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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第五十五話 ローマ軍が戦わないので、その間にイタリアの町と商売を始めた

紀元前217年。

トラシメヌス湖畔でローマ軍を破ったあと。

カルタゴ軍は、イタリア各地を移動していた。

だが、ローマ軍はなかなか戦おうとしなかった。

指揮官は、ファビウス・マクシムス。

ハンニバルとの正面決戦を避け、遠くから追跡する。

そして、補給部隊を狙う。

俺は、その報告を聞いて頭を抱えた。

「……嫌な相手だな」

メルカルが尋ねた。

「戦ってこないなら、いいことでは?」

俺は首を振った。

「そうとも限らない」

「……?」

「戦わないまま、こちらの食料が減るのを待っているんだよ」

メルカルは顔を青くした。

「……それは困りますね」

俺は頷いた。

「かなりね」

ハンニバルは軍議を開いた。

「ローマ軍は、決戦を避けています」

マゴンが腕を組んだ。

「追いかけても逃げる」

ハンニバルは頷いた。

「そうです」

俺は地図を広げた。

「だったら、追いかけなくていいと思う」

ハンニバルが俺を見た。

「理由は?」

俺は答えた。

「ローマ軍が戦わないなら、その間にこちらの補給体制を整えよう」

「……」

「さらに、ローマの同盟都市との交易を増やす」

マゴンが眉をひそめた。

「敵の同盟都市と商売するのか?」

俺は頷いた。

「そうです」

俺は説明した。

「ローマの同盟都市といっても、住んでいるのは普通の人たちです」

ハンニバルが頷いた。

「そうですね」

「農民は穀物を売りたい」

「……」

「職人は商品を売りたい」

「……」

「商人は利益を出したい」

俺は続けた。

「だったら、まず商売を始めればいいんです」

マゴンは腕を組んだ。

「それでローマから離反するのか?」

俺は首を振った。

「すぐには無理でしょう」

そして続けた。

「でも、カルタゴと取引した方が得だと分かれば、ローマへの協力を考え直す人も出てくるはずです」

翌日。

俺は商人たちを集めた。

「皆さんにお願いがあります」

商人たちが顔を上げた。

「何だ?」

「イタリア各地の市場を調べてください」

「……市場?」

「はい」

俺は地図を広げた。

「穀物の価格」

「……」

「家畜の価格」

「……」

「鉄製品や布の需要」

そして続けた。

「どの町が、何を必要としているのか調べたいんです」

商人の一人が尋ねた。

「軍隊の補給のためか?」

俺は答えた。

「それもあります」

そして、少し笑った。

「でも、普通の商売もしたいんです」

最初に訪れたのは、小さな農村だった。

畑。

家畜小屋。

そして、穀物倉庫。

村の代表者は、俺たちを警戒していた。

「カルタゴ人か」

俺は頭を下げた。

「はい」

「何の用だ?」

俺は答えた。

「穀物を買いたいんです」

代表者は眉をひそめた。

「軍隊に持っていくのか?」

「はい」

代表者は首を振った。

「ローマに知られたら困る」

俺は頷いた。

「そうでしょうね」

俺は続けた。

「では、別の商売をしましょう」

代表者が首をかしげた。

「別の商売?」

俺は荷物を開いた。

中には、塩が入っていた。

代表者が目を見開いた。

「……塩?」

俺は頷いた。

「はい」

「どこから持ってきた?」

「交易路を使って運んできました」

俺は続けた。

「この村では、塩が不足していると聞きました」

代表者は頷いた。

「確かに」

俺は答えた。

「穀物と交換しませんか?」

代表者は考え込んだ。

「……ローマに知られたら?」

俺は答えた。

「無理に取引する必要はありません」

「……」

「ただ、村に必要な塩を届けたいだけです」

代表者は、しばらく俺を見つめていた。

そして言った。

「……少しだけなら」

俺は頷いた。

「ありがとうございます」

取引は、小規模なものだった。

塩を渡す。

穀物を受け取る。

それだけだ。

だが、俺にとっては大きな意味があった。

ローマの同盟地域で、カルタゴとの取引が始まったのだ。

メルカルが尋ねた。

「これで、味方になってくれるんですか?」

俺は首を振った。

「まだだよ」

「……」

「でも、次に来たとき、話を聞いてもらえる可能性は高くなる」

メルカルは頷いた。

「なるほど」

数週間後。

同じ村から、商人が訪れた。

「アドン殿」

「どうしました?」

商人は答えた。

「塩を、もう少し売っていただけませんか?」

俺は笑った。

「もちろんです」

商人は続けた。

「それから、鉄製品も欲しいんです」

俺は頷いた。

「農具ですか?」

「はい」

俺は答えた。

「分かりました」

こうして、取引が増えていった。

塩。

鉄製品。

布。

そして、穀物。

俺は取引記録を整理していた。

メルカルが笑った。

「……普通の商売になってきましたね」

俺は頷いた。

「そうだね」

「戦争中なのに」

俺は答えた。

「戦争中だからこそ、生活は続くんだよ」

だが。

ローマ軍も黙っていなかった。

ある日。

取引先の村から、急な知らせが届いた。

『ローマ軍が、カルタゴとの交易を禁止した』

俺は眉をひそめた。

「……来たか」

メルカルが尋ねた。

「どうするんですか?」

俺は答えた。

「まず、村の人たちを危険にさらさないようにする」

「……」

「無理に取引を続けさせるわけにはいかない」

メルカルは頷いた。

「そうですね」

俺は、村の代表者へ書簡を送った。

『取引を一時中断しても構いません』

『これまでの契約について、違約金は求めません』

『安全が確保できたときに、再開しましょう』

数日後。

返事が届いた。

『感謝する』

短い文章だった。

だが、俺は少し安心した。

「……これでいい」

メルカルが尋ねた。

「商売が減ってしまいますよ?」

俺は答えた。

「今はね」

そして続けた。

「でも、信用は残る」

その夜。

ハンニバルが俺のところへ来た。

「アドン」

「何?」

「ローマ軍が交易を妨害しているそうですね」

俺は頷いた。

「そうだね」

ハンニバルは尋ねた。

「どうします?」

俺は答えた。

「無理に続けない」

ハンニバルは少し驚いた。

「……やめるのですか?」

俺は首を振った。

「今は中断するだけ」

そして続けた。

「ローマ軍がいなくなれば、また取引できる」

ハンニバルは頷いた。

「なるほど」

俺は地図を広げた。

「それより、別の場所を調べたい」

ハンニバルが尋ねた。

「どこです?」

俺は南を指差した。

「イタリア南部」

ハンニバルは地図を見た。

「南部ですか」

俺は頷いた。

「そう」

「理由は?」

俺は答えた。

「ローマへの不満が強い都市があるから」

ハンニバルは頷いた。

「確かに」

俺は続けた。

「それに、港もある」

ハンニバルが顔を上げた。

「港?」

俺は頷いた。

「そう」

そして、言った。

「もし南部の港を確保できれば、カルタゴ本国から補給を受けやすくなる」

ハンニバルは、しばらく地図を見つめていた。

「……重要ですね」

俺は答えた。

「かなりね」

本来の歴史では、ハンニバルはイタリアで勝ち続けた。

だが、カルタゴ本国から十分な援軍や補給を受けられなかった。

ローマの海軍が強かったこともある。

だが、イタリア側に安定した港を確保できなかったことも大きい。

俺は地図を見つめた。

「……港が必要だ」

メルカルが尋ねた。

「どこの港ですか?」

俺は答えた。

「まず、南部の都市を調べる」

そして続けた。

「カルタゴへ協力する可能性がある都市を探すんだ」

数日後。

南部から商人が到着した。

俺は、その男と面会した。

「アドン殿」

「はい」

「南部の都市では、ローマへの不満が高まっています」

俺は頷いた。

「具体的には?」

商人は答えた。

「兵士の徴発です」

「……」

「それから、戦争の負担」

「……」

「さらに、ローマ軍の敗北が続いていることへの不安」

俺は頷いた。

「なるほど」

商人は続けた。

「ただし、すぐにカルタゴへ協力する都市は少ないでしょう」

俺は答えた。

「そうだと思います」

「ローマの報復を恐れています」

俺は頷いた。

「当然です」

商人は尋ねた。

「では、どうします?」

俺は答えた。

「今から関係を作る」

そして、少し笑った。

「アルプス越えのときと同じだよ」

その日の夕方。

俺はハンニバルへ報告した。

「南部の都市との交渉を始めたい」

ハンニバルは頷いた。

「お願いします」

俺は続けた。

「ただし、すぐに離反させるつもりはない」

「……」

「まず、交易と情報交換から始める」

ハンニバルは笑った。

「時間をかけるのですね」

俺は頷いた。

「そう」

そして、言った。

「ローマ軍が戦わない時間を、こちらの準備に使う」

ハンニバルは頷いた。

「いい考えです」

だが。

その日の夜。

カルタゴ本国から、急な書簡が届いた。

俺は封を開いた。

そして、顔をしかめた。

「……何だ、これ」

メルカルが尋ねた。

「どうしました?」

俺は答えた。

「カルタゴ政府が、軍事費の削減を検討しているらしい」

メルカルが目を見開いた。

「……戦争中ですよ!?」

俺は頷いた。

「そうなんだけどね」

書簡には、こう書かれていた。

『イタリア遠征軍への補給費用が増大している』

『ヒスパニア方面の軍事費も必要である』

『海軍の維持費も増加している』

『よって、各方面の支出を見直す』

俺は頭を抱えた。

「……まずいな」

メルカルが尋ねた。

「何がですか?」

俺は答えた。

「このままだと、ハンニバル軍への補給が減る」

メルカルは顔を青くした。

「……それは困ります!」

俺は頷いた。

「かなりね」

俺は地図を見つめた。

ローマは、何度負けても軍隊を作り直す。

一方、カルタゴは、勝っているのに軍事費を減らそうとしている。

俺は呟いた。

「……本来の歴史と同じことを繰り返すつもりか」

メルカルが尋ねた。

「どうするんですか?」

俺は答えた。

「カルタゴ政府を説得する」

「……」

「援軍と補給を減らされたら、勝てる戦争も勝てなくなる」

その夜。

俺は、カルタゴ本国へ送る報告書を書き始めた。

ティキヌスでの勝利。

トレビアでの勝利。

トラシメヌス湖畔での勝利。

そして、イタリア各地での交易拡大。

俺は、すべてを数字でまとめた。

必要な食料。

必要な銀貨。

必要な船。

そして、確保すべき港。

メルカルが尋ねた。

「……何を書いているんですか?」

俺は答えた。

「カルタゴが勝つための計画書だよ」

メルカルは驚いた。

「……計画書?」

俺は頷いた。

「そう」

そして、言った。

「ハンニバルが戦場で勝っている間に、カルタゴ政府にも戦争に勝つための仕事をしてもらう」

翌朝。

俺は報告書を使者へ渡した。

「必ず、カルタゴ政府へ届けてください」

使者が頷いた。

「承知しました」

俺は続けた。

「特に、軍事費の削減については再考を求めています」

「はい」

使者は出発した。

俺は、その背中を見送った。

「……頼むぞ」

だが。

その数日後。

さらに悪い知らせが届いた。

ローマが、カルタゴの補給船を狙っているという。

俺は報告書を見つめた。

「……やっぱり、海か」

メルカルが尋ねた。

「どうするんですか?」

俺は答えた。

「海軍と連携する」

「……」

「補給船を守らないと、イタリア遠征軍は孤立する」

俺は、アドヘルバル提督へ書簡を書いた。

『イタリア方面への補給路確保が必要です』

『南部の港を確保できる可能性があります』

『その場合、護衛艦隊の派遣を検討してください』

そして、最後に付け加えた。

『戦場での勝利を、補給不足で失うわけにはいきません』

その夜。

俺は地図を見つめていた。

イタリア。

ヒスパニア。

カルタゴ本国。

そして、地中海。

すべてがつながっている。

ハンニバルがイタリアで勝つ。

その勝利を利用して、同盟都市を離反させる。

港を確保する。

補給船を送る。

そして、さらに軍を強化する。

俺は呟いた。

「……勝てるはずだ」

だがそのときメルカルが部屋へ駆け込んできた。

「アドン殿!」

俺は顔を上げた。

「どうした?」

メルカルは叫んだ。

「カルタゴ本国から、追加の命令が届きました!」

俺は眉をひそめた。

「……何?」

メルカルは書簡を差し出した。

俺は封を開いた。

そして、動きを止めた。

そこには、こう書かれていた。

『イタリア遠征軍の補給費用について、民間商会による負担を拡大する』

俺は呟いた。

「……つまり」

メルカルが尋ねた。

「どういうことですか?」

俺は答えた。

「……商人に、戦争の費用を出させるつもりらしい」

メルカルは目を見開いた。

「……ええっ!?」

俺は頭を抱えた。

「……また、面倒なことになったな」

そして。

カルタゴ政府が新しく任命した補給責任者の名前を見た瞬間、俺はさらに嫌な予感がした。

その名前は――ハンノ。

以前から、軍事費の削減を主張していた政治家だった。

俺は書簡を握りしめた。

「……よりによって、あの人か」

こうしてローマ軍との戦いだけでなく、カルタゴ本国の政治との戦いまで始まろうとしていた。

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