ERageの影と、仮面の下の素顔
透明な広間の上空に浮遊していた仮面の青年――アイナーは、重力を感じさせないふわりとした動作で、ゆっくりと石造りの祠の前へと降り立った。
「お前達は……」
アイナーは仮面の奥の瞳で、はじめ、クレア、アズマの三人をじっくりと見回した。
「予定よりも随分と早い到着だな。
……それと、私の『監視』を道中で跳ね除けたのは、そこの龍の仕業か?」
アイナーの鋭い視線が、後方に立つアズマを真っ直ぐに射抜く。
「ひっ……!」
アズマはビクッと肩を震わせ、フリルの裾をギュッと握りしめながら視線を逸らした。
「な、なんの事でしょう……私にはさっぱり……」
アズマの反応を鼻で笑ったアイナーに対し、クレアが一歩前に出て立ちはだかった。
「監視……だと? あの『お前に似た煙のようなもの』の事か?」
その冷たく響く声を聞いた瞬間、アイナーの口角が三日月のように吊り上がった。
「おやおや。どこかで聞き覚えのある声だと思ったら……こんなところにいたのですね、『3号』」
「……ッ!!」
『3号』
その無機質な番号で呼ばれた瞬間、クレアの表情が激しい怒りと焦燥に歪んだ。
彼女は即座に剣を抜き放ち、切っ先をアイナーの喉元へと突きつけた。
「その名前で私を呼ぶな……!!」
「怖い怖い。相変わらず血の気の多い事だ」
アイナーは突きつけられた刃先を意に介する様子もなく、ニヤリと不気味な笑みを深めた。
「あの方の『波動』を全く感じられなくなっていたから、最初は全く分かりませんでしたよ。
一体どうやって、あの絶対の呪縛から抜け出したのですか?」
「貴様に答える義務はない!」
クレアがギリッと奥歯を噛み鳴らす。
「そう邪険にしなくとも良いではありませんか。私達は共に、『ERage様』のために行動した仲でしょう?」
(……ERage!!)
はじめはその名を聞き、心臓が大きく跳ねた。
ERage。ここへ来て仮面の青年と完全に結びついた。
(コイツも……ERageと繋がりがある存在だったのか!)
「……顔の半分を覆うその悪趣味な仮面のせいで最初は分からなかったが、今の不快な声と喋り方を聞いて確信した。
やはりお前は、『5号』か……!」
クレアが殺気を込めてアイナーを睨みつける。
「おやおや。私の事は、無骨な番号呼びですか?」
アイナーは芝居がかった手つきで大げさに肩をすくめた。
「『アイナー様』と呼びなさい。私の名前は、そこの小間使いの男に教えてもらったはずでしょう?」
そう言って、アイナーがスッと指を差した先
はじめ達がハッと振り返ると、いつの間にか列の最後尾にいたはずのオーナーが、顔を真っ青にして透明な床の上にうずくまっていた。
「ぐぅ……ッ、あ、ぁぁ……ッ!!」
オーナーは胸を掻き毟りながら、息も絶え絶えに苦しそうな表情で床を転げ回っている。
「無駄な抵抗を……。私の支配下からは、決して逃れられませんよ」
アイナーが冷酷に見下ろす。
「貴様……何をした!?」
クレアが怒声を上げる。
「何、ただの便利な道具として使わせてもらっていただけですよ。……さぁ、歓迎の宴と行きましょうか」
アイナーが仮面の奥で不敵な笑みを浮かべた




