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かつ兵衛の光と、炎の中のアンナ

絶体絶命の状況の中、クレアは自身の腰のベルトに結びつけていた小さな巾着袋が、淡く不思議な光を放っていることに気がついた。


「これは……」


クレアは、その袋の中にしまっていた『かつ兵衛』の存在を思い出し、急いで袋の口を開けた。


すると、袋の中から温かな光の塊がふわりと立ち昇った。


光は空中でぼんやりとした人の形を形成したかと思うと、次の瞬間、すっと一直線にはじめの顔へと向かい――あろうことか、はじめの『鼻の穴』から勢いよく体内へと吸い込まれていった。


「なっ……!?」


クレアが目を丸くした直後、はじめの身体がビクンッと一度だけ強く痙攣した。


そして、信じられないことに、あれほどとめどなく溢れ出ていた血が嘘のようにピタリと止まり、荒れ狂っていた呼吸もいくぶんか落ち着きを取り戻したのだ。


かつ兵衛の何らかの強力な加護が、彼の内側から働いたらしい。


「良かった……っ」


ポチが、ピンと張り詰めていた緊張の糸がプツリと途切れたように、その場にへたり込んだ。


「いや、まだ予断は許さない状況だ」


クレアははじめの額の血と汗を拭いながら、厳しい顔でポチに尋ねた。


「私達に、何か他にできる事はないのか?」


ポチは弱々しく首を横に振り、血に染まったはじめの手を握りしめた。


「もう、外からできる事はありません。

あとは、はじめさんが過去を打ち破り、

無事に戻ってきてくれる事を祈りましょう」


その頃、はじめの精神世界。


燃え盛る実家の幻影を背景に、エアリアルの猛攻にただひたすらに耐え続けていたはじめだったが、限界はとうに超えていた。


しかし、圧倒的優位に立っているはずのエアリアルの方にも、明らかな『疲れ』が見え始めていた。


「ハァッ……ハァッ……! ここまで私を手こずらせた奴は、貴様がはじめてだぞ! 小僧!」


エアリアルは肩で大きく息をしながら、苛立ちと驚きが入り混じった声で叫んだ。


ポチの加護によって、絶対に死ぬはずのダメージを受けながらも、はじめの意識は驚異的なしぶとさで消滅を拒み続けていたのだ。


「褒めてやろう。……だが、今度こそ次で終わりだ!!」


エアリアルが目をカッと見開き、全身の魔力を限界まで集中させ始めた。


すると、彼女が手にしていた細身の魔槍が、ドクン、ドクンと脈打つように徐々に肥大化していく。


やがてそれは、元の原型を留めないほど巨大かつ、おぞましく不気味な姿の槍へと変貌を遂げた。


(あぁ……あれを食らったら、今度こそ終わるな……)


地面に倒れ伏したはじめは、霞む視界でその絶望的な光景をただぼんやりと眺めていた。


身体は鉛のように重く、指一本動かすことすらできない。


「このままだと、本当にここで終わってしまうわよ……少年」


ふと、すぐ隣から、どこか聞き覚えのある凛とした声が響いた。


(……え?)


はじめが虚ろな目をゆっくりと横に向けると、そこには信じられない人物が立っていた。


はじめは、極限状態の疲労の中でも、その驚きを隠すことができなかった。


炎に照らされたその横顔。


はじめの隣に涼しい顔をして立っていたのは、『アンナ』その人だったのだ。


「消し飛べえええっ!!」


エアリアルが、決着をつけるべく禍々しい巨大な魔槍の力を極限まで溜め続けていた

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