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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第八十四話 ローマの若い将軍がヒスパニアへ来るので、カルタゴ・ノウァの守備を増強することにした

紀元前210年。

ヒスパニア。

カルタゴ・ノウァ。

俺は、港に並ぶ商船を見つめていた。

「……やっぱり、ここは重要だな」

隣にいたメルカルが頷いた。

「カルタゴの重要な港ですからね」

「港だけじゃないよ」

俺は街を振り返った。

倉庫。

造船施設。

軍需物資。

周辺の銀山から運ばれる銀。

そして、ヒスパニア各地へ通じる街道。

カルタゴ・ノウァは、単なる都市ではない。

カルタゴ軍がヒスパニアで戦い続けるための、重要な拠点だった。

俺は呟いた。

「……ここを失ったら、ヒスパニアの戦争そのものが変わる」

メルカルが尋ねた。

「そんなにですか?」

「そんなにだよ」

数日前。

俺たちはイタリアを離れ、海路でヒスパニアへ向かっていた。

ハンニバルはイタリアに残っている。

カプアを失い、タレントゥムにもローマ軍の脅威が迫っている。

本当なら、俺もイタリアに残るべきだった。

だが、ハンニバルは言った。

「アドン。

ヒスパニアへ行ってください」

俺は驚いた。

「……いいのか?」

「あなたが危険だと言っているカルタゴ・ノウァを、確認してきてほしいのです」

「でも、イタリアの補給は?」

「あなたが作った仕組みがあります」

ハンニバルは少し笑った。

「そろそろ、あなたがいなくても動くようになってもらわなければ困ります」

俺は苦笑した。

「……それはそうだな」

こうして、俺はヒスパニアへ来た。

カルタゴ・ノウァの守備を任されているマゴン将軍と会談した。

「守備兵を増やしたい?」

マゴンは眉をひそめた。

「そうです」

俺は地図を広げた。

「ローマ軍が、この都市を狙う可能性があります」

マゴンは頷いた。

「当然、警戒している」

「現在の守備兵は?」

「十分とは言えないが、城壁は堅固だ」

俺は港を指差した。

「問題は、敵が正面からだけ攻めてくるとは限らないことです」

マゴンが顔を上げた。

「どういう意味だ?」

俺は地図の北側を指差した。

「この浅い水域です」

カルタゴ・ノウァは、海と潟湖に囲まれた都市だった。

地形そのものが防御に適している。

普通なら、攻撃できる場所は限られる。

だが、俺は未来の歴史を知っていた。

スキピオは、この地形を利用する。

水位が下がった潟湖を兵士に渡らせ、守備の薄い場所から城壁へ取りつくのだ。

俺は言った。

「水位が下がる時間帯を調べてください」

マゴンが尋ねた。

「なぜだ?」

「兵士が渡れる場所ができるかもしれません」

マゴンは驚いた。

「……あそこを?」

「はい」

数日後。

調査が行われた。

潮の変化。

風向き。

水深。

そして、湖底の状態。

結果を見た俺は頷いた。

「……やっぱり」

メルカルが尋ねた。

「渡れるんですか?」

「条件によっては、浅くなる場所がある」

「……」

「つまり、城壁が海に囲まれているから安全だとは言えない」

俺はマゴンに報告した。

「北側にも見張りを置くべきです」

マゴンは頷いた。

「分かった」

「それから、港の船をすべて一か所に集めないでください」

「理由は?」

「都市が攻撃されたとき、船まで全部失うからです」

マゴンは腕を組んだ。

「……なるほど」

さらに、俺は倉庫を調べた。

穀物。

武器。

銀。

そして、各地の部族から預かっている人質。

俺は最後の項目で手を止めた。

「……人質?」

メルカルが頷いた。

「現地部族の忠誠を確保するため、預かっているようです」

俺は顔をしかめた。

「……これは、まずいな」

「なぜですか?」

俺は答えた。

「ローマ軍が都市を奪ったら、この人たちを解放するだろう」

「……」

「そうすれば、部族はローマ側につくかもしれない」

メルカルが黙った。

俺は続けた。

「人質でつなぎ止めた同盟は、人質を失えば簡単に崩れるんだ」

俺はマゴンへ提案した。

「部族の代表者と、もう一度協定を結び直したい」

マゴンが尋ねた。

「人質を返すつもりか?」

「段階的にです」

「危険ではないか?」

「危険です」

俺は頷いた。

「ですが、人質を持っていても、裏切られない保証はありません」

マゴンは黙った。

俺は続けた。

「それより、交易や自治の利益で協力してもらう方が長続きします」

数週間後。

一部の部族との協議が始まった。

人質の待遇改善。

帰郷の条件。

交易上の優遇。

そして、部族の自治の確認。

すべてが順調だったわけではない。

カルタゴへの不信感を持つ部族も多かった。

だが、少なくとも話し合いは始まった。

俺は頷いた。

「……少しずつだな」

そのころ。

ローマ軍の新しい指揮官が、ヒスパニアへ到着した。

プブリウス・コルネリウス・スキピオ。

若い将軍だった。

だが、彼は父と叔父をヒスパニアで失っている。

そのため、ローマ軍の兵士たちから特別な期待を集めていた。

俺は報告書を見つめた。

「……来たか」

メルカルが尋ねた。

「例の将軍ですね?」

俺は頷いた。

「そうだ」

スキピオは、到着するとすぐにローマ軍の状況を調べ始めた。

兵力。

補給。

現地部族との関係。

そして、カルタゴ軍の配置。

俺は報告を読み進めた。

「……嫌な予感がするな」

メルカルが尋ねた。

「何がですか?」

俺は答えた。

「この男、最初から大きな勝負を仕掛けてくるかもしれない」

数日後。

新しい報告が届いた。

『スキピオ軍が、沿岸部で船舶を集めている』

俺は顔を上げた。

「……船?」

メルカルが頷いた。

「はい」

俺は地図を広げた。

タラコ。

カルタゴ・ノウァ。

そして、海岸線。

俺は呟いた。

「……やっぱり、ここを狙うつもりか」

俺はマゴンのもとへ駆け込んだ。

「将軍!」

「どうした?」

「ローマ軍が動き始めています」

マゴンは頷いた。

「報告は受けている」

俺は続けた。

「カルタゴ・ノウァを攻撃する可能性があります」

マゴンは地図を見つめた。

「敵が来るなら迎え撃つ」

俺は頷いた。

「お願いします」

そして、続けた。

「ただし、正面だけではなく、北側の潟湖も警戒してください」

マゴンは答えた。

「分かっている」

その夜。

俺は港を歩いていた。

商船。

軍船。

倉庫。

そして、城壁。

未来の歴史では、この都市はスキピオによって攻略される。

だが、今回は違う。

守備兵を増やした。

北側の警戒も強化した。

物資も分散した。

俺は呟いた。

「……これなら、少しは変えられるはずだ」

だが。

翌朝。

偵察兵が駆け込んできた。

「ローマ軍が南下しています!」

俺は顔を上げた。

「兵力は?」

「詳細は不明ですが、大軍です!」

「艦隊は?」

「沿岸を進んでいます!」

俺は息を呑んだ。

スキピオが動いた。

そして、その目標は――。

カルタゴ・ノウァだった。

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