頭の中で強烈な違和感となって渦巻いていた。


(『神龍の一族』ってなんだ……? 俺は、ただのどこにでもいる普通の人間だぞ?)


はじめは自分の両手を見つめた。


(俺の先祖に『龍』がいるなんて、親父からも母さんからも一度だって聞いた事もないし、何か特別な力を持っていた記憶もない。


……まさか、イオリのことを言っているわけではないよな? いや、青年ははっきりと俺に向けてそう言っていたはずだ)


考えれば考えるほど、謎は深まるばかりだった。


「マナ」


はじめは顔を上げ、すがるような目でマナを見た。


「俺の先祖に、龍がいないか調べることはできるか? 俺の体に、本当にそんな血が流れているのか……確かめたいんだ」


神龍の一族。


もしそれが本当なら、自分がなぜ「鍵」を扱えるのか、そしてなぜマナやアンナたちと関わる運命になったのか、すべての辻褄が合うかもしれない。


「……うん。私も、いきなり邪神呼ばわりされた挙句に『神龍』なんて言葉が出てきて、すごく気になってたところだし。わかった……調べてみるね」


マナは真剣な表情でコクリと頷くと、目を閉じ、小さな両手を胸の前で合わせた。


そして、はじめのルーツを魂の奥底から探り当てるべく、その両手に黄金色の神の魔力をゆっくりと集中させ始めたのだった。

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