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優しき青龍と、神様の除霊

ニール鉱山での過酷な救助活動を終え、泥にまみれたはじめ、クレア、アズマの三人は、無事にオーナーの屋敷へと戻ってきた。


大部屋に入ると、そこで待機していたカエデとマナがすぐに出迎えてくれた。


はじめ達は、今日の坑道での出来事――アズマの活躍によって土砂の撤去が進んだこと、しかし残念ながら4人の作業員の遺体が発見されたことを二人に報告した。


話を聞き終えたアズマは、真剣な面持ちでマナの前に進み出ると、すがるようにその服の袖を掴んだ。


「マナ様……お願いがあります。無事に犠牲者の方々の魂が天へと還れるよう、神様であるマナ様からも祈りを捧げてほしいのです。私の祈りだけでは、彼らを完全に救えているか不安で……」


アズマの必死の訴えに、マナはいつもと違う神妙な空気に少し困惑した顔を見せた。


しかし、アズマの真っ直ぐな瞳に根負けしたように、すぐに優しく微笑んだ。


「……まぁ、アズマちゃんの気が済むなら、一肌脱いでやったげるわよ」


マナは気前よく引き受けると、愛用の杖を構え、アズマに向けてくるくると器用に回し始めた。


ズズズ……。


次の瞬間、大部屋の上空の空間がぐにゃりと歪み、昼間にアズマが開けたものとよく似た、不思議な「穴」がぽっかりと現れた。


同時に、肌を刺すような冷たい空気がその穴から室内に向けてヒエヒエと流れ込んでくる。


「うわ、寒っ……!」とはじめが身を震わせる。


「……やっぱりね。アズマちゃんは優しすぎるから、お祈りしている間に『変なもの』まで一緒に連れてきちゃったわね」


マナがそう呟いた直後、アズマの身体からモヤモヤとした黒い煙のようなものが這い出してきた。


その不気味な煙は、意志を持っているかのように悶えながら、上空の穴へとズブズブと吸い込まれていった。


「よし、まずは悪いものをポイっと。それじゃ、本番いくわよ!」


マナがもう一度力強く杖を振ると、上空の穴の色が不気味な黒から、柔らかな金色へと変化した。


それと同時に、今度は部屋全体を包み込むような、ぽかぽかと温かい空気が流れ込んでくる。


すると、アズマの胸元から、今度はいくつかの淡い光の玉がふわりと抜け出した。


その光の玉は、まるでアズマに対して「ありがとう」とお礼を言っているかのように、アズマの周囲を優しくふわふわと舞った。


そして、導かれるように上空の金色の穴へと吸い込まれ、消えていった。


「これでおしまい! ヨシ!」


マナが杖をピシッと止めると、空間の穴はパッと光が弾けるようにして跡形もなく塞がった。


「すごいです……! マナ様、ありがとうございます!」


アズマは目の前で起きた奇跡にすっかり感激し、目を輝かせてパチパチと拍手を送った。


「マナ、最初のあの黒い煙のようなものは一体何だったんだ?」


クレアが顎に手を当て、警戒を怠らない目で尋ねた。


「あぁ、あれね。亡くなった人の無念や、残された人の悲しい心につけ込んで、他人の優しい心に取り憑く『悪霊』みたいなものよ」


マナは杖を肩に担ぎながら、アズマの顔を覗き込んだ。


「アズマちゃん、身体がすっきりしたでしょ?」


「はい! どんよりとしていた胸のあたりが、今はとてもスッキリしています!」


アズマは満面の笑みを浮かべ、本当に身体が軽くなったようにその場で軽く跳ねてみせた。


そんな神秘的な一連の儀式が行われている間、部屋の隅のソファでは、カエデが特に興味なさそうな顔をして、オーナーの屋敷で出されたおまんじゅうを「もぐもぐ」と無心で食べていた。


その様子を見たアズマは、ふと何かを思いつき、マナの耳元にそっと顔を近づけて内緒話のように耳打ちした。


「(……マナ様。あのカエデさんという方も、念のために一度、お祓いをして払ってもらった方がいいのではないでしょうか? いつも変な行動をしていますし……)」


その密談を聞いたマナは、おまんじゅうを頬張るカエデを一瞥し、くすくすと笑いながらアズマに答えた。


「あはは、大丈夫よ。ああいう悪霊っていうのは誰にでもくっつくものだけど、アズマちゃんみたいに『優しすぎる心の持ち主』じゃなければ、そんなに影響も出ないから放っておいても平気よ」


マナはさらにウインクを付け加える。


「それにね、今回はアズマちゃんが一生懸命お願いしてくれたから、特別に払ってあげたんだからね?」


「まぁ……! 私のために……!」


アズマはマナの気遣いに大変感激した様子で、再び胸の前で手を合わせて拝むように感謝の言葉を述べた。


カエデの相変わらずのマイペースぶりに呆れつつも、神様の確かな加護に守られていることを実感し、一行は明日の捜索に向けて絆を深めたのだった

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