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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百二十五話 カルタゴとローマが和平を結んだので、第二次ポエニ戦争を終わらせた

紀元前201年。

シチリア島。

カルタゴとローマの正式な和平交渉が始まった。

双方の使節団。

軍の代表。

商人代表。

そして、記録係。

長い机の上には、条約案が並べられていた。

俺は、その席に座っていた。

隣にはメルカル。

向かいにはルキウス。

そして、双方の代表者たち。

会談は、最初から難航した。

ローマ側が求めたのは、安全保障だった。

カルタゴが再びイタリアへ侵攻しないこと。

カルタゴ海軍がローマの商船を攻撃しないこと。

そして、ローマの同盟都市を脅かさないこと。

カルタゴ側も、同じような条件を求めた。

ローマ軍がアフリカへ侵攻しないこと。

カルタゴの商船を拿捕しないこと。

そして、カルタゴの同盟勢力への干渉を制限すること。

俺は、双方の主張を聞いていた。

「……結局、同じことを言ってるんだよな」

メルカルが小声で尋ねた。

「何がです?」

「自分たちの国を守りたいってこと」

メルカルは頷いた。

「……そうですね」

三日目。

最大の問題が持ち上がった。

ヒスパニアの扱いだった。

ローマは、戦争中に獲得した支配地域を維持したい。

カルタゴは、かつての権益を完全に失うことを認めたくない。

議論は激しくなった。

「ヒスパニアは、ローマ軍が戦って獲得した土地だ!」

「カルタゴも、長年交易と開発を行ってきた!」

「では、再び戦うのか!」

俺は頭を抱えた。

「……困ったな」

休憩時間。

俺はルキウスと話していた。

「ヒスパニアの問題が解決しません」

ルキウスが頷いた。

「当然だろう」

「どうすればいいと思います?」

「私に聞くな。

私は商人だ」

俺は笑った。

「俺も商人ですよ」

ルキウスも笑った。

「……そうだったな」

俺は地図を広げた。

そして、しばらく考えた。

「……領土を全部決めようとするから、揉めるんだ」

ルキウスが尋ねた。

「どういう意味だ?」

「まず、現在の支配地域を暫定的に認めませんか?」

「……」

「そのうえで、交易権と港の利用について別に協議する」

ルキウスは考え込んだ。

「領土問題と商業問題を分けるのか」

「はい」

「……なるほど」

俺は続けた。

「さらに、現地の都市や部族の権利も確認する必要があります」

ルキウスが眉をひそめた。

「なぜ?」

「ヒスパニアに住んでいる人たちは、ローマ人でもカルタゴ人でもない場合が多いからです」

「……」

「その人たちの土地を、勝手に分け合うわけにはいきません」

ルキウスは、しばらく黙っていた。

そして頷いた。

「……確かにな」

交渉は、さらに続いた。

最終的に、双方は妥協案に合意した。

現在の支配地域を暫定的に承認する。

ヒスパニアの諸都市と部族の既存の協定を尊重する。

交易港の利用について、別途協議する。

そして、領土紛争が発生した場合は、まず外交交渉を行う。

完全な解決ではなかった。

だが、戦争を再開しないための仕組みにはなった。

続いて、ヌミディアの問題が議論された。

俺は、マシニッサとシュファクスの協定について説明した。

「ヌミディアの諸勢力については、彼ら自身の合意を尊重する必要があります」

ローマ側の代表が尋ねた。

「カルタゴの支配下に置くつもりはないのか?」

俺は首を振った。

「ありません」

「……」

「少なくとも、彼らの意思を無視して軍事力で支配するべきではありません」

カルタゴ側の代表も頷いた。

「その方針で協議しています」

長い交渉の末。

ついに、条約案が完成した。

俺は、その文書を見つめた。

そこには、長年の戦争を終わらせるための条件が記されていた。

相互の侵攻停止。

捕虜交換。

商船の安全。

交易再開。

係争地の協議。

そして、相互の安全保障。

俺は、深く息を吐いた。

「……できた」

数日後。

カルタゴとローマの代表者が、正式に条約へ署名した。

紀元前201年。

第二次ポエニ戦争。

終結。

俺は、その瞬間を見つめていた。

長かった。

本当に、長かった。

条約が締結されたあと。

俺は港へ出た。

海は穏やかだった。

商船が浮かんでいる。

水夫たちが荷物を積み込んでいる。

そして、遠くでは子供たちが遊んでいた。

メルカルが隣に立った。

「……終わりましたね」

俺は頷いた。

「……ああ」

「本当に、終わったんですよね?」

俺は笑った。

「条約が守られる限りはね」

メルカルは苦笑した。

「最後まで慎重ですね」

「商人だからね」

数週間後。

カルタゴ。

和平の知らせが届くと、街中が歓声に包まれた。

港では鐘が鳴らされ、人々が抱き合っていた。

長い間、戦場へ行っていた兵士たちが帰ってくる。

家族が再会する。

商人が新しい航路を計画する。

そして、農民が畑へ戻る。

俺は、その光景を見つめていた。

その日の夕方。

ハンニバルが俺のところへやってきた。

「アドン」

俺は振り返った。

「将軍」

ハンニバルは笑った。

「もう、将軍と呼ばなくても構いませんよ」

俺は驚いた。

「……え?」

「戦争は終わりました」

「……」

「これからは、国を立て直す仕事をしなければなりません」

俺は笑った。

「それも、大変そうですね」

ハンニバルは頷いた。

「ええ」

そして、少し真剣な顔になった。

「あなたにも、手伝ってもらいたい」

俺は目を丸くした。

「……また仕事ですか?」

ハンニバルは笑った。

「もちろん」

メルカルが横から口を挟んだ。

「アドン殿は、もう十分働きましたよ!」

ハンニバルが笑った。

「そうですね」

メルカルは続けた。

「戦争が終わったら休むと言っていたんです!」

俺は顔をしかめた。

「……言ったかな?」

「言いました!」

ハンニバルは、楽しそうに笑った。

「では、少し休んでからにしましょう」

その夜。

俺は、自分の倉庫へ戻った。

机の上には、古い帳簿が残っていた。

戦争が始まる前の取引記録。

最初に集めた食料。

アルプス越えのために準備した物資。

イタリアの同盟都市との契約。

ヒスパニアの輸送記録。

そして、ザマの戦いの補給計画。

俺は、それらを一冊ずつ手に取った。

どれも、簡単な仕事ではなかった。

失敗もあった。

失ったものも多かった。

だが。

俺は、最後の帳簿を閉じた。

そして、静かに呟いた。

「……カルタゴは、生き残った」

本来の歴史では、カルタゴは第二次ポエニ戦争に敗北する。

その後、ローマの圧力を受け続ける。

そして、紀元前146年。

第三次ポエニ戦争によって滅亡する。

だが。

この世界では違う。

ザマで勝った。

和平を結んだ。

そして、カルタゴは独立を守った。

俺は窓の外を見た。

夜の港には、船の灯りが並んでいた。

「……これで、未来は変わった」

だが。

その未来が、これからどうなるのかは分からない。

ローマは、まだ強大な国だ。

カルタゴにも、問題は山ほど残っている。

そして、平和を守ることは、戦争に勝つことと同じくらい難しい。

俺は小さく笑った。

「……まあ、いいか」

明日から、また商売を始めよう。

今度は、軍隊のためではなく。

人々の暮らしのために。

第二次ポエニ戦争は、カルタゴの勝利と和平によって終結した。

だが、アドンの物語は、まだ終わらない。

戦争によって変えた歴史を、今度は平和と交易によって育てていくのだから。

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