20、テビのにじいろ
あなたのにじいろもきっときれいです。
この世界はきれいなものであふれています。
今の季節なら、雨ににじむあじさい、お日様に輝くミニトマトやきゅうり、白くて高い入道雲、そしてパステルカラーのレインコートや長靴など、それはそれはきれいなものがいっぱい。
でもテビは小さなころから、きれいなものよりあまりきれいでないものが好きでした。
どうしてか?
それはテビの顔を見れば分かります。
テビはいわゆる美人ではなく、かわいくもありません。
どちらかというと不美人のほうにはいります。
そんなかわいくないテビは自分と同じである、きれいでないものに心ひかれるのでした。
大人になった今でもお空が映っているきれいなみずたまりを足でぐるぐるかきまぜたあと、ミミズをなでています。
きれいにしている飼いねこには見向きもせず、きたないのらねこにエサをやります。
着ている服はいつも草や泥がついて、汚れています。
テビのめいよのために言っておきますが、洗濯は毎日しています。
服を買う時はいつも最後まで売れ残ってしまうような服を買って、お古も大活躍で、草や土の上でつねに寝転がるには、惜しくない服なのです。
テビは雨あがりに散歩に出て、きらきらしている紫陽花を見ました。
テビもきれいだなとは思うのです。
でも、あじさいの花やきらきらしている雫より、葉の上のかたつもりのほうを見てしまいます。
テビはずっとお昼を食べるのもわすれて、かたつむりを目でおいつづけました。
何時間そうしていたのでしょう。
かたつむりがあじさいの葉からおりて、コンクリートをはいだしました。
「あっ、にじいろ!」
テビはおどろいて、声をあげました。
「かたつむりのはったあと、にじいろだ!」
テビは何度もかたつむりとはったあとをかわりばんこにみました。
「かたつむり……にじいろ」
テビの前をモンシロチョウがひらひらととんでいきます。
テビはちょうには興味がありません。
毛虫なら話は別ですが。
でもかたつむりを見た後、なんとなく見方がかわりました。
「毛虫のにじいろがちょう?」
テビは林を抜けて、急いで家にかえります。
小川のそばでサンショウウオを見かけました。
不気味ないろみのサンショウウオは、テビの心をかっさらいました。
「あなた、どこへいくの?」
サンショウウオはあわてて水に逃げました。
「え?」
テビはびっくり。
サンショウウオが水の中では青く見て、とてもきれいだったからです。
「サンショウウオもにじいろ?」
家にかえったテビは考えました。
「にじいろ、わたしにもあるのかも?」
テビはタンスの中から、いちばんましな服をだして、からだにあててみました。
あまりぱっとしません。
「テビににあうから」
あの笑顔が浮かびました。
テビはもう何年も引き出しの中にほうっておいた髪飾りをそっと取り出しました。
髪につけると、顔がぱっと明るくなり、顔のつくりはかわらなくてもすてきに見えたのです。
「にじいろ、わたしにもあったんだね」
テビは髪飾りをつけて、かけだしました。
あの笑顔のもとへ。
だれよりもテビのにじいろを知っている人のもとへと。
テビは走っていったのです。
おわり
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