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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第五十八話 ローマが八万の大軍を集めたので、ハンニバルに正面から戦わないように頼んでみた

紀元前216年。

イタリア南東部。

アプリア地方。

ローマ軍が、これまでにない規模の軍隊を集めていた。

報告では、歩兵だけで七万を超える。

騎兵を含めれば、およそ八万。

俺は、その数字を見て頭を抱えた。

「……多すぎるだろ」

メルカルが尋ねた。

「何がですか?」

俺は答えた。

「ローマ軍だよ」

「……何人ですか?」

「八万くらい」

メルカルは黙った。

そして、ゆっくりと言った。

「……帰りませんか?」

俺は首を振った。

「帰れないよ」

「……ですよね」

カルタゴ軍は、ローマ軍より少なかった。

歩兵と騎兵を合わせても、五万に届かない規模だった。

俺は、兵力の記録を確認した。

「……数では負けているな」

メルカルが頷いた。

「かなり」

俺は続けた。

「しかも、ローマ軍は重装歩兵が多い」

「……」

「正面から押し合えば、不利になる」

メルカルが尋ねた。

「では、どうするんですか?」

俺は答えた。

「ハンニバルに任せる」

メルカルは頭を抱えた。

「……またそれですか!」

ハンニバルは軍議を開いていた。

地図には、カンナエ周辺の平地が描かれていた。

ローマ軍の陣地。

カルタゴ軍の陣地。

そして、アウフィドゥス川。

俺は尋ねた。

「ハンニバル」

「何ですか?」

「正面から押し合うつもりはないよね?」

ハンニバルは笑った。

「もちろんです」

俺は少し安心した。

「……よかった」

ハンニバルは続けた。

「ローマ軍は、数の多さを利用して中央を突破しようとするでしょう」

俺は頷いた。

「そうだろうね」

「ならば、その力を利用します」

俺は顔を上げた。

「……利用?」

ハンニバルは地図を指差した。

「敵が中央へ進むなら、進ませればいいのです」

俺は地図を見つめた。

中央。

左右。

そして、騎兵。

本来の歴史で、ハンニバルが使った戦術。

中央を徐々に後退させる。

ローマ軍を前へ引き込む。

そして、左右から包囲する。

さらに、騎兵が背後へ回る。

俺は息を呑んだ。

「……なるほど」

ハンニバルは笑った。

「分かりましたか?」

俺は頷いた。

「うん」

そして、言った。

「でも、中央の兵士たちは危険だよ」

ハンニバルは真剣な顔になった。

「そのとおりです」

俺は尋ねた。

「中央が崩れたら?」

ハンニバルは答えた。

「作戦は失敗します」

「……」

「だから、中央には信頼できる兵士を配置します」

俺は頷いた。

「分かった」

そして、続けた。

「補給は任せて」

ハンニバルは笑った。

「お願いします」

俺は補給部隊を集めた。

「決戦前の食料を確保します」

メルカルが尋ねた。

「何日分ですか?」

俺は答えた。

「まず、戦闘前後の数日分を確実に」

「……」

「それから、負傷者のための水と食料」

メルカルは頷いた。

「分かりました」

俺は続けた。

「勝っても、負傷者が放置されたら意味がないからね」

その日の午後。

ヌミディア騎兵の指揮官たちが集まった。

俺は、彼らの様子を見ていた。

馬。

槍。

軽い装備。

そして、高い機動力。

俺は思った。

本来の歴史では、ヌミディア騎兵はハンニバルの重要な戦力だった。

だが、最後のザマでは、ヌミディア王マシニッサがローマ側についた。

それが、カルタゴにとって致命的だった。

俺は、騎兵の指揮官へ声をかけた。

「戦いが終わったら、少し話したいことがあります」

指揮官が尋ねた。

「何だ?」

俺は答えた。

「ヌミディアとの長期的な協力についてです」

指揮官は頷いた。

「分かった」

その夜。

俺は一人で、記録を整理していた。

カンナエで勝つ。

それは重要だ。

だが、もっと重要なのは、その先だ。

ローマの同盟都市を離反させる。

補給路を確保する。

カルタゴ本国から援軍を送る。

そして、ヌミディアとの同盟を守る。

俺は呟いた。

「……全部、つながっているんだ」

翌朝。

ローマ軍が動き始めた。

大軍が、平地へ展開する。

歩兵。

騎兵。

そして、長い陣形。

俺は遠くから、その様子を見ていた。

メルカルが呟いた。

「……すごい数ですね」

俺は頷いた。

「うん」

「本当に勝てるんですか?」

俺は答えた。

「勝つ可能性はある」

「……」

「でも、簡単じゃない」

ハンニバルは、兵士たちの前へ出た。

そして、演説した。

「兵士たちよ!」

兵士たちが顔を上げた。

「我々はアルプスを越えた!」

「おおっ!」

「ティキヌスで勝った!」

「おおっ!」

「トレビアで勝った!」

「おおっ!」

「トラシメヌス湖畔でも勝った!」

兵士たちが歓声を上げた。

ハンニバルは続けた。

「そして今日、ローマは大軍を集めてきた!」

兵士たちは静かになった。

ハンニバルは笑った。

「それだけ、我々を恐れているということだ!」

歓声が上がった。

俺は、その演説を聞いていた。

メルカルが呟いた。

「……すごいですね」

俺は頷いた。

「うん」

そして、心の中で思った。

これが、ハンニバルだ。

兵士たちを率いる将軍。

戦場で勝利をつかむ男。

俺には、同じことはできない。

だからこそ俺は別の場所で戦う。

戦闘が始まる直前。

俺はハンニバルへ声をかけた。

「ハンニバル」

「何ですか?」

俺は答えた。

「勝ってきて」

ハンニバルは笑った。

「もちろんです」

俺は続けた。

「それと、できるだけ兵士を生きて帰して」

ハンニバルは真剣な顔になった。

「……分かっています」

そして、馬に乗った。

ローマ軍の中央が前進した。

重装歩兵の大軍。

盾。

槍。

そして、整然とした陣形。

カルタゴ軍も前進した。

中央には、ヒスパニア兵とガリア兵。

左右には、アフリカ兵。

さらに、両翼に騎兵が配置されていた。

ハンニバルは、戦場全体を見渡した。

そして、静かに命令した。

「……始めよう」

両軍が衝突した。

ローマ軍の中央が押し込んでくる。

カルタゴ軍の中央は、少しずつ後退した。

だが、崩れない。

後退しながら、戦い続ける。

ローマ軍は、さらに前進した。

俺は遠くから、その様子を見つめていた。

「……始まった」

メルカルが尋ねた。

「何がですか?」

俺は答えた。

「ハンニバルの作戦だよ」

ローマ軍は、中央へ兵力を集中させていた。

数で押し切ろうとする。

だが、その結果。

ローマ軍の陣形は、前へ前へと伸びていった。

そして、カルタゴ軍の左右には、まだ強力なアフリカ兵が残っていた。

俺は息を呑んだ。

「……来るぞ」

そのとき。

ハンニバルが命令した。

「両翼、前進!」

アフリカ兵が動いた。

ローマ軍の側面へ。

さらに、カルタゴ騎兵が敵騎兵を押し返していた。

俺は地図を握りしめた。

「……頼む」

戦場では、ローマ軍が少しずつ包囲され始めていた。

中央へ進みすぎたローマ兵。

左右から迫るカルタゴ兵。

そして、背後へ回ろうとする騎兵。

ハンニバルは、その様子を見ていた。

「……今だ」

そして、命令した。

「包囲を完成させろ!」

俺は、遠くの戦場を見つめていた。

本来の歴史と同じだ。

カンナエの戦い。

ハンニバルの最大の勝利。

だが。

俺は心の中で呟いた。

「……ここからが、本当の勝負だ」

なぜなら。

カンナエで勝ったあと、ローマをどうするか。

それこそが、カルタゴの未来を決めるからだ。

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