↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/137

第五十一話 アルプスを越えたばかりなのに、ローマ軍が戦いに来た

紀元前218年。

イタリア北部。

ハンニバル率いるカルタゴ軍は、ついにアルプスを越えた。

だが、喜んでいる暇はなかった。

ローマ軍が近づいていたからだ。

「敵兵、およそ二千!」

偵察兵の報告を聞き、俺は地図を見た。

「……もう来たのか」

隣にいたメルカルが青ざめた。

「山を越えたばかりですよ!」

「そうだね」

「兵士たちは疲れ切っています!」

「うん」

「戦えるんですか!?」

俺は、少し離れた場所にいるハンニバルを見た。

「……戦えるようにするんだろうね」

ハンニバルは将校たちを集めた。

「敵は二千か」

マゴンが答えた。

「はい。

ただし、後方に増援がいる可能性があります」

ハンニバルは頷いた。

「当然だろう」

俺は尋ねた。

「迎え撃つの?」

ハンニバルは首を振った。

「まず、兵士を休ませます」

俺は少し驚いた。

「……休ませる?」

「はい」

ハンニバルは地図を指差した。

「敵が来たからといって、敵の都合に合わせて戦う必要はありません」

俺は思わず笑った。

「なるほど」

ハンニバルは続けた。

「こちらが戦える状態になってから、戦場を選びます」

俺は補給部隊を集めた。

「今日から三日間、食料の配給を増やします」

メルカルが驚いた。

「増やすんですか?」

「うん」

「食料は足りるんですか?」

俺は答えた。

「足りる範囲でね」

アルプスを越えた兵士たちは、疲れ切っている。

空腹。

寒さ。

負傷。

そして、睡眠不足。

この状態で戦えば、勝てる戦いも負けてしまう。

俺は続けた。

「まず、兵士たちの体力を回復させる」

メルカルは頷いた。

「分かりました」

だが、問題は食料だけではなかった。

兵士の数も減っていた。

アルプス越えの途中で、命を落とした者。

負傷して歩けなくなった者。

行軍についてこられなくなった者。

そして、荷駄獣も多く失われていた。

俺は記録を確認した。

「……やっぱり、かなり減ったな」

メルカルが尋ねた。

「準備していても、これだけ減るんですね」

俺は頷いた。

「山は、こちらの事情を考えてくれないからね」

その日の夕方。

ハンニバルが補給拠点へ来た。

「アドン」

「何?」

「兵士たちの様子は?」

俺は答えた。

「食料を受け取って、少しずつ回復している」

「そうですか」

「ただし、全員がすぐに戦えるわけじゃない」

ハンニバルは頷いた。

「分かっています」

俺は尋ねた。

「ローマ軍は?」

ハンニバルは答えた。

「こちらの様子を探っています」

「……」

「おそらく、アルプス越えで我々が弱っていると考えているのでしょう」

俺は頷いた。

「実際、弱っているからね」

ハンニバルは笑った。

「だからこそ、油断してくれるかもしれません」

数日後。

新しい報告が届いた。

ローマ軍の本隊が、ポー川流域へ進軍しているという。

指揮官は、執政官プブリウス・コルネリウス・スキピオ。

俺は、その名前を聞いて動きを止めた。

「……スキピオ?」

メルカルが尋ねた。

「知っているんですか?」

俺は答えた。

「名前だけはね」

本来の歴史で、ハンニバルと最初に戦うローマの執政官。

そして、その息子は後にカルタゴにとって最大の敵となる。

スキピオ・アフリカヌス。

ザマの戦いで、ハンニバルを破る男だ。

俺は呟いた。

「……もう、そこまで来たのか」

ハンニバルは軍議を開いた。

「ローマ軍の指揮官はスキピオだ」

将校たちが頷いた。

「敵は我々をアルプスの出口で押さえようとしている」

マゴンが尋ねた。

「こちらから攻撃しますか?」

ハンニバルは答えた。

「騎兵を使います」

俺は顔を上げた。

「騎兵?」

「はい」

ハンニバルは地図を指差した。

「ティキヌス川の周辺には、騎兵が動ける平地があります」

俺は頷いた。

「なるほど」

ハンニバルは続けた。

「ローマ軍が我々の戦力を調べようとしているなら、こちらも敵を調べます」

翌朝。

カルタゴ軍の騎兵部隊が出発した。

ヌミディア騎兵。

ヒスパニア騎兵。

そして、その他の騎兵部隊。

俺は、その様子を見つめていた。

メルカルが尋ねた。

「歩兵は行かないんですか?」

俺は答えた。

「今回は、騎兵が中心になると思う」

「……」

「平地での戦いなら、ヌミディア騎兵の機動力が生きるからね」

俺はヌミディア騎兵の指揮官へ声をかけた。

「食料と馬の飼料は足りていますか?」

指揮官は頷いた。

「問題ない」

「馬の状態は?」

「山越えで疲れているが、動ける馬を選んでいる」

俺は頷いた。

「無理はしないでください」

指揮官は笑った。

「戦場で無理をするかどうかは、将軍が決める」

俺は肩をすくめた。

「それもそうですね」

数日後。

ティキヌス川付近。

ハンニバル率いるカルタゴ騎兵と、スキピオ率いるローマ軍の騎兵部隊が接近した。

俺は本隊の補給拠点で、伝令を待っていた。

メルカルが落ち着かない様子で歩き回っている。

「……まだですかね」

俺は答えた。

「まだだね」

「勝てますか?」

俺は少し考えた。

そして答えた。

「勝つと思う」

「どうしてですか?」

俺は答えた。

「ハンニバルだから」

メルカルは呆れた顔をした。

「……理由になっていませんよ」

俺は笑った。

「そうだね」

戦場では、ローマ騎兵が前進していた。

その前には、軽装歩兵が配置されていた。

だが、ハンニバルは騎兵を素早く前進させた。

ローマ軍の軽装歩兵は、騎兵の接近を受けて後退した。

そして、騎兵同士の戦いが始まった。

正面から衝突する騎兵。

槍を突き出す兵士。

倒れる馬。

砂煙。

だが、ハンニバルには別の狙いがあった。

ヌミディア騎兵だ。

彼らは敵の側面へ回り込んだ。

そして、ローマ軍の後方を攻撃した。

ローマ軍は混乱した。

正面にはカルタゴ騎兵。

側面にはヌミディア騎兵。

さらに、後方からも攻撃を受ける。

スキピオは兵士たちをまとめようとした。

だが、戦況は悪化していった。

そして。

ローマ軍の執政官スキピオが負傷した。

ローマ軍は撤退を始めた。

ハンニバルは追撃を命じた。

だが、無理な深追いはしなかった。

敵の本隊が近くにいる可能性があったからだ。

夕方。

伝令が補給拠点へ到着した。

「アドン殿!」

俺は立ち上がった。

「どうだった!?」

伝令は笑った。

「勝利です!」

メルカルが叫んだ。

「やった!」

俺は息を吐いた。

「……よかった」

伝令は続けた。

「ローマ軍の執政官が負傷しました!」

俺は頷いた。

「……歴史どおりだな」

メルカルが首をかしげた。

「何か言いました?」

俺は首を振った。

「何でもない」

その夜。

ハンニバルが帰還した。

兵士たちは歓声を上げた。

「ハンニバル!」

「ハンニバル!」

俺は、その姿を見つめていた。

ハンニバルは馬から降り、俺のところへ来た。

「アドン」

「おかえり」

「勝ちました」

俺は笑った。

「知ってるよ」

ハンニバルは頷いた。

「これで、イタリアの部族も我々を見る目を変えるでしょう」

俺は答えた。

「そうだね」

そして、続けた。

「でも、ここからが大変だよ」

ハンニバルは笑った。

「分かっています」

その翌日。

タウリニ族の族長アリクスが、ハンニバルの陣営を訪れた。

俺は二人を引き合わせた。

「こちらがハンニバル将軍です」

アリクスは頭を下げた。

「お会いできて光栄です」

ハンニバルは答えた。

「こちらこそ」

アリクスは続けた。

「ローマ軍に勝利したと聞きました」

ハンニバルは頷いた。

「はい」

族長は少し考えた。

そして言った。

「我々は、カルタゴ軍への食料供給を正式に認めます」

俺は息を吐いた。

「……ありがとうございます」

ハンニバルも頷いた。

「協力に感謝します」

俺は、すぐに契約書を作成した。

食料の購入価格。

支払い方法。

輸送の責任。

村の安全。

そして、略奪の禁止。

ハンニバルは契約書を確認した。

「……細かいですね」

俺は答えた。

「細かくしておかないと、あとで揉めるからね」

ハンニバルは笑った。

「相変わらずです」

俺は肩をすくめた。

「商人だからね」

だが。

勝利の知らせは、ローマにも届いていた。

ローマ元老院では、ハンニバルのアルプス越えと、スキピオの敗北が報告された。

議員たちは驚いた。

「アルプスを越えたというのか!?」

「象まで連れて!?」

「しかも、スキピオが敗れた!?」

ローマは、すぐに次の軍隊を動かした。

執政官ティベリウス・センプロニウス・ロングス。

その軍が、北イタリアへ向かっていた。

俺は、その知らせを聞いて地図を見つめた。

「……次はトレビアか」

メルカルが尋ねた。

「トレビア?」

俺は答えた。

「川の名前だよ」

そして、心の中で呟いた。

本来の歴史では、ハンニバルはここでもローマ軍を破る。

だが。

今回の戦いには、少し違う条件があった。

アルプス越えの前から、俺たちが整備してきた補給路。

そして、タウリニ族との協定。

さらに、ヌミディア騎兵との長期的な協力関係。

俺は地図を見つめた。

「……今度は、勝つだけじゃ終わらせない」

ハンニバルが尋ねた。

「何をするつもりですか?」

俺は答えた。

「ローマ軍に勝ったあと、イタリアの部族をもっと味方につける」

ハンニバルは頷いた。

「いいですね」

俺は続けた。

「そして、ローマが兵士を集められなくなる状況を作る」

ハンニバルは笑った。

「子供のころに教えてもらった話ですね」

俺は答えた。

「そうだよ」

その夜。

ハンニバルは、次の戦いに備えて軍議を開いた。

地図には、トレビア川が描かれていた。

ローマ軍の進路。

カルタゴ軍の陣地。

そして、川の周辺の地形。

ハンニバルは将校たちへ言った。

「次の敵は、スキピオよりも積極的に戦おうとするでしょう」

マゴンが尋ねた。

「どうする?」

ハンニバルは答えた。

「敵に、こちらを攻撃したいと思わせます」

俺は顔を上げた。

「……誘い出すの?」

ハンニバルは笑った。

「はい」

そして、地図の川を指差した。

「ローマ軍には、川を渡ってもらいます」

俺は息を呑んだ。

本来の歴史と同じだ。

寒い冬。

冷たい川。

空腹のローマ兵。

そして、待ち構えるカルタゴ軍。

俺は思わず呟いた。

「……始まるな」

ハンニバルは頷いた。

「はい」

そして、言った。

「次は、ローマ軍の主力を破ります」

こうしてハンニバルは、トレビア川でローマ軍を迎え撃つ準備を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。