表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

108/155

すでいらじの襲撃と、茄子の怨念

アリスの案内で到着した彼女の故郷の家は、一行の想像をはるかに超える思いのほか大きな屋敷だった。


「わぁー、すっごくおっきいお家だね!」


カエデが立派な門構えを見上げて感嘆の声を上げる。


周囲に人の気配は全くしないものの、庭の植え込みから石畳に至るまで、隅々まで行き届いた管理がされているのが素人目にもわかった。


アリスはいらじのコックピットから降りると、屋敷の重厚な扉を開け、中へと入っていった。


はじめ達もそれに続く。


しかし、薄暗いエントランスに足を踏み入れたその瞬間だった。


暗闇の中で、不気味な赤い目のようなものが無数にピカッと光った。


次の瞬間、空間に『ピーガーッ』という耳障りな音が鳴り響いた


続けて「ブゥン……!」という不気味な声と共に、暗闇から何かが一斉にはじめに向かって襲いかかってきたのだ。


「うおっ!?」


「止まれ!!」


はじめが身構えるより早く、アリスが鋭い大声を上げた。


その鶴の一声で、襲いかかってきた影たちはピタリと空中で一斉に停止し、そのままボロボロと床に転がった。


「ゴホッ……ゴホッ、ゲホッ……!」


急に大きな声を出した無理が祟ったのか、アリスは床に手をつき、ひどく苦しそうに激しく咳き込んだ。


アリスが荒い息を吐きながらパチンと指を鳴らすと、屋敷全体にパァッと明るい灯りがともった。


床には、いらじをそのまま小さくしたような『小型の茄子のゴーレム』が複数体、コロンコロンと転がっている。


「これは……外のいらじに似ているようだが」


剣の柄に手をかけていたクレアが、警戒を解かずにアリスに尋ねた。


アリスはまだ息を整えながら、口角を上げて笑った。


「いらじのプロトタイプ……『すでいらじ』さ。


こいつらも、はじめの事が大嫌いみたいだねぇ……。


侵入者と認識して、すぐに敵認定したようだ。クックック」


「いや、笑いごとじゃないんだが……!」


はじめが床に転がる小さな茄子たちを指差して抗議する。


「なるほど。それで、こいつらがこの屋敷の番人といったところか」


クレアが屋敷の清潔さに合点がいったように頷く。


「番人だけじゃない。屋敷の管理なんかも、このすでいらじがやってるよ。こんななりだが、意外と手先は器用だからねぇ。クックック」


アリスはゆっくりと立ち上がると、クレアに向き直った。


「とりあえず、はじめが敵ではないとこいつらに教え込むから、ちょっとの間、あいつを守ってやっておくれ」


「わかった。任せておけ」


クレアがはじめの前に立ち、盾となるように身構える。


アリスが再び指を鳴らすと、床に転がっていたすでいらじ達が一斉に起き上がり、すぐさまはじめを赤い目でギロリと睨みつけた。


アリスがすかさず、何やら複雑な呪文のようなものを早口で唱え始める。


再起動直後で動きが鈍いのが幸いした。


すでいらじ達は「ブゥン……」と小さな敵対音を鳴らしてはじめに飛びかかろうとしたが、すぐに動きが止まり、やがてその不気味な赤い目が、穏やかな『青色』へと変わって大人しくなった。


「よし。コレでこいつらが危害を加える事はないよ」


アリスが息をつき、呪文を解いた。


安全が確保されたのを見て、カエデが不思議そうに首を傾げる。


「ねぇ。なんで茄子のゴーレムに、はじめちゃんはこんなに嫌われてるんだろうね? 子供の頃に、茄子を食べ残しした怨念とかかな?」


「知らねぇよ! 茄子なんか食べ残した事もないよ!」


はじめが全力で濡れ衣を否定する。


マナも「さすがに茄子にそこまでの知能はないでしょ……」と苦笑いしていた。


「まぁ、何はともあれ。とりあえず食事でもして、今後の事を話そうじゃないか」


アリスがすでいらじ達に片付けを指示しながら、一行に向かって歩き出す。


「こっちだ。案内するよ」


アリスの導きにより、一行は清潔に整えられた屋敷の食堂へと案内されていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ