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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百二十九話 戦争から帰った兵士たちに仕事がないので、軍の解散より先に働く場所を作ることにした

紀元前199年。

カルタゴ郊外。

戦争が終わって二年。

街道には、帰還兵たちの姿が増えていた。

長年イタリアで戦ってきた兵士。

アフリカで戦った兵士。

負傷して軍を離れた兵士。

彼らは故郷へ戻ってきた。

だが、全員が元の生活に戻れたわけではなかった。

俺は、港の近くで一人の男と出会った。

年齢は四十歳ほど。

片足を引きずっている。

男は、荷運びの仕事を探していた。

「兵士だったんですか?」

俺が尋ねると、男は頷いた。

「ハンニバル将軍の軍にいた」

「イタリアですか?」

「ああ。

十五年以上な」

俺は驚いた。

「長いですね」

男は苦笑した。

「長すぎた」

そして、港を見つめた。

「帰ってきたら、親父は死んでいた。

畑は親戚に預けてあるが、すぐには戻せない」

「……」

「戦争中は槍を持てば仕事になった。

だが、平和になったら槍では飯が食えん」

俺は言葉に詰まった。

その日の夕方。

俺はメルカルと、帰還兵の状況を調べた。

農地を失った者。

家族を失った者。

負傷して重労働ができない者。

そして、長年の軍務で故郷に仕事がなくなった者。

メルカルが言った。

「……思ったより多いですね」

俺は頷いた。

「そうだね」

「どうします?」

俺は帳簿を見つめた。

そして、あることに気づいた。

「……仕事なら、あるんだよな」

メルカルが顔を上げた。

「どこに?」

「国中に」

俺は地図を広げた。

「戦争で壊れた道路」

「……」

「修理が必要な港」

「……」

「使われなくなった農地」

「……」

「それから、倉庫や水路」

メルカルは頷いた。

「確かに、工事はいくらでもあります」

「そうだ」

俺は答えた。

「問題は、仕事がないことじゃない」

「では?」

「仕事をする人と、仕事を必要としている場所がつながっていないことだ」

翌日。

俺はハンニバルへ提案した。

「帰還兵を公共工事に雇用したいと思います」

ハンニバルは頷いた。

「道路や港の整備ですか?」

「はい」

「費用は?」

俺は帳簿を差し出した。

「財政改革によって増えた収入の一部を使います」

ハンニバルは書類を確認した。

「……なるほど」

俺は続けた。

「ただし、軍隊のように命令するのではなく、仕事として雇用します」

「……」

「給料を払い、契約期間を決めます」

ハンニバルは頷いた。

「それがいいでしょう」

だが、問題があった。

元老院の一部が反対したのだ。

「帰還兵に金を払って道路を造らせるだと!」

「軍人を甘やかすつもりか!」

「国庫の無駄遣いだ!」

俺は、議場で説明した。

「道路が整備されれば、交易が増えます」

「……」

「港が修理されれば、船の出入りが増えます」

「……」

「水路が整えば、農地の生産性が上がります」

俺は続けた。

「つまり、これは単なる救済ではありません」

「では、何だ?」

「将来の税収を増やすための投資です」

ハンノが尋ねた。

「成果が出なかったらどうする?」

俺は答えた。

「工事ごとに予算と完成予定を決めます」

「……」

「完成後には、輸送時間や利用量を調べます」

ハンノは頷いた。

「……それなら、検証できるな」

こうして、帰還兵を対象とした公共工事が始まった。

最初の仕事は、カルタゴと内陸の農村を結ぶ道路の修復だった。

長年の戦争で傷んだ道。

雨が降ると荷車が動けなくなる場所。

橋が壊れた川。

帰還兵たちは、石を運び、道をならし、橋を修理した。

数か月後。

俺は工事現場を訪ねた。

そこには、以前港で出会った片足の帰還兵がいた。

男は、木製の椅子に座って帳簿をつけていた。

俺は驚いた。

「……仕事が見つかったんですね」

男は笑った。

「ああ」

「荷運びですか?」

「いや」

男は帳簿を掲げた。

「資材の管理だ」

俺は笑った。

「それはいいですね」

男は頷いた。

「軍隊で補給を担当していたからな。

槍を振るうより、こっちの方が向いているらしい」

俺は思わず笑った。

「……仲間ですね」

男も笑った。

工事が進むにつれて、道路の状態は改善した。

荷車の移動時間が短くなる。

農村から港へ、作物を運びやすくなる。

商人たちも、その変化に気づき始めた。

メルカルが報告した。

「アドン殿、内陸からの穀物輸送量が増えています」

俺は頷いた。

「道路の効果だね」

「しかも、輸送費も下がっています」

「いいことだ」

その夜。

俺はハンニバルと食事をしていた。

ハンニバルが言った。

「戦争中、兵士たちは国を守るために戦いました」

俺は頷いた。

「はい」

「今は、国を立て直すために働いている」

「そうですね」

ハンニバルは静かに笑った。

「……不思議なものです」

俺も笑った。

「剣を持たなくても、国の役に立てるんですよ」

ハンニバルは頷いた。

「そのとおりですね」

だが、カルタゴの復興が進む一方で、別の国でも大きな変化が起きていた。

ローマだった。

ザマでの敗北と和平によって、ローマは海外への拡張を一時的に抑え、国内の再建へ力を注ぎ始めていた。

そして、ローマ元老院では、ある議論が始まっていた。

『カルタゴとの和平を、いつまで守るべきか』

俺は、その報告を受け取った。

「……やっぱり、来たか」

メルカルが尋ねた。

「また戦争ですか?」

俺は首を振った。

「まだ分からない」

そして、地図を見つめた。

「でも、平和を守る仕組みを、もっと強くしないといけないな」

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