↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
54/137

第五十四話 ローマ軍が追いかけてくるので、ハンニバルが湖のほとりで待つことにした

紀元前217年。

春。

カルタゴ軍は、イタリア半島を南へ進んでいた。

冬の間に兵士たちは休息し、食料を補充した。

ガリア系部族からの協力も増えている。

だが、ローマは諦めていなかった。

新しい軍隊が編成された。

そして、新しい執政官が指揮を執ることになった。

ガイウス・フラミニウス。

俺は、その名前を聞いて地図を見つめた。

「……来たか」

メルカルが尋ねた。

「また知っている人ですか?」

俺は答えた。

「名前だけはね」

ハンニバルは軍議を開いた。

「ローマ軍は、我々を追ってくる」

マゴンが尋ねた。

「迎え撃ちますか?」

ハンニバルは答えた。

「戦場を選びます」

俺は頷いた。

「それがいいと思う」

ハンニバルは地図を広げた。

イタリア中部。

山。

谷。

そして、湖。

ハンニバルは一つの場所を指差した。

「ここです」

俺は息を呑んだ。

トラシメヌス湖。

本来の歴史で、ローマ軍が大敗する場所だった。

俺は湖の周辺を調べた。

水辺に沿った道。

その北側には丘陵地帯が続いている。

場所によっては、道が狭くなる。

そして、朝には霧が出ることもある。

俺は呟いた。

「……待ち伏せには、確かに向いているな」

メルカルが尋ねた。

「何がですか?」

俺は答えた。

「地形だよ」

「……」

「ローマ軍が湖沿いの道へ入れば、動ける場所が限られる」

メルカルは頷いた。

「なるほど」

ハンニバルは将校たちへ命令した。

「部隊を分ける」

マゴンが頷いた。

「はっ!」

「丘の上に歩兵を配置する」

「はっ!」

「騎兵は、敵の退路を断てる位置へ置く」

「はっ!」

「そして、敵が十分に進んでから攻撃する」

俺は地図を見つめた。

「……全部入るまで待つんだね」

ハンニバルは頷いた。

「はい」

俺は補給部隊へ命令した。

「戦闘中、兵士たちが食料を取りに戻る必要がないようにします」

メルカルが尋ねた。

「どうするんですか?」

俺は答えた。

「各部隊へ、携帯食料を配る」

「……」

「それから、水も確保する」

メルカルは頷いた。

「分かりました」

俺は続けた。

「戦いが長引く可能性もあるからね」

その夜。

カルタゴ軍は、静かに配置についた。

兵士たちは丘の陰に隠れる。

騎兵は、馬を落ち着かせる。

そして、ハンニバルは湖を見つめていた。

俺は近づいた。

「ハンニバル」

「アドン」

「準備は?」

ハンニバルは答えた。

「整いました」

俺は頷いた。

「……そうか」

ハンニバルは少し笑った。

「心配ですか?」

俺は答えた。

「もちろん」

「なぜです?」

俺は湖を見た。

「勝てる戦いでも、兵士は死ぬからね」

ハンニバルは黙った。

そして頷いた。

「……そのとおりです」

翌朝。

湖の周辺には、濃い霧が立ち込めていた。

俺は少し離れた場所で、補給部隊と待機していた。

メルカルが呟いた。

「……何も見えませんね」

俺は頷いた。

「うん」

霧の向こうから、かすかな足音が聞こえてくる。

ローマ軍だ。

俺は息を呑んだ。

「……来た」

ローマ軍は、湖沿いの道へ進んでいた。

先頭部隊。

中央部隊。

そして、後続部隊。

長い行軍列が続いている。

だが、霧のため周囲の様子がよく見えない。

丘の上には、カルタゴ軍が隠れていた。

ローマ兵たちは、それに気づいていなかった。

ハンニバルは、静かに待っていた。

敵の先頭が進む。

中央が進む。

そして、後続部隊も湖沿いの道へ入っていく。

ハンニバルは将校へ尋ねた。

「敵の最後尾は?」

将校が答えた。

「まもなく通過します」

ハンニバルは頷いた。

「……よし」

そして、剣を抜いた。

「攻撃開始!」

角笛が鳴った。

丘の上から、カルタゴ軍が一斉に姿を現した。

ローマ兵たちは驚いた。

「敵だ!」

「どこから!?」

矢が飛ぶ。

槍が投げられる。

そして、歩兵が丘を下ってくる。

ローマ軍は混乱した。

俺は遠くから、戦いの音を聞いていた。

叫び声。

金属がぶつかる音。

そして、角笛。

メルカルが震えていた。

「……始まりましたね」

俺は頷いた。

「うん」

ローマ軍は、陣形を整えようとした。

だが、道が狭い。

片側は湖。

反対側は丘。

兵士たちは、自由に動けない。

さらに、霧のため敵の位置も分からない。

俺は地図を見つめた。

「……厳しいな」

メルカルが尋ねた。

「ローマ軍がですか?」

俺は頷いた。

「そう」

カルタゴ軍の騎兵が、ローマ軍の退路を断った。

後方のローマ兵たちは、逃げ道を失った。

一部は湖へ逃げようとした。

だが、水は深い。

重い装備を身につけたままでは、簡単に進めない。

戦場は混乱していた。

しばらくして。

伝令が到着した。

「アドン殿!」

俺は立ち上がった。

「どうなってる!?」

伝令は答えた。

「敵軍、混乱しています!」

俺は頷いた。

「ハンニバルは?」

「指揮を続けています!」

俺は息を吐いた。

「……よし」

だが、ローマ軍も必死だった。

一部の兵士たちは、集団で丘を突破しようとした。

盾を構え、槍を突き出す。

そして、カルタゴ軍の包囲を破ろうとする。

ハンニバルは、その動きを見ていた。

「……あの部隊は強い」

将校が尋ねた。

「追撃しますか?」

ハンニバルは答えた。

「無理に追うな」

「……?」

「敵の主力を崩すことが先だ」

戦いは、数時間続いた。

そして。

ローマ軍は、大敗した。

執政官フラミニウスも戦死した。

俺は、その知らせを聞いて黙った。

「……勝ったのか」

メルカルが笑った。

「また勝ちました!」

俺は頷いた。

「うん」

だが。

喜びよりも、別の感情が強かった。

本来の歴史と同じだ。

ハンニバルは、またローマ軍を破った。

それでも、ローマは諦めない。

俺は地図を見つめた。

「……次は、どう動く?」

その夜。

ハンニバルが帰還した。

兵士たちは歓声を上げた。

「ハンニバル!」

「ハンニバル!」

俺は、ハンニバルへ声をかけた。

「おかえり」

ハンニバルは頷いた。

「勝ちました」

俺は答えた。

「知ってるよ」

ハンニバルは続けた。

「ローマ軍の主力を破りました」

俺は頷いた。

「そうだね」

そして、尋ねた。

「次はローマへ向かうの?」

ハンニバルは首を振った。

「いいえ」

俺は少し安心した。

「……そうだよね」

ハンニバルは地図を広げた。

「ローマは、簡単に落とせる都市ではありません」

俺は頷いた。

「そうだね」

「城壁があります」

「うん」

「守備兵もいます」

「うん」

「そして、我々には十分な攻城兵器がありません」

俺は答えた。

「そのとおり」

ハンニバルは続けた。

「だから、ローマを直接攻撃するより、周辺の同盟都市を揺さぶります」

俺は笑った。

「いいと思う」

俺は、以前から調べていた同盟都市の情報を取り出した。

ローマへの不満。

兵士の徴発。

税負担。

そして、自治への不満。

ハンニバルは資料を見た。

「……かなり集まっていますね」

俺は答えた。

「商人たちに調べてもらったからね」

ハンニバルは頷いた。

「では、使者を送りましょう」

俺は答えた。

「うん」

翌日。

カルタゴ軍は、ローマの捕虜を集めた。

ハンニバルは、捕虜の中からローマ市民と同盟都市出身者を区別した。

そして、同盟都市出身者の一部を解放する方針を示した。

俺は、その話を聞いて頷いた。

「……いいね」

メルカルが尋ねた。

「なぜですか?」

俺は答えた。

「ローマの同盟都市へ、カルタゴは敵ではないと伝えられるからだよ」

俺は、解放される捕虜たちへ食料を渡すことを提案した。

メルカルが驚いた。

「敵の兵士にですか?」

俺は頷いた。

「そう」

「……もったいなくありませんか?」

俺は答えた。

「彼らは、自分の町へ帰る」

「……」

「そして、カルタゴ軍がどういう軍隊だったかを話す」

メルカルは頷いた。

「なるほど」

俺は続けた。

「言葉だけより、実際に食料を渡された経験の方が信用されるかもしれない」

数日後。

解放された捕虜たちは、それぞれの故郷へ向かった。

俺は、その姿を見送った。

「……頼むよ」

メルカルが尋ねた。

「何をですか?」

俺は答えた。

「本当のことを伝えてほしいんだ」

「……」

「カルタゴ軍が、無条件に町を略奪するわけじゃないってことをね」

だが。

ローマは、また新しい指導者を選んだ。

クィントゥス・ファビウス・マクシムス。

俺は、その名前を聞いて顔を上げた。

「……ファビウス?」

メルカルが尋ねた。

「また知っている人ですか?」

俺は答えた。

「……厄介な人だよ」

ファビウスは、ハンニバルとの決戦を避ける方針を取った。

大軍で追いかける。

だが、正面からは戦わない。

補給を妨害する。

小部隊を攻撃する。

そして、カルタゴ軍が疲れるのを待つ。

俺は、その方針を聞いて頭を抱えた。

「……一番嫌な戦い方だな」

メルカルが尋ねた。

「なぜですか?」

俺は答えた。

「ハンニバルの得意な会戦を避けるからだよ」

その夜。

ハンニバルが俺を呼んだ。

「アドン」

「何?」

「ローマ軍が、戦おうとしません」

俺は頷いた。

「そうだろうね」

ハンニバルは少し笑った。

「予想していましたか?」

俺は答えた。

「可能性は考えていたよ」

ハンニバルは地図を見た。

「では、どうします?」

俺は少し考えた。

そして答えた。

「……商売をしよう」

ハンニバルは、しばらく黙った。

「……商売?」

俺は頷いた。

「そう」

そして、地図のイタリア各地を指差した。

「ローマ軍が戦わないなら、その間にこちらの味方を増やせばいい」

ハンニバルは笑った。

「なるほど」

俺は続けた。

「食料を買う」

「……」

「交易路を広げる」

「……」

「同盟都市へ使者を送る」

そして、言った。

「ローマ軍が戦わない時間を、全部こちらの準備に使うんだ」

ハンニバルは頷いた。

「いいですね」

こうしてローマ軍は決戦を避け、カルタゴ軍はイタリア各地で活動を続けることになった。

だが。

俺は知っていた。

この戦い方は、ローマ国内で批判される。

そして、翌年。

ローマは再び、大軍を集めることになる。

紀元前216年。

カンナエの戦い。

本来の歴史では、ハンニバルがローマ軍を壊滅させた戦いだ。

俺は地図を見つめた。

「……次は、カンナエか」

そして、心の中で呟いた。

今度こそ。

戦場の勝利を、戦争そのものの勝利へ変える。

そのための準備を、俺は始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。