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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百三十話 ローマが再び軍備を増やし始めたので、カルタゴも軍を増やすべきか議論になった

紀元前198年。

カルタゴ。

和平から三年。

カルタゴの港には、以前の活気が戻りつつあった。

新しい倉庫。

修復された岸壁。

そして、地中海各地から集まる商船。

だが、その平和な風景の裏で、元老院には不安が広がっていた。

原因は、ローマから届いた情報だった。

『ローマ軍、新たな軍団を編成』

『イタリア各地で兵士の訓練を再開』

『軍船の修理と建造を進める』

議場では、強硬派の議員が叫んでいた。

「ローマは再戦を準備している!」

「カルタゴも軍を増やすべきだ!」

「今度こそ、先に攻撃しなければならない!」

俺は、その議論を聞いていた。

そして、静かに立ち上がった。

「一つ、確認したいことがあります」

ハンノが顔を上げた。

「何だ?」

俺は答えた。

「ローマが軍備を増やしていることは事実です」

「そうだ!」

「ですが、それがカルタゴへの侵攻準備だと確認できていますか?」

議場が静まった。

一人の議員が言った。

「軍備を増やしているのだから、攻めてくるに決まっている!」

俺は首を振った。

「そうとは限りません」

「何だと!」

「ローマには、カルタゴ以外にも敵がいます」

俺は地図を広げた。

イタリア。

ヒスパニア。

ギリシア。

そして、マケドニア。

「ローマは、地中海の各地で問題を抱えています」

ハンノが頷いた。

「……確かに」

俺は続けた。

「軍備の増強が、すべてカルタゴ向けとは限らないんです」

別の議員が尋ねた。

「では、何もしないのか?」

俺は答えた。

「いいえ」

「……」

「カルタゴも、防衛力は維持するべきです」

議員たちが頷いた。

「ですが、無制限に軍を増やす必要はありません」

俺は、財政資料を広げた。

「軍を増やせば、兵士の給料が増えます」

「……」

「武器の維持費も増えます」

「……」

「軍馬の飼料も必要です」

俺は続けた。

「そして、その費用を負担するのは、カルタゴの商人と農民です」

ハンノが尋ねた。

「では、どの程度の軍備が必要だと思う?」

俺は答えた。

「まず、現在の軍の維持費を調べます」

「……」

「そのうえで、国境と港の防衛に必要な兵力を計算します」

「……」

「そして、緊急時に増員できる仕組みを整えます」

ハンニバルが立ち上がった。

「私は、その方針に賛成です」

議場が静まった。

「戦争中、我々は多くの兵士を失いました」

「……」

「だからこそ、平和な時代に無理な軍拡を行うべきではありません」

ハンニバルは続けた。

「ただし、備えは必要です」

ハスドルバルも意見を述べた。

「軍の訓練は継続するべきです」

「……」

「兵士の数だけを増やしても、訓練が不十分なら意味がありません」

俺は頷いた。

「そのとおりですね」

こうして、カルタゴは新しい防衛方針を決めた。

常備軍の規模を必要以上に増やさない。

港と国境の防衛を重視する。

兵士の訓練を継続する。

そして、戦時には予備兵を動員できる仕組みを整える。

数日後。

俺はハンニバルと、港の防衛施設を見ていた。

ハンニバルが言った。

「アドン」

「はい」

「あなたは、戦争を避けるために軍備を整えるという考えなのですね」

俺は頷いた。

「はい」

「矛盾しているようにも聞こえます」

俺は笑った。

「そうですね」

そして、続けた。

「でも、弱すぎれば攻め込まれます」

「……」

「強すぎれば、相手が警戒して軍備を増やします」

ハンニバルは頷いた。

「……難しい問題です」

俺は答えた。

「だから、軍備だけでは駄目なんです」

「では?」

「交易と外交も必要です」

ハンニバルは、海を見つめた。

「ローマとの関係を、さらに強くするのですか?」

俺は頷いた。

「はい」

「具体的には?」

俺は答えた。

「両国が戦争を始めたら、困る人を増やすんです」

ハンニバルは笑った。

「……商人らしい発想ですね」

俺も笑った。

「商人ですから」

その日の夕方。

俺はルキウスへ書簡を書いた。

『カルタゴとローマの交易を、さらに拡大したいと考えています』

『共同で港湾施設を整備し、航路の安全を確保する仕組みを作りませんか』

『戦争をすれば失うものが増える関係を、両国で築きたいのです』

書き終えると、俺は封をした。

メルカルが尋ねた。

「これで平和が続きますか?」

俺は少し考えた。

「絶対ではない」

「……」

「でも、戦争を始める前に考える理由は増える」

数週間後。

ローマから返書が届いた。

俺は封を開いた。

そこには、短い文章が書かれていた。

『提案に関心がある』

『ただし、ローマ元老院の承認が必要だ』

俺は苦笑した。

「……また元老院か」

メルカルが笑った。

「カルタゴでもローマでも、最後は元老院ですね」

俺は頷いた。

「本当にね」

だが、返書には続きがあった。

『なお、ローマでは東方の情勢が緊迫している』

『マケドニア王フィリッポス五世との対立が深まっている』

俺は、その一文を読んで手を止めた。

「……マケドニアか」

メルカルが尋ねた。

「何かあるんですか?」

俺は地図を広げた。

ギリシア。

マケドニア。

エーゲ海。

そして、ローマ。

本来の歴史では、ローマは第二次ポエニ戦争の終結後、東方へ勢力を拡大していく。

マケドニアとの戦争。

ギリシアへの介入。

そして、地中海世界の支配。

だが、この世界では、ローマはザマで敗北している。

それでも、東方への進出を諦めたわけではないらしい。

俺は呟いた。

「……歴史は、まだ動いている」

メルカルが尋ねた。

「また、何か起きるんですか?」

俺は答えた。

「起きるかもしれない」

そして、地図を見つめた。

「今度は、ギリシアが舞台になる可能性がある」

俺は、しばらく考えていた。

カルタゴは、ようやく平和を取り戻した。

だが、地中海全体が平和になったわけではない。

ローマ。

マケドニア。

ギリシアの都市国家。

そして、東方の大国。

それぞれが、勢力を広げようとしている。

俺は地図を閉じた。

「……さて」

メルカルが顔を上げた。

「何です?」

俺は笑った。

「次は、ギリシアの商人と話してみようか」

メルカルは頭を抱えた。

「……また仕事を増やすんですか?」

俺は頷いた。

「商売の機会だからね」

第二次ポエニ戦争は終わった。

カルタゴは独立を守り、復興を進めていた。

だが、地中海世界の争いは、まだ終わっていなかった。

そして、アドンの目は、次第にギリシアと東方へ向かい始めていた。

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