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織花童話集Ⅱ  作者: 織花かおり


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25/25

25、あんこ記念日

 たかなしさん家の冷蔵庫に、ケーキの箱がおかれました。

あんこのあんこちゃんは今すぐ中を見たいようです。

でもお孫さんのふうちゃんが遊びに来るころに箱は開かれるでしょう。


 たまにやってくるケーキさんは、みんなのあこがれです。

真っ白なおはだに見ているだけでぽっぺが落ちちゃうような大きないちご。

たかなしさん家で一番人気の真っ白なお皿くんは、ケーキさんをのせられると、とびあがって喜びます。


 あんこちゃんの近くにいたシャインマスカットちゃんが話しかけてきました。

「今日の朝のデザートは私だったけれど、あんこちゃんはデザートのイメージじゃないし、おやつにはケーキさんがいるし、しばらく出番がなさそうね」

「そんなこと!ない……といいな」

「あんこちゃんっておばあちゃんが作るおはぎとかおだんごのときしかほとんど出番がないじゃない?」

「そんなことないよ!おしるこの時だって……」

「でもね、ふうちゃんにだされるのはケーキさんで、私はきっと一緒に出られると思うけれど、あんこちゃんはよばれないと思うよ。あんこちゃん、こどもむけじゃないからかわいそうだね」

シャインマスカットちゃんは、思ったことを口にしただけ。

しかも、あんこちゃんをおもいやって「かわいそう」と言ってくれました。

でも、あんこちゃんは大ショック。

したくちびるをぎゅっとかんで下をむいてしましました。


 おばあちゃんが冷蔵庫をあけました。

テーブルの上には白いお皿くん。

あんこちゃんは思わずうれしい気持ちになって

「白いお皿く~ん」とさけびました。


 白いお皿くんも気づいて

「あんこちゃん、こんにちは。なにかよう?」

「ようがあるわけ……じゃないんだけれど」

あんこちゃんはもごもごしました。

 

シャインマスカットさんが言いました。

「白君。きっとケーキさんをのせられるわよ」

「え?ほんと?ケーキさん、いるの?」

「そう。きょうおじいちゃんが駅前のアモーレで買ってきた」

「すっげぇ。アモーレか。きょうのケーキさん、お嬢様なんだなぁ。めちゃくちゃ楽しみだぜ!」


 あんこちゃんはまたしたくちびるをぎゅっとかみました。

「白いお皿くん。あの!」

「なに?あんこちゃん」

「いつか私ものせてくれる?」

「う~ん。あんこちゃんはいつもおばあちゃんのお気に入りの青いお皿にのせられているから、どうかなぁ」

「それに、おはぎやだんごはぼくには合わないとおもうよ。ぼくスタイリッシュだから」

(分かっていたけれど、いわれるとおちこむ)


 シャインマスカットちゃんがあんこちゃんをまた思いやりました。

「あんこちゃん、きっと和風じゃなくって洋風になれば、白君にのれるよ」

「よう……ふうに?」

「そう!こうなんていうかおしゃれで、スタイリッシュに!」


 あんこちゃんはなきたくなりました。

洋風なじぶんなんて思いつきません。


 そうこうしているうちにケーキの箱をおばあちゃんがいよいよ取り出しました。

「きょうはふうちゃんの誕生日だからね。よろこぶだろうねぇ」

のぞくと、まあるいフォルムにいちごがたくさん乗っているホールケーキでした。


 「ごきげんよう。みなさん」

ケーキさんがごあいさつします。

「こんにちは!」

シャインマスカットちゃんが元気よく返します。

あんこちゃんも「こんにちは」と返しながら、まじまじとケーキさんを見ました。

(あんなに大きかったら、白いお皿くんにのらないわ)

いつもはそのホールケーキを八等分したくらいの大きさのケーキをおばあちゃんは買ってくるので、白いお皿くんは大活躍なのです。

白いお皿くんは、よそうどおりがっかりした声を出しました。

「こんにちは……ぼく白いお皿と言います……ケーキさんはずいぶん大きいのですね……」

(でも白いお皿くんがテーブルに出ているということは……)

「もしかしたら……!きりわ……」

あんこちゃんが最後までいいおわらないうちに、白いお皿くんのきたいをばっさりとシャインマスカットさんがくじきました。

「じゃぁ、白君にのせられるのは私かぁ」

がくっ。

白いお皿くんががっかりしたのが分かります。

あんこちゃんは、白いお皿くんがかわいそうだと思う気持ちとちょっとす~とした気持ちとがありましたが、かわいそうな気持ちが大きくなりました。

「白いお皿くん、元気出してね」

「あんこちゃん、ありがとう」

「きっとケーキさん、切り分けられたら、のってくれるよ」

「あんこちゃん!」

白いお皿くんはかんげきした様子です。

「なによ。私じゃきにいらないの?」

シャインマスカットちゃんがわざとすねたようにいいました。

「そうじゃないよ。ただ一番ぼくにあった食べ物に乗ってほしいなぁって思っただけだよ」

あんこちゃんは思いました。

(私じゃ、白いお皿くんにぴったりの食べ物になれないんだものね)

そういって真っ黒で地味で、ふわふわもしていない自分の体を見ました。

(ほんとうにきれいなケーキさんとは、正反対だわ)

さみしくなりましたが、ぐっとこらえました。


 するとおばあちゃんが

「さてケーキとシャインマスカットと……あとあんこ。あんこはここだね」

と冷蔵庫の中からあんこちゃんをとりだしました。

「えっ、おばあちゃん。今日はおぼんでもお彼岸でもないよ。ふうちゃんの誕生日だよ」

とシャインマスカットちゃんがびっくりしています。

でも一番おどろいたのは、あんこちゃんでした。

「ふうちゃんのお誕生日によばれるのははじめてだわ。私でよいのかしら?」


 みると、ホットケーキミックスとお豆腐が出されています。

おばちゃんは、その二つをまぜて、こねていきます。

そしてアッという間に十五個に分けました。


「あんこも十五個に分けてっと」

あんこちゃんは白いきじでまるめこまれて、おはぎやお団子とちがう感じに目をぱちくり。


 こんなおふとんみたいにつつまれたのは、生まれて初めてです。

だってあんこちゃんはおはぎにしたって、おだんごにしたって、いつもつつみこむほうだったから。

おしるこの時だって、全体的におもちをつつみこんでいます。

つつみこまれる気持ちよさといったら!


 すると油の香りがしてきました。

「わたし、油であげられるの、はじめて。どんな感じなのかしら?」

シャインマスカットちゃんが、大声で言いました。

「あんこちゃん!私だって油に入ったことないのにすごいわ!」

あんこちゃんは「へへへ」とちょっと自分がえらくなったような気持ちになりました。

「もうころあいだね」

あんこちゃんは油の中に入れられました。


「わぁ、きもちいい!私から香りがしてくるなんてはじめて!」


 ちょうどキツネ色にからっとしたころ、あんこちゃんは外に出ました。

そして、お砂糖がかけられます。


「あんこちゃん!すごいよ!おしゃれで洋風になっているよ!」

シャインマスカットちゃんがこうふんしています。


 あんこちゃんがあまりのことにぼ~っとしていると、おばあちゃんが白いお皿くんをもってきました。

「これってこれって、もしかして……!」

シャインマスカットちゃんがいいます。

「あんこちゃん、あの人気ナンバーワンの白くんにのる時がいよいよ来たね!」


 「あんこちゃん、すてきだね」

白いお皿くんがはじめてほめてくれました。

「白いお砂糖がすごくかわいい。あんドーナツを乗せられて、ぼくもうれしい」

ずっきゅーーーーん。ぼんっ。

となるかと思いましたが、あんこちゃんはあまりうれしくありません。

「あっありがと」

とそっけなく答えました。

「え?それだけ?ぼくたちやっとひとつになれるんだよ。うれしくないの?」

あんこちゃんは、じぶんでもふしぎでしたが

「う~~ん、あんまり」

という言葉が出てしまいました。

「ぼくはうれしいよ?」

という白いお皿くんの言葉に

「あんドーナツの自分もおはぎやおだんごの自分もわたしだから!」

あんこちゃんはそう強くいってしまって自分でもおどろいていました。


 白いお皿くんはすこし口をとがらかしました。

「あんこちゃん。おはぎやお団子の時のあんこちゃんよりずっとあんドーナツになったあんこちゃんの方がすてきだよ」


 「ちっちっちっ」

シャインマスカットちゃんが口をはさみます。

「気持ちがわからないひとだねぇ、白くんは」


 「ええ、なんでだよう。シャインマスカットちゃんもそう思うだろう?」

シャインマスカットちゃんはお口にチャックといわんばかりに横をむきました。


 「たしかに白いお皿くんはしろくてみんなをすてきに見せてくれる。わたしものりたかった。でも今はどうしてあんなにのりたかったのかわからない」

あんこちゃんがそうつぶやき、生まれてはじめて白いお皿くんはショックを受けました。

「だれかにのりたくないっていわれるの、こんなにきずつくんだね」


 「やっぱりおじいさんがのみのいちで買った楕円形のお皿に乗せようかな?」

そう言って白いお皿くんを食器棚にかたしたおばあちゃん。

「なんで?!どうして!?」

白いお皿くんの叫び声がきこえます。


 「あんドーナツさん。どうぞよろしくお願いします」

その楕円形の白いお皿さんはがにっこり笑って、あんこちゃんもにっこりと笑い返しました。

「このおうちに来るまえは、よくお団子をのせていました」

「まぁ、そうなんですか」

「あなたといっしょでとてもうれしいですよ。あんこさん、いやあんドーナツさん。わたしは、お団子とかもだいすきなんです」

そういって、楕円形の白いお皿さんは、ぽっと顔を赤らめました。

あんこちゃんもてれて赤くなり、

「ありがとうございます」

と小さな声で返しました。


 シャインマスカットさんが誰にも聞かれないような声でそっと言いました。

「確かに白くんはたかなし家で一番人気だけれど、楕円形の白いお皿さんにとってかわられるわね。だってうつわがちがうものね、うつわ(・・・)だけに」


 「さてとケーキはこのお皿にしましょう」

「「「!!!!!!!」」」

みんなびっくり。

茶色くて花柄がついた、いつもちくぜんにをてんこもりにするお皿です。

「うげっ。ケーキさん、だいじょうぶ?」

シャインマスカットちゃんが心配しています。


 ケーキさんはうつくしく笑って言いました。

「どんなお皿でもだいじょうぶですわ。わたくしの美味しさはなんのうつわでもかわりませんもの」

「おおっ」


 でもあんこちゃんにはそんな言葉もあまり耳に入りませんでした。

しあわせでしあわせで。

白いお皿くんがシャインマスカットさんをのせてあらわれて

「あんこちゃん、わるかったよ。ごめんね。おめでとう」

といった言葉にも

「うん、もういいよ。だいじょうぶ。ありがとう」

とふわふわした気持ちで返しただけでした。


 ふうちゃんの誕生日はあんこきねんび。

あんこちゃんは笑いながらふうちゃんをまっています。


おわり


最後までお読みくださり、ありがとうございました!

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作成:コロン様
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