表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/155

町の守護龍と、理不尽な濡れ衣

「その子は、この町の『守護龍』だよ」


いらじのコックピットの中から、アリスがクックックと笑いながら事もなげに爆弾発言を落とした。


「守護龍……?」


はじめが目を丸くしてオウム返しにする。


しかし、カエデは全く動じることはなかった


「そーなんだ~。ねぇ、名前はなんて言うの?」と、木の裏に隠れて震えているフリル姿の少女に気さくに尋ねた。


「この子は自分の名前にコンプレックスがあるからねぇ。言わないと思うよ、クックック」


アリスが面白そうに笑う。


その言葉通り、少女は丸みを帯びた耳をペタンと伏せ、木の裏から頬をプクッと膨らませて言い返した。


「あなたには、言いたくありませんっ!」


その一連のやり取りを見ていたはじめの脳裏に、ある可能性が過ぎった。


フリルの服、しっぽ、そして『龍』というキーワード。


クロベキアにいたイオリと、全く同じパターンだ。


「……龍ということは。やっぱり、こいつも『男』なのか……?」


はじめが恐る恐るアリスに確認する。


「そうだよ。この子も、これでも強い龍だからねぇ。クックック」


アリスの笑い声と共に確定が下された瞬間、カエデがサッと顔をしかめ、はじめの方をジロリと見た。


そして、木の裏の守護龍(男の娘)に向かって大声で忠告した。


「気をつけて! あのはじめに何か変なことされそうになっても、絶対に断ってね!」


「…………」


マナが両手を頭の後ろで組み、「あーあ。またカエデちゃんがうるさくなりそうねぇ……」と呆れたように天を仰いだ。


すると、木の裏の守護龍が、カエデに向かってピシャリと正論を言い放った。


「いきなり見ず知らずの私に抱きついてきたあげくに、自分のお友達の悪口を言うような人には、絶対に名前を教えたくありません!」


「うー……悪いのははじめちゃんなのに」


カエデは納得がいかない様子で、ジロッと恨めしそうな目をはじめに向けてきた。


(今のこの流れで、なんで俺が悪くなるんだよ!!)


はじめは心の中で全力のツッコミを入れたが、もはや口に出して訂正する気力すら湧かなかった。


隣では、マナが「うんうん、理不尽だよね、わかるよ」といった同情の顔をして、はじめの腰をポンポンと優しく叩いている。


「はぁ……」


はじめは深く、深いため息をついた。


「お前たちは、本当にいつもどこへ行っても何かしらの騒ぎを起こすな……」


半ば呆れ果てた口調で、クレアがこめかみを押さえた。


カエデの奇行のせいで完全に警戒モードに入ってしまった不機嫌な守護龍を、マナが「ごめんねー、あの子ちょっと悪気はないんだけど変わってるだけだから」と苦笑いしながらなだめている。


「まあ、とりあえず今日はもう遅い。立ち話もなんだし、私の家に泊まっていっておくれ」


アリスが提案し、いらじのハッチを閉めた。


キシアに到着して初めての町。


色濃い疲労と相変わらずのトラブルの気配を抱えながら、一行はアリスの案内で彼女の家へと向かって歩き出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ