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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百三十六話 ザマの戦いから二十年が過ぎたので、ハンニバルと最後にカルタゴの港を歩いた

紀元前182年。

カルタゴ。

ザマの戦いから二十年。

俺は、久しぶりにハンニバルと港を歩いていた。

ハンニバルも、すっかり年を取っていた。

髪には白いものが混じり、歩く速度も以前より遅くなっている。

だが、その目は昔と変わらなかった。

鋭く、そして穏やかだった。

港には、多くの商船が停泊していた。

ローマ。

ヒスパニア。

ヌミディア。

ギリシア。

そして、東方の国々。

さまざまな地域から商品が運ばれている。

ハンニバルは、その光景を見つめていた。

「……ずいぶん変わりましたね」

俺は頷いた。

「そうですね」

「戦争中は、軍船ばかりでした」

「はい」

「今は、商船の方が多い」

俺は笑った。

「それが一番です」

しばらく歩くと、港の広場に出た。

そこには、新しい記念碑が建てられていた。

第二次ポエニ戦争の終結を記念するものだった。

碑文には、こう刻まれていた。

『紀元前201年、カルタゴとローマは和平を結んだ』

『長き戦争を終え、両国は交易と共存の道を選んだ』

俺は、その文字を見つめた。

ハンニバルが言った。

「……不思議なものです」

「何がです?」

「私は、ローマを倒すために人生の大半を費やしました」

俺は黙って聞いていた。

「しかし、今ではローマの商船が、この港へ普通に入ってくる」

「……」

「そして、カルタゴの商人もローマへ行く」

俺は頷いた。

「そうですね」

ハンニバルは、しばらく記念碑を見つめていた。

そして言った。

「アドン」

「はい」

「あなたは、最初からこうなることを望んでいたのですか?」

俺は少し考えた。

「……最初は、カルタゴが滅びなければ、それでいいと思っていました」

ハンニバルは頷いた。

「……」

「でも、戦争が終わってから気づいたんです」

「何を?」

俺は答えた。

「生き残るだけじゃ、足りないんだって」

ハンニバルは俺を見た。

「……」

「生き残ったあと、どう暮らすかが大切なんです」

ハンニバルは、静かに笑った。

「……そのとおりですね」

俺は続けた。

「戦争に勝っても、国が貧しくなれば意味がありません」

「……」

「敵を倒しても、次の敵が現れるだけなら、戦争は終わりません」

「……」

「だから、商売を続けられる国にしたかったんです」

ハンニバルは頷いた。

「あなたらしいですね」

しばらくして。

ハンニバルが、遠くの海を見つめた。

「アドン」

「はい」

「私は、幸運だったと思います」

俺は驚いた。

「幸運?」

「ええ」

ハンニバルは続けた。

「弟が生きていた」

「……」

「故郷へ帰れた」

「……」

「そして、戦争が終わったあとも、この街を見ることができた」

俺は、胸の奥が熱くなった。

本来の歴史では、ハンニバルは祖国を離れ、最後は異国で命を絶つ。

だが、この世界では違う。

彼は故郷にいる。

弟も生きている。

そして、カルタゴは独立を守っている。

俺は静かに言った。

「……本当に、よかったです」

ハンニバルは頷いた。

「ええ」

そのとき。

港の向こうから、子供たちの声が聞こえた。

「ハンニバル将軍だ!」

「本当だ!」

数人の子供が駆け寄ってきた。

一人の少年が尋ねた。

「将軍、本当にローマ軍に勝ったんですか?」

ハンニバルは笑った。

「昔の話ですよ」

「すごい!」

別の少年が尋ねた。

「どうやって勝ったんですか?」

ハンニバルは少し考えた。

そして、俺を指差した。

「この人のおかげです」

俺は慌てた。

「ちょっと待ってください!」

子供たちが一斉に俺を見た。

「このおじさんが?」

俺は苦笑した。

「おじさんって……」

ハンニバルは楽しそうに笑った。

「そうです」

少年が尋ねた。

「この人、強いんですか?」

ハンニバルは答えた。

「剣は、あまり得意ではありません」

俺は頷いた。

「まったく得意じゃないよ」

子供たちは首を傾げた。

「じゃあ、どうやって勝ったの?」

ハンニバルは、静かに答えた。

「食料を運んでくれたんです」

少年たちは顔を見合わせた。

「……食料?」

「そうです」

ハンニバルは続けた。

「兵士は、食べなければ戦えませんからね」

俺は笑った。

「そのとおり」

子供たちは、しばらく考えていた。

そして、一人の少年が言った。

「じゃあ、私も商人になる!」

俺は驚いた。

「どうして?」

少年は笑った。

「戦争をしなくても、国の役に立てるんでしょう?」

俺は、しばらく何も言えなかった。

そして、静かに頷いた。

「……そうだよ」

夕方。

子供たちが帰ったあと。

俺とハンニバルは、港の石段に腰を下ろした。

夕日が海を赤く染めている。

ハンニバルが言った。

「……いい時代になりましたね」

俺は頷いた。

「はい」

「これからも、平和が続くでしょうか?」

俺は少し考えた。

「分かりません」

ハンニバルは頷いた。

「……そうですね」

俺は続けた。

「でも、次の世代が戦争を避ける方法を考えてくれると思います」

ハンニバルは微笑んだ。

「そう願いたいですね」

俺は、海を見つめた。

二十年前。

この海には、ローマ軍の船が迫っていた。

カルタゴの人々は、滅亡を恐れていた。

だが、今は違う。

商船が行き交う。

人々が働く。

子供たちが笑う。

俺は、静かに呟いた。

「……守れたんだな」

ハンニバルが顔を上げた。

「何をです?」

俺は答えた。

「この街を」

ハンニバルは、ゆっくり頷いた。

「……ええ」

二人は、しばらく何も言わずに海を見つめていた。

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