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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第六十一話 港町が寝返りたいと言ってきたので、城壁より先に倉庫と港の持ち主を調べることにした

紀元前216年。

イタリア南部。

カンナエの戦いでローマ軍が大敗してから、数か月が過ぎていた。

ハンニバル率いるカルタゴ軍は、イタリア南部で勢力を拡大していた。

カプアをはじめ、ローマから離反する都市も現れ始めている。

だが、問題があった。

港だ。

カルタゴは海洋国家である。

船がある。

商人がいる。

海軍もある。

それなのに、イタリアで戦っているハンニバル軍には、本国から十分な補給が届いていなかった。

理由は簡単だった。

安全に使える港が足りないのだ。

俺は地図を見つめながら、ため息をついた。

「……海のすぐ近くにいるのに、海から食料を運べないなんてな」

メルカルが尋ねた。

「陸路で運べばいいのでは?」

「運んでいるよ」

「では、問題ないのでは?」

俺は首を振った。

「陸路は時間も費用もかかる。

しかも、ローマ軍に襲われる危険がある」

「……」

「大量の物資を継続して運ぶなら、船を使いたい」

メルカルは頷いた。

「なるほど」

俺は地図の南端を指差した。

「だから、港が欲しい」

そこに書かれていた都市の名は、タレントゥム。

イタリア南部でも有数の港湾都市だった。

タレントゥムから来た使者は、三人だった。

一人は商人。

一人は都市の有力者。

そして、もう一人は若い書記官だった。

俺は彼らを迎えた。

「遠いところを、ありがとうございます」

代表の男が頭を下げた。

「こちらこそ、お会いいただき感謝します」

俺は尋ねた。

「タレントゥムは、カルタゴへの協力を検討していると聞きました」

男は頷いた。

「はい」

「都市全体の決定ですか?」

男は黙った。

俺は続けた。

「それとも、一部の人たちの考えですか?」

男は、少し困った顔をした。

「……一部です」

俺は頷いた。

「そうでしょうね」

メルカルが小声で言った。

「……また半分も賛成していない都市ですか?」

俺は小声で答えた。

「そういうことらしい」

代表の男は説明した。

「タレントゥムには、ローマへの協力を続けるべきだという者もいます」

「当然でしょう」

「しかし、カンナエでの敗北によって、ローマへの信頼が揺らいでいます」

俺は頷いた。

「なるほど」

「そこで、カルタゴ側の条件を確認したいのです」

俺は尋ねた。

「何を求めていますか?」

男は答えた。

「自治の保証です」

「はい」

「交易の自由です」

「はい」

「そして、ローマ軍からの防衛です」

俺は頷いた。

「分かりました」

だが、男は続けた。

「さらに、タレントゥムの港は、タレントゥムのものとして認めていただきたい」

俺は顔を上げた。

「……なるほど」

港を使わせてもらいたい。

だが、港を奪うつもりはない。

この二つは、似ているようで違う。

俺は尋ねた。

「カルタゴの軍船や補給船が入港することは認めてもらえますか?」

男は答えた。

「条件次第です」

「港湾使用料は?」

「必要です」

「倉庫は?」

「都市の商人が所有しています」

「荷役人夫は?」

「港の組合が管理しています」

俺は頷いた。

「なるほど」

そして、帳簿を開いた。

「では、まず商売の話をしましょう」

使者たちは顔を見合わせた。

俺は続けた。

「カルタゴ軍が港を使う場合、何隻まで受け入れられますか?」

代表の男が答えた。

「船の大きさによります」

「大型輸送船なら?」

「一度に受け入れられる数には限りがあります」

「倉庫の空きは?」

「今は少ないです」

俺は頷いた。

「分かりました」

そして、次の質問をした。

「港の倉庫を増やす土地はありますか?」

男は驚いた。

「……倉庫を増やすのですか?」

俺は答えた。

「はい」

「港を占領する話では?」

俺は首を振った。

「まだ、そんな話はしていませんよ」

使者たちは困惑していた。

当然だろう。

軍隊を率いる将軍と交渉するつもりで来たのに、商人が倉庫の面積や港湾使用料を聞いているのだから。

だが、俺にとっては重要だった。

港を手に入れても、物資を降ろせなければ意味がない。

倉庫がなければ、食料は傷む。

荷役人夫がいなければ、船は港に停泊したままになる。

さらに、港から軍の陣地まで運ぶ荷車も必要だ。

俺は言った。

「港を使うというのは、船を入れるだけではないんです」

使者たちは黙って聞いていた。

「荷物を降ろす」

「……」

「保管する」

「……」

「運ぶ」

そして、続けた。

「それができて、初めて補給港になります」

その夜。

俺はハンニバルへ報告した。

「タレントゥムとの交渉を始めた」

ハンニバルは頷いた。

「どうでした?」

「まだ都市全体の合意はない」

「そうでしょうね」

俺は続けた。

「それと、港の使用条件を確認している」

ハンニバルは笑った。

「相変わらずですね」

「何が?」

「普通なら、城門を開けてもらう方法を考えるところです」

俺は答えた。

「城門が開いても、港が使えなければ困るからね」

ハンニバルは頷いた。

「そのとおりです」

だが、ここで問題が見つかった。

タレントゥムの都市側が協力しても、港の入口を押さえるローマ軍の守備拠点が残れば、自由に船を出入りさせることは難しい。

俺は地図を見つめた。

「……やっぱり、そう簡単じゃないな」

メルカルが尋ねた。

「どうするんですか?」

俺は答えた。

「今すぐ攻めるのは危険だと思う」

「……」

「まず、都市の中で本当に協力してくれる人を増やす」

そして、続けた。

「港の商人たちにも、カルタゴとの取引で利益が出ることを示すんだ」

俺はタレントゥムの使者へ、新しい提案をした。

「軍事同盟の前に、限定的な交易協定を結びませんか?」

代表の男が尋ねた。

「交易協定?」

「はい」

「何を取引するのですか?」

俺は答えた。

「穀物、塩、布、金属製品、それから船舶修理用の資材です」

男は考え込んだ。

俺は続けた。

「今すぐ都市全体がローマから離反する必要はありません」

「……」

「ただし、合法的に取引できる範囲で、商人同士の関係を作りたい」

男は頷いた。

「それなら、話し合う余地があります」

数週間後。

タレントゥムの商人たちから、取引の申し出が届き始めた。

俺は帳簿を確認した。

「……思ったより反応がいいな」

メルカルが笑った。

「商売なら、話を聞いてくれるんですね」

俺は頷いた。

「そういうこと」

だが、俺は浮かれていなかった。

ローマ軍が都市を監視している以上、取引先を危険にさらすわけにはいかない。

俺はメルカルへ言った。

「相手が危険だと判断したら、取引は中断する」

「分かりました」

「無理に進めない」

「はい」

そして、俺は地図を見つめた。

「……時間がかかるな」

そのころ。

ハンニバルのもとへ、カプアから新しい使者が到着していた。

使者は言った。

「カプアは、カルタゴとの協力をさらに深めたいと考えています」

ハンニバルは頷いた。

「歓迎します」

だが、使者は続けた。

「そのためには、ローマ軍の攻撃から都市を守っていただく必要があります」

俺は、その言葉を聞いて顔を上げた。

当然だ。

カルタゴ側についた都市は、ローマから報復される。

それを守れなければ、他の都市も離反しなくなる。

俺は呟いた。

「……港を確保する前に、守るべき都市が増えていくな」

ハンニバルは俺を見た。

「アドン」

「何?」

「これが、イタリアで戦争を続ける難しさなのでしょうね」

俺は頷いた。

「そうだね」

そして、心の中で思った。

本来の歴史では、ハンニバルは多くの都市を味方につけた。

だが、そのすべてを守ることはできなかった。

今回は、同じ失敗を繰り返したくない。

俺は地図を広げた。

「……都市ごとに守るんじゃなくて、地域全体で支え合う仕組みを作れないかな」

ハンニバルが顔を上げた。

「地域全体?」

俺は頷いた。

「そう」

そして、言った。

「カプアだけじゃない。

周辺の町や村も含めて、食料と兵士と情報を共有するんだ」

ハンニバルは、しばらく考えた。

そして笑った。

「面白いですね」

俺は頷いた。

「やってみよう」

こうして、俺はイタリア南部で、新しい同盟の仕組みを作り始めた。

だが、その計画が動き始めたころ。

カルタゴ本国から、待ちに待った知らせが届いた。

追加援軍の派遣が、正式に承認されたのだ。

ただし、その援軍をイタリアへ送り届けるには、まだ一つ大きな問題が残っていた。

ローマ海軍である。

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