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白龍との通信と、信仰の儀式

「……なんか、アズマちゃんと話してたらイオリちゃんの事を思い出したわねー」


ベッドの端に腰掛けていたマナが、唐突にそんなことを言い出した。


(また突然、急だな……)


はじめが内心でツッコミを入れていると、マナは思い立ったが吉日とばかりに杖を取り出し、空中に向かって念を飛ばした。


すると、空間が淡く光り出し、ホログラムの映像がふわりと浮かび上がった。


そこに映し出されたのは、クロベキアにいるリフリッジとイオリの姿だった。


『きゃあ!?』


突然目の前にホログラムが現れたことで、リフリッジが驚いて小さな悲鳴を上げた。


「ごめんねー、驚かせちゃって。ちょっと何してるのか気になったんで繋いでみたの。


あ、イオリちゃんも一緒にいるじゃない。好都合だわ」


マナがのんきに手を振る。


映像の中の二人は、テーブルに向かって何やら一緒に絵を描いていた最中だったようで、イオリは突然の通信に何が起こったのか分からず、ポカンと口を開けていた。


しかし、そのホログラムの映像を見たアズマの様子が一変した。


「……白龍さま!」


アズマは映像に歩み寄り、ポロポロと涙をこぼし始めた。


長年離れ離れになっていた同族の姿を見て、孤独だった日々の様々な事が一気に思い出されたのだろう。


「よぉ。二人とも元気にしてたか?」


はじめがホログラム越しに軽く挨拶をすると、二人の表情がパッと明るくなった。


『お兄ちゃん!』


『お兄様!』


リフリッジとイオリが、とても嬉しそうな声を揃えて返してくる。


(……えっ?)


『お兄様』というイオリの呼び方を聞いて、アズマは不思議そうにはじめをじっと見た。


「また何か変な事をはじめてるな?」


騒ぎを聞きつけて、クレアが様子を見にやってきた。


カエデは相変わらず一番大きなベッドで「グー……」といびきをかいて爆睡している。


「キシアに無事にこられたよ~。とりあえず二人の事を思い出したから、定時連絡ってことで」


マナが報告すると、リフリッジはホッとしたように胸を撫で下ろした。


『そうなんですか? よかったです! ……あれ? カエデちゃんは? それと、その後ろで泣いてる女の子……』


リフリッジがアズマの存在を見つけた瞬間、彼女の表情がサッと険しいものに変わった。


(またお兄ちゃんの周りに見知らぬ女が増えている……!)という、凄まじい嫉妬心が発動したのだ。


そのただならぬ気配を察してか、隣にいたイオリが静かに説明した。


『リフリッジ様、彼女は青龍の化身です。私の同族ですよ』


「……覚えていて、くださったのですね……!」


イオリの言葉に、アズマは感激してついにボロボロと本格的に泣き出してしまった。


(や、やだ、私から向けられた敵意や嫉妬心がバレて泣いちゃった……!?)


純粋に感動して泣いているアズマを見て、リフリッジは完全に勘違いし、ひどくバツの悪そうな顔をして視線を泳がせた。


そんなリフリッジをよそに、イオリはホログラム越しに尊敬の眼差しではじめを見つめた。


『お兄様とマナ様が彼女と一緒に行動しているということは……青龍の抱えていた業(因果)を解消してくださったのですね! さすがお兄様です!』


「まぁな。二人とも、元気にしてたか?」


はじめが改めて尋ねると、イオリは頬を染め、興奮気味に答えた。


『はい! 実は今、リフリッジ様と一緒にお兄様の事を考えて、お兄様の絵を描いていたところだったんです!』


そう言って、二人は描いていたスケッチブックをホログラムに向けて見せてくれた。


そこに描かれていたのは……やたらと足が長く、瞳がキラキラと輝き、まるで少女漫画の王子様のように『だいぶ美化されたはじめの姿』だった。


「……はじめちゃんって、こんなにイケメンじゃないと思うけど」


マナがホログラムの絵と現実のはじめの顔を交互に見比べて、ジト目でツッコミを入れる。


「なんだよ、別にいいだろ。妹たちの目にそう見えてるなら」


はじめは照れ隠しにそっぽを向いた

「あ、カエデちゃんは長旅で疲れたのか、あそこでいびきかいて寝てるわよ」


マナがベッドを指差すと、通信越しにもかすかにカエデのいびきが聞こえたらしく、リフリッジ達は苦笑いしていた。


「ところで、話変わるけども」


マナは表情を少し真面目なものに変え、切り出した。


「キシアでは私への信仰をしてる人がほとんどいないせいで、かなり力が制限されてるの。


だから、イオリちゃんに私の『信者』になってもらいたいんだけど……」


『信者、ですか?』


イオリは突然の提案に話が見えないという顔をしたが、すぐに真剣な表情で頷いた。


『よく分かりませんが……私がお祈りする事で、お兄様達の助けになるのなら、喜んでお受けします』


「ありがとう! あ、ちなみにそこの子は『アズマ』って名前になったの。はじめちゃんが決めてあげたのよ」


マナがアズマを紹介すると、アズマは涙を拭い、居住まいを正した。


「はい! 白龍さま、これからはアズマとして生きていきます!」


「アズマちゃんも、私の信者になってくれる?」


マナが尋ねると、アズマもまた「はい!」と元気よく答えた。


恩人であるはじめを助けるためなら、断る理由などない。


「じゃあ、さっそく儀式をするよー!」

マナが杖を構え、神聖な魔力を練り上げ始める。


ベッドで爆睡するカエデのいびきが響く中、クレアは興味深くその様子を見守っていた。


クロベキアとキシア、遠く離れた二つの場所を繋ぐ、奇妙で神聖な儀式が今まさにはじまる

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