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鉱山町への到着と、浮きまくる一行

林を抜け、再び荒涼とした大地を歩き続ける一行。


やがて足元の土が硬く踏み固められ、整備された道のようなものが見えてきた。


「おそらく、鉱山から掘り出した鉱石を運ぶために舗装されているのだろう。


いよいよ鉱山町が近くなってきたようだ」


クレアが地面のわだちを確認しながら言った。


「やっと着いたー! ……って、ここで安心しちゃダメなんだっけ?」


カエデが背伸びをしながらはじめに尋ねる。


「ああ。そもそも鉱山町に着くことが目的じゃないからな。俺の親父を助けるために、ここまで来たんだから……」


はじめは道なき道の先を見据えて呟いた。


(親父は家族を養うために、元々あちこちへ出稼ぎに出ることが多かった。でも、それがまさかこんな事になるなんてな……)


はじめの脳裏に、苦労ばかりかけてしまった不器用な父親の顔が浮かぶ。


「まだ町を囲む壁のようなものは見えませんね……。鉱山町に着くためには、もうしばらく歩く必要がありそうです」


視力の良いアズマが目を細めて遠くを見渡しながら報告した。


「えぇー……。あともうちょっとって思ったら、急にどっと疲れてきたー」


カエデがあからさまに肩を落として愚痴をこぼす。


「文句を言うな。鉱山町に着いたら、今日はそこで休もう」


クレアが宥めるように言い、一行はさらに歩みを進めた。


しばらく歩いていると、地平線の向こうにようやく町を囲む壁が見えてきた。


しかし、アリスやアズマがいたキシアの辺境の町に比べると、ずいぶんと簡素で粗末な造りの壁だった。


(町そのものとしては、国にとっておそらくそれほど重要な拠点ではないのだろうな)


はじめがそんな事を考えながら歩いているうちに、一行はついにニール鉱山のふもとにある鉱山町の入り口へと到着した。


「止まれ」


入り口の前に立っていた屈強な男――見張りの鉱夫が、鋭い声で一行を止めた。


アリスのいた町のように、魔法のレーザー線のような高度な防犯設備はない。


警備自体はそこまで厳重ではないようだ。


「ここはニール鉱山の鉱山町だ。お前たちは、なんの目的でここに来た?」


鉱夫が怪訝な目で一行を睨みつける。


すると、クレアが自然な動作で一歩前に出た。


「実は、このはじめの父親がここで出稼ぎをしているのだが……急に連絡がつかなくなったという話を聞いて、心配してここまでやってきたんだ」


クレアは流れるような嘘で機転を利かせながら、懐からアリスにもらった『旅券』を取り出し、鉱夫に提示した。


鉱夫は手渡された旅券の印をまじまじと確認した後、ふっと表情を和らげた。


「そうか……そういう事情か。実は……つい最近、鉱山で地滑りがあってな。まだ見つかっていない鉱夫が何人かいるんだ。

もしかしたら……」


鉱夫たちは顔を見合わせ、痛ましそうな視線をはじめに向けた。


「ぼうず、気をしっかり持ってな」


「……はい。ありがとうございます」


はじめは神妙な面持ちで頭を下げた。クレアの機転のおかげで、一行は全く怪しまれることなく、無事に鉱山町の中へと入ることができた。


町の中は、入り口の男のような土に汚れた屈強な鉱夫たちがひしめき合っていた。その男たちの家族らしき女性や、痩せこけた子供たちの姿も見受けられる。


建物はどれも古く、全体的に貧しく殺伐とした空気が漂っていた。


「……さて。どこか、宿泊できるような場所はあるだろうか」


クレアが周囲の建物を観察しながら呟く。


「えー。ここで無理に泊まらなくても、マナちゃんの『夢の空間』で寝た方が絶対いいよー!」


カエデが辺りを見回して眉をひそめた。


明らかに貧しい雰囲気の町で、まともなベッドのある宿泊施設など期待できそうになかったからだ。


「そうはいかない。急に町から姿を消したりすれば、変に怪しまれるだろう。目立つわけにはいかないんだ」


クレアが冷静にカエデの提案を却下する。


すると、カエデは呆れたように肩をすくめた。


「いやいや、すでに十分すぎるくらい浮いてると思うよ? だって、フリルの龍と、精霊狸と、ちびっ子神様と、傭兵みたいな医者と……『冴えない男の子』の集まりなんだから!」


「ちょっと! にぃにを冴えない男の子なんて呼ばないでください!!」


カエデの言葉に、アズマが即座に反応してぷりぷりと怒り出した。


「事実でしょーが!」


「事実じゃありません! にぃにはかっこいいんです!」


「はぁ……。お願いだから、こんな人目のあるところで喧嘩しないでよ……」


またしても始まった言い争いに、マナが頭を抱えて念を押す。


その時だった。


「そこのお人。……どうやら、お困りのようですね」


わちゃわちゃと揉めている一行の背後から、透き通るような、それでいてよく響く男の声がした。


振り返るとそこには――泥と汗にまみれたこの鉱山町には全く似つかわしくない、仕立ての良い服を着た『長身のイケメン男性』が、穏やかな微笑みを浮かべて立っていた。

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