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新しい呼び名と、響き渡る寝言

「それじゃあ、またな」


ホログラム越しのリフリッジとイオリに手を振り、はじめは通信を終えた。


通信を切る直前、リフリッジは泣いていたアズマの事を「あの子、大丈夫かな……?」と本気で心配してくれていた。


(また嫉妬してめんどくさい事になるかと思っていたけど……完全な肩透かしを食らったな)


はじめは少し驚きつつも、小さく微笑んだ。


あのリフリッジが、初対面の見知らぬ龍の子を気遣い、さらにはイオリとも姉妹のように仲良くやっている。


(リフリッジのやつも、俺がいない間に少しずつ成長してるんだな……)


はじめはしんみりとした感動を覚えつつ、「よし、俺もしっかりしないとな」とギュッと拳に力を込め、自らに気合いを入れた。


ふと視線を落とすと、アズマはすっかり泣き止んでいた。


少し目を腫らしてはいるものの、フリルの袖口を握り、指を口にくわえながら、ジッと熱い視線ではじめの顔を見つめていた。


「ん? どうした?」


はじめが首を傾げて声をかけると、アズマはポツリと呟いた。


「……いいなぁ」


「いいなぁ……って、何がだ?」


「妹さんとイオリ様が、はじめさんの事を『お兄ちゃん』とか『お兄様』って呼んでいたことです」


アズマは羨ましそうに唇を尖らせた。


「イオリ様は、はじめさん……いや、私よりもずっとずっと年上なのに……」


「えっ、そうなのか?」


はじめは、白龍の年齢事情を初めて知って驚いた。


「わ、私も……『お兄ちゃん』って、呼んでみたいなって……。


あ、でも、他の方と被っちゃうのは嫌だなぁ……」


アズマは顔を真っ赤にして俯き、身体をモジモジとくねらせた。


「アズマも、俺の事を好きなように呼びたいのか?」


はじめが尋ねると、アズマは顔を真っ赤にしたまま、コクコクと激しく首を縦に振った。


「まぁ……アズマが呼びやすいなら、好きなように呼んでくれて構わないよ」


はじめは、幼い妹を愛でるような優しい笑顔で答えた。


その甘く微笑ましいやり取りを、部屋の少し離れた場所から腕を組んで眺めていたクレアは、静かに思考を巡らせていた。


(……はじめの、ああいう無自覚に相手の懐に入り込むタラシなところは、一体誰に似たのだろうか。母親か? いや、父親か?)


クレアは目を細める。


(仮面の青年に囚われているというあいつの父親にも、なんだか少し興味が出てきたな……)


一方、はじめから許可をもらったアズマは、顎に手を当てて「うーん」と少し考え込んでいた。


やがて何かを閃いたように顔を上げると、上目遣いではじめを見つめ、蚊の鳴くような小声で口を開いた。


「……にぃ、に……」


自ら口に出したその甘えた響きに、アズマは自爆したかのように顔をさらに真っ赤に茹で上げ、恥ずかしさのあまり両手で顔を覆ってしまった。


「『にぃに』って呼びたいんだな。……うん、いいよ」


はじめは照れるアズマの様子にクスッと笑い、その頭を優しくポンポンと撫でてあげた。


アズマの頭から、嬉しさのあまり湯気が出そうだ。


兄妹のような温かく甘い空気が、夢の空間を包み込もうとした――その瞬間だった。


「グー……、スゥー…………」


部屋の一番大きなベッドで、先程からずっと響いていたカエデのいびきが、ピタリと止まった。


そして。


「――ケダモノォォ~~ッ!!」


静寂を切り裂くような、カエデの特大ボリュームの寝言が、夢の空間中にこだました。


せっかくの感動的で甘い雰囲気が、その理不尽な一言によって見事に粉砕された

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