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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百三十二話 ハンニバルが軍を離れることになったので、最後に二人でザマの戦いを振り返った

紀元前195年。

カルタゴ。

和平から六年が過ぎた。

カルタゴの街は、大きく変わっていた。

道路が整備され、港には新しい倉庫が建ち並んでいる。

農村では灌漑設備が修復され、収穫量も回復しつつあった。

そして、国庫の収入も安定していた。

ハンニバルが進めた財政改革は、少しずつ成果を上げていた。

だが、その改革によって利益を失った人々もいた。

古い徴税権を持つ有力家門。

不透明な契約によって利益を得ていた役人。

そして、ハンニバルの政治的影響力を警戒する議員たち。

彼らの反発は、年々強まっていた。

ある日の午後。

ハンニバルから、俺に使者が届いた。

『今夜、時間をいただけますか』

俺はすぐに返事を書いた。

夕方。

俺はハンニバルの屋敷を訪ねた。

庭には、オリーブの木が植えられていた。

ハンニバルは、その下で一人座っていた。

「アドン」

俺は頭を下げた。

「お呼びでしょうか」

ハンニバルは笑った。

「少し話がしたくなりまして」

俺は隣に座った。

しばらく、二人で夕日を眺めていた。

やがて、ハンニバルが口を開いた。

「私は、政務の第一線から退くことにしました」

俺は驚いた。

「……本当ですか?」

「ええ」

「どうして?」

ハンニバルは苦笑した。

「敵が増えすぎました」

俺は黙った。

「戦場の敵なら、まだ分かりやすいのですが」

「……」

「政治の敵は、なかなか難しい」

俺は思わず笑った。

「それは分かります」

ハンニバルは続けた。

「私が改革を進めれば進めるほど、反対する人々も増えました」

「……」

「国のためになると信じていても、すべての人が賛成するわけではありません」

俺は頷いた。

「そうですね」

ハンニバルは、遠くの港を見つめた。

「ですが、改革そのものは続けられるようになりました」

「はい」

「記録の仕組みも、監査の制度も、すでに整っています」

俺は頷いた。

「もう、誰か一人がいなくなっても動く仕組みになっています」

ハンニバルは微笑んだ。

「それが、一番大切なことですね」

しばらくして、俺は尋ねた。

「将軍は、ザマの戦いを覚えていますか?」

ハンニバルは笑った。

「忘れるはずがありません」

「……」

「スキピオは、本当に強い相手でした」

俺は頷いた。

「はい」

「もし、ハスドルバルがいなければ」

ハンニバルは言葉を切った。

「もし、マシニッサがローマ側についていれば」

俺は黙って聞いていた。

「もし、補給が途絶えていれば」

ハンニバルは俺を見た。

「結果は、違っていたかもしれません」

俺は頷いた。

「そうですね」

ハンニバルは続けた。

「私は、長い間、戦術こそが戦争を決めると考えていました」

「……」

「もちろん、戦術は重要です」

「はい」

「ですが、ザマで学びました」

俺は顔を上げた。

「何をです?」

ハンニバルは静かに答えた。

「戦場に立つ前に、勝敗の一部は決まっているということです」

俺は黙った。

「補給」

「……」

「外交」

「……」

「同盟」

「……」

「そして、兵士たちが何のために戦うのか」

ハンニバルは微笑んだ。

「あなたは、それをずっと考えていましたね」

俺は首を振った。

「俺は、商人としてできることをしただけです」

「それで十分です」

俺は、しばらく考えた。

そして言った。

「将軍」

「はい」

「俺は、カルタゴが滅びるのを防ぎたかったんです」

ハンニバルは静かに頷いた。

「知っています」

俺は驚いた。

「……え?」

「あなたは、最初からそういう目をしていました」

ハンニバルは笑った。

「戦争に勝ちたいというより、何か大きな破滅を避けようとしているように見えた」

俺は言葉を失った。

ハンニバルは続けた。

「理由を聞こうとは思いません」

「……」

「ですが、あなたがいてくれてよかった」

「……」

「あの戦いはあなたのおかげで勝てたような気がします。」

俺は、しばらく何も言えなかった。

そして、静かに頭を下げた。

「……こちらこそ」

その夜。

屋敷を出ると、空には星が広がっていた。

俺は振り返った。

ハンニバルは、まだ庭に立っていた。

戦争の英雄。

カルタゴを救った将軍。

そして、戦争が終わったあとも国を立て直そうとした男。

俺は小さく呟いた。

「……本当に、歴史が変わったんだな」

もはや、目の前で起きているのは、俺の知る歴史とはまったく異なる出来事ばかりだった。

本来なら起こるはずだった出来事が起こらず、存在しなかったはずの未来が、今こうして現実になっている。

俺が知っている歴史は、もう何の道しるべにもならない。

ここから先は、誰も知らない新しい歴史が始まるのだ。

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