24、ぶた、ぼくちゃんとするよ
感謝することも忘れがちな大人ですが、この童話を書いてしっかり改めようと思います。
「やった~!ドライブしたあとは、ぼくじょうだ~!」
「もうハヤテ、はしゃぎすぎ」
うかれていたら、姉ちゃんがわきばらをつついた。車はどんどんすすんで、まちのはずれへ出る。
「あっ、ブタ!」
しんごうが赤にかわって、となりにトラックがとまった。トラックには、たくさんのブタがのっている。
「わぁ、ブタってあんなに耳が大きいんだねぇ」
姉ちゃんも、ブタをテレビでしか見たことがないので、ほんもののブタのはく力におどろいていた。
一ぴきと目があった。目がおもったより大きくて、くりくりしている。しっぽもくるんとしていて、すごくかわいい。
へぇ、ブタってペットにしたいくらいの生きものなんだなぁ。
いくらでも見ていられそうで、生きものがすきなぼくは、ブタにちょくせつさわりたくなった。
「ぶた肉にされにいくのね」
お母さんが少ししずんだこえでいった。
「え~、ころされちゃうの?」
姉ちゃんがショックをかくしきれずに言う。
「そうだ、あのブタは人の食りょうになるためにトラックにのっているんだ。ミクもハヤテもハンバーグが大すきだろう?ブタにかんしゃしないとな」
「そうよ。どうぶつやしょくぶつのいのちを食べて、私たちはいのちをつないでいるの。かんしゃしてもしきれないくらいだわ」
お父さんとお母さんがしみじみ言う。
またブタと目があった。これからころされにいくなど、おもっていないような、やさしい目だった。かた耳がぴくんとうごいて、たれた。ほんとうにだれかのぺットだといってもおかしくないほど、かわいい。
しんごうが青になって、トラックは左にまがった。ぼくは左うしろをふりかえって、トラックをずっとずっと見ていた。
「わたし、ハンバーグ、すきでいいのかな?」
姉ちゃんがぽつりといった。
「それはいいのよ。それが『いのちのきまりごと』なの。ブタだってトウモロコシとかおイモとかいのちあるものを食べるのよ、それと同じ。ただあたりまえだと思ったらダメ。どんな食べものでもいのちを食べるということをわすれないようにね」
いのちを食べる。もしトイプードルのうちのジョイが食べられたら……。あの小さなモフモフしたすがたをおもい出して、ぼくはむねがぎゅっとした。
ぼくじょうにつくまでもついてからも、ぼくはブタのことばかりかんがえていた。ポニーにニンジンをやりながら、ポニーは年をとったらどこへいくのだろう?とおもった。もしかして人に食べられるの?むかし、馬の肉を食べたことがあるとお父さんが言っていたから。またむねがぎゅっとした。
どうしてみんな食べるのかな?人だけでなく、どうぶつたちも。食べなきゃいきていけないのは、どうしてなのだろう?ハンバーグだけでなく、ラーメンでもカレーでも、だいすきな食べものは山のようにある。どれも食べるとしあわせになる。
お昼になって、ぼくはわざととんかつ定食をちゅうもんした。姉ちゃんは、和風スパゲッティ。ハンバーグ定食がない時は、いつもとんかつ定食だったのに。
とんかつがはこばれてきた。とんかつをまえにかくごをきめて、食べる。じゅわあ。肉のしるがとびでる。口の中でほっほっとしながら、むちゅうで食べた。めちゃくちゃおいしい。『いのちのきまりごと』というお母さんのことばとあの目があったブタをおもい出して、ぼくは心のなかで話しかけた。
「ねぇ、ブタ。ぼくちゃんとするよ。うまくいえないけれど、かんしゃするだけじゃぜんぜん足りないとおもった。ぼく、ほんとうにちゃんとする。どうぶつたちやしょくぶつたちに『あんなやつにたべられたくないなぁ』とか『あんな人間にたべられてむねん』とかおもわれないような人になるね。そしてさ、ブタがぼくにこれだけのしあわせをくれるように、ぼくもブタたちをしあわせにできるような人になる」
いのちを食べるこのせかいで、ぼくにはなにができるかな?いつもは食べのこす「せんぎりキャベツ」もぜんぶ食べて「ごちそうさまでした」と手をあわせて、ぼくはブタをまたおもった。
おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございました!




