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再会の涙と、弾かれた二つの鍵

眩い黄金の光がスッと収束し、足元に水面のような波紋が広がる真っ白な空間が現れた。


祠の奥底に隠された、マナの夢の世界。


はじめとクレア、カエデ、そしてフリルの少女の四人は、無事にその精神の最深部へと降り立っていた。


「……待ってたよ、はじめちゃん! みんな!」


空間の中心から声が響いた。


そこに立っていたのは、天女のような極端な薄着を纏い、はち切れんばかりの豊満な肢体を持つ絶世の美女だった。


「ええっ!?」


「ひゃあ……っ」


その刺激的すぎる大人の女性の姿に、カエデが目を丸くして驚愕し、フリルの少女は顔を真っ赤にして両手で顔を覆った。


ただ一人、クレアだけがタバコをくわえたまま、冷静にその肢体を観察してポツリとこぼした。


「なるほど……やはり伝承通りの外見か」


しかし、その絶世の美女の口から紡がれたのは、いつもの甲高く、舌足らずな『子供のマナ』の声だったのだ。


「遅いよー! マナちゃん、一人で寂しかったんだからね!」


絶世の美女が、頬をぷくぅっと膨らませて駄々をこねる。


そのあまりにも凄まじい声と外見のギャップに、顔を覆っていた少女は「ぽかーん」と口を開けて完全にフリーズしてしまった。


そして、カエデは数秒間の沈黙の後、お腹を抱えて床を転げ回り始めた。


「あーっはっはっは!! なにそれ、顔と声が全然合ってない!! 傑作すぎるよマナちゃん!」


「ちょっとカエデちゃん! 笑いすぎ! 神様に向かって失礼でしょ!」


ドタバタと騒ぐ二人。クレアはいつも通り、呆れたように小さくため息をついていた。


そんなカオスな状況の中。


はじめはただ一人、目の前に立つマナの姿をじっと見つめていた。


エアリアルの凶刃が迫った時、自分の盾となって弾け飛んだ小さな背中。


もう二度と会えないかもしれないと、本気で絶望した。


「良かった……本当に、無事だったんだな……」


安堵の言葉が口をついて出た瞬間、はじめの頬を温かいものが伝い落ちた。


「あれ……?」


はじめは自分の左手で頬に触れた。


自分が泣いていることに、彼自身が一番驚いていた。


「はじめちゃん……」


マナはふわりと優しく微笑むと、歩み寄ってはじめの頭をその豊かな胸に抱き寄せ、優しく抱きしめた。


「は、はわわわわっ……!」


少女は顔から火が出そうなほど真っ赤になり、指の隙間からその光景をガン見している。


カエデは床から起き上がり、「ピーッ!」と楽しそうに冷やかしの口笛を吹いた。


クレアはいつも通りの気怠げな態度のままだったが、その口元は少しだけ、本当に少しだけ、安堵で和らいでいた。


「ありがとう。私を助けに来てくれて」


マナははじめの背中を優しく撫でながら、心からの感謝を伝えた。


しかし、再会の甘い時間はそこまでだった。マナははじめの体をそっと離すと、いつになく真剣な表情で皆を見回した。


「……再会の抱擁もそこそこにしたいんだけど、それよりもみんなに伝えないといけないことがあるの」


マナの顔つきが、女神としての威厳を帯びる。


「私、今は自力でこの空間から出ることができないの。


エアリアルとの戦いで霧散する直前、あいつに何らかの『阻害魔法』を空間の出口にかけられちゃったみたいで……。


外に出られるように、みんなに協力して欲しいんだ」


「協力って、どうすればいいんだ?」


はじめが涙を拭いながら尋ねると、マナは虚空に手をかざした。


波紋が揺れ、光の中から一つの重厚な金属の塊が現れる。


「それは……!」


はじめが息を呑む。それは、かつてアンナが持っていた『鍵』だった。


「やっぱり、あんたが回収していたか」


クレアが納得したように頷く。


マナはコクリと頷き、はじめの胸元を指差した。


「はじめちゃんの持ってる鍵と、この鍵。


二つを『融合』させれば、もしかして、ここから強引に出る事ができるだけのエネルギーが得られるかもしれないの」


「鍵を、融合……? 話が見えないんだけど」


はじめが首を傾げると、マナは鍵の真の力について説明を始めた。


「いい? 鍵を融合させるとね、ただ力が足し算になるんじゃないの。


鍵の力が1回融合するごとに『2乗』に跳ね上がるのよ。


最終的に7本の鍵を全て融合させる事によって、天文学的な莫大なエネルギーを得ることが出来るようになる……


そういう恐ろしい仕組みなの」


(2乗に……!? それが7本分集まったら、一体どれだけの力になるんだ……)


はじめは、ERageが血眼になって鍵を集めている本当の理由を理解し、背筋が凍る思いがした。


「わかった。やってみよう」


はじめは首から自分の鍵を外し、左手でしっかりと握りしめた。


「はじめ、互いの魔力の波長を完全に合わせるんだ。


反発しないよう、水が混ざり合うようなイメージで」


クレアの的確な指示に従い、はじめはマナが差し出した鍵に、自分の鍵をゆっくりと近づけていった。


二つの鍵が触れ合う寸前、強烈な魔力の光がスパークする。


(いける……!)


しかし、鍵同士が完全に接触しようとした、その瞬間だった。


『ギィィィィンッ!!』


耳をつんざくような不快な金属音と同時に、黒い稲妻のような拒絶のエネルギーが弾けた。


「うわっ!?」


「きゃあっ!」


融合の力は目に見えない壁に阻害され、強烈な反発力となってはじめとマナの手から二つの鍵を無情にも弾き飛ばした。


弾かれた鍵が、白い空間の床にカラン、カランと虚しい音を立てて転がっていく。


エアリアルの残した呪縛の阻害魔法が、鍵の融合を完全に拒絶したのだった。

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