26 料理は身を助く?
26 料理は身を助く?
朝食作りは困難を極めた。野菜はブツ切り、卵はぐちゃぐちゃ殻入り、鍋は吹き溢れ、パンは黒焦げ。
いつもの三倍もの時間が掛かって出来た散々たる成果にわたしもディーもしょんぼりだ。
「渡辺はしばらくディーと一緒にポテーイ剥き。まともに皮を剥けるように成らないと何も作れないからね」
焦げの酷いところはこそげおとしてパンを食べながら渡辺に宣告した。
急遽葉ものだけのスープになったのにそれでもキャベツの芯の部分がゴリゴリするが、それでも渡辺は満足そうにニコニコしている。
「了解。すごいなぁ、ちゃんと食べれるように出来たよ」
「・・・ソレハヨカッタネ」
渡辺よ、本当に今まで一体どんなモノを造ったんだ?
「チカ今日は何をするんだ?」
「お昼前までディーはデンプン作り、渡辺はポテーイをひたすら剥いてね。ゆっくりでイイから皮は薄く剥いて芽には毒があるから見落としなく取り除いてね。わたしは市で売るドードーの串焼きを作ります。お昼を食べたら注文をしていた簀を取りに行ってギルドで屋台の許可申請をして帰ってくる。って感じかな?」
「解った、食器と一緒にポテーイも洗浄するから後で出しておいてくれ」
「ん、解った。そうだ、ディーのアイテムバックに荷物移しちゃおう」
何時ものようにテキパキと今日する事を確認していると
「二人とも真面目だなぁ」
と渡辺が声を上げた。
「そぉ? 効率よく動かないと稼げないからね」
「稼げないって?」
「こっちに来たとき無一文だったからね、幸い向こうで買い物したものを持ってたからそれを換金してお金を作ったけど最初の頃は毎日カツカツの生活だったよ」
「チカちゃん苦労したんだな」
「そう? 初日からディーも一緒だったから苦労したって感じは無かったかな? さて、食べ終わったならちゃっちゃと始めるよ!」
確かにこっちに来た頃は毎日毎晩お財布を逆さまにして小銭までかき集めるような生活だったが愉快でもない出来事を何時までも覚えていても非生産的だ。
泣いてたってお腹は膨れない。それはあちらにいた時に嫌と言うほど思い知っている。
今自分は健康で動ける体と働ける年齢でいるのだからグダグダ言う前に働くのだ。
ディーと渡辺は洗浄をかけたポテーイの皮を剥く、ある程度数が出来てきたらディーがスリ下ろしてケミカル妖虫糸の布で包み水を張った鍋の中で揉んで澱粉を抽出する。沈殿するのを待っている間に昨日作った澱粉の鍋の上澄み液をお玉でそっと掬って取り除きまた水を入れ直して撹拌させ時間を置く。
ディーは沈殿を待っている間にポテーイの皮を剥きとローテーションで作業をこなしていく。
その様子を確認しつつ下味を浸けておいたドードーの肉をストレージから出す。
これを串に刺して、あれ?
「あーッ!」
「どうしたんだ?」
「ディー、串焼きにするのに串を買い忘れた・・・」
「串焼き? 市場でもうそれそんなに売れないぞ?」
「うそ! なんで!? 異世界って言ったら串焼きでしょう! 市場でも屋台たくさん見たわよ?」
「うん、たくさんな」
残念そうに見られてハタッと気がついた。
「過剰供給か・・・」
「正解」
ならば串を買い忘れて正解だったか。
「あーぁ、金策上手くいかないなぁ」
どうしよう、コンスタントにお金が稼げる事を見つけないとなぁ。水飴作りにはもう少し時間がかかるだろうし、仮に出来たとしても今までに無かった物だから直ぐに需要があるとは限らないし。
ため息をつくわたしに渡辺は
「チカちゃん、市場で食べ物売るよりもっと簡単に稼げる方法あるじゃん?」
等とお気楽にい言う。
は? 渡辺と違って都合のイイチート能力なんてないんだけど?
「料理出来るんだからギルドにレシピ売ればいいじゃん」
「そんなもの売れるの?」
「日本みたいに料理の種類豊富じゃないのは知ってるよね?」
確かにこっちでは焼く、煮るが基本で味付けは塩味が定番だけどさ
「何が新規登録になるかなんてわかんないよ」
「その辺は大丈夫。ギルドでレシピ用の用紙に書き込むと直ぐに判るようになってるから」
「は? なにそれ?」
「深く考えない方がいイイよ、なんたって」
「「ファンタジーだから」」
それか!
「渡辺ってこっちで暮らしてどのくらいになるの?」
「21でこっち来たから5年は経つかな?」
なんでそこで疑問系なのか解らないがまぁイイや。問題はそこじゃないから。
「じゃあこっちで食べたことのないメニューは?」
「それ聞くの!? 食べたくなるから考えないようにしてたんだぜ?」
「作れる物なら作ってあげるけど?」
「マジで!? 神かよ!」
そこまでのものなんかい( ´゜д゜`)アチャー
「作れる物ならね」
「牛丼! カレー! うどん、蕎麦。味噌汁に肉じゃが!」
カレーは別としてみんな醤油が必要な物ならだね。
ストレージの中には日本からの持ち込み品で売れそうになかったものが入っている。
米酢、オリーブオイル、赤味噌、みりん、めんつゆ、三温糖、あら塩、胡椒、醤油、そして米5kg。
カレーは無理として牛丼、うどん、味噌汁、肉じゃがは作れるかな。蕎麦は蕎麦粉がないと無理。
結局その後ディーはひたすらでんぷん作りに、渡辺はチマチマとポテーイを剥いて皮剥きスキル(?)を上げていた。
そして販売を断念したドードーの塩レモン焼きでラップサンドもどき作りそれをお昼ご飯として食べてから外出した。
アジのフライはいつ揚げればいいのだろう、またしても死蔵品になるのか?
「チカちゃん昼御飯のあれレシピ登録出来ると思うよ」
「あんなんでイイの?」
「十分新規レシピに値します」
渡辺は自信を持って断言するけど、あれめちゃくちゃ手抜き料理だぞ?
◎塩レモン味ドードーのラップサンド
1.塩とレモン(グレープフルーツ大)でドードー肉に下味をつけます。
2.フライパンで少し焦げ目が付くまで焼きます。
3.小麦粉に塩少々、水を入れ生地を作ります。フライパンでクレープよりも少し厚めに焼きます。
4.卵の黄身とレモン汁、塩を少々入れオイルを少しずつ入れながら分離しないようによく混ぜます。(腕が痛くなるのでディーに混ぜてもらいました)
5.3の生地の上に葉もの野菜、(キャベツでもレタスでも)ドードーの塩レモン焼き、4のソース(マヨネーズもどき)をのせくるんだら出来上がり。
という代物です。
まぁ、マヨネーズに使う酢がないからレモン汁で代用したりしたけど。
「渡辺? ギルド行くならこっちじゃないの?」
中央通りを上に向かおうとする渡辺に声をかける。
「レシピとかは2区にあるギルド本部の管轄だからこっちでいいんだよ」
「だったら先に昨日木工所で注文した物取りに行きたいんだけど」
了解と渡辺が言うので途中の4区で右に曲がり奥の工房区域に寄り注文していたすのこを10個ピッキングした。
よし、これででんぷんの乾燥と、麦芽の芽床が出来た。後は、
「渡辺、最初にお願いした保温機って完成までにどのくらいかかるの?」
「具体的に仕様が決まってるから直ぐ出来るぞ。容器はなんでもいいしな」
「なんでも?」
「要は付与魔法だからな、容量増加や、温度設定、時間加速を付ければいい話だから。鍋でもいいんじゃないか?」
「なんでもアリなんだね」
反則過ぎて引くわ!
そうこうしているうちに2区のギルド本部に到着。いつも利用する5区のギルドと違ってここはワサワサしてなくて逆に落ち着かない。
渡辺は勝手知ったる雰囲気で受付のお姉さんとお話ししに行ってしまった。
「チカちゃん~ こっちで説明するからおいで~」
渡辺はこっちを振り返って手招きしてきた。
「こんにちは、レシピ登録についてご説明させていただきますね」
椅子があり仕切りのあるカウンターは日本の銀行の融資相談の窓口の様だ。
ちょっと狭いが3つ椅子を並べて座る。ディーは自分は後ろで控えてます何て言うから無理やり座らせた。
水飴が完成したらディーが登録するんだから説明聞いておかないとダメでしょう。
で、お姉さんの説明によると
書類の書き方として
1.種別 料理とか薬品調合とか道具とかを書く
2.品名 唐揚げとか水車とか風邪薬とか
3.材料 肉とか木とか薬草とか
4.製造行程 どのように作ったか
5.完成品もしくは完成予想図の添付
を書いておしまい。
レシピを登録するとギルドから最低1万ペレから最大1千万ペレの報償金が出、そのレシピが使用される度に使用料が支払われるとのことだ。
レシピ使用料は1000ペレから10万ペレだそうだ。
さて今回は何を登録出来るのかな。わたしの知っているレシピはほとんど醤油や、お酢、味噌等の日本んが誇る発酵調味料が使われる。その調味料無くしてレシピ登録は可能なのだろうか?
「ねぇ? 渡辺。砂糖、醤油、酢、味噌、日本酒って手に入るの?」
「一応あるにはあるんだけど高い」
「そちらの商品は錬金術師が複製というスキルで製造しておりますので量産が不可能なんです」
錬金術に複製か、確かに渡辺のスキルを見ていると何でも出来そう。
「複製が可能なら麹菌を複製すればいいんじゃないの?」
「それがどこにあるのかが判らないんだよなー」
どこって常在菌だからその辺漂ってるけどピンポイントで麹菌拾って来るのは難しいか。顕微鏡とか無いだろうし、無いよね? 有るのかな?
「稲作は? やってないの?」
だとしたら確実に拾ってこれるのこれかな。
「稲作は南方の土地で生産しております」
「なら麹菌は取れるでしょ?」
「?」
二人揃って不思議そうな顔された。
「麹菌って稲の穂先によく付く黴の一種でしょ? 鑑定かけて分離して複製すれば問題ないんじゃない?」
「「・・・・・」」
えっと? なんかフリーズしてるけど大丈夫? わたしなんかまずい事言った?
ディーと二人でどうしたもんかと顔を見合わせてたら
「大変です! 直ぐに連絡しなくては!」
いきなり叫んで再起動すると受付のお姉さんはわたし達を放り出して奥へと駆け込んでいった。
「え? あのちょっとわたしのレシピ登録はー!?」
って言うか隣で マジか!?マジか!? と渡辺。
うるさいo(*`ω´*)oプンスカ
ブックマーク200件越えました。読んでいただいている皆様ありがとうございます。
いつも遅筆お待たせしてすみませんm(_ _)m
見捨てないで~(o;д;)o 今後ともよろしくお願いいたします!




