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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百二十三話 ローマ元老院が再戦を準備しているので、ハンニバルがイタリアへ攻め込まないと宣言した

紀元前201年。

カルタゴ。

ローマ元老院が新たな軍団の編成を承認したという知らせは、カルタゴにも衝撃を与えた。

元老院では、再び強硬論が噴き出した。

「ローマは和平を結ぶつもりがない!」

「ならば、こちらも軍を増強すべきだ!」

「ザマで勝った今こそ、イタリアへ再侵攻するべきだ!」

俺は議場の後方で、その議論を聞いていた。

ハンノが立ち上がった。

「諸君!」

議場が静まった。

「戦争を続ければ、カルタゴの財政はさらに悪化する」

「だが、ローマが攻めてくるならどうする!」

「防衛は必要だ!」

「ならば、先に攻めるべきだ!」

議論は堂々巡りになっていた。

俺は、隣にいたメルカルへ小声で言った。

「……これ、ローマの元老院でも同じことを言ってそうだな」

メルカルが苦笑した。

「たぶん、そうでしょうね」

そのとき。

議場の扉が開いた。

ハンニバルが入ってきた。

議員たちが一斉に立ち上がる。

ザマの勝者。

ローマを打ち破った将軍。

その男が、議場の中央へ進んだ。

ハンニバルは静かに口を開いた。

「私は、イタリアへ再侵攻するつもりはありません」

議場がざわめいた。

「何だと!」

「ローマを倒す機会ではないのか!」

ハンニバルは首を振った。

「私は、長い間イタリアで戦いました」

「……」

「ローマ軍を何度も破りました」

「……」

「しかし、ローマという国は倒れませんでした」

議場が静まり返った。

ハンニバルは続けた。

「今、我々がイタリアへ攻め込めば、ローマは再び国を挙げて戦うでしょう」

「……」

「そして、カルタゴもまた、多くの兵士を失います」

一人の議員が尋ねた。

「では、ザマの勝利を無駄にするのか!」

ハンニバルは、その議員を見た。

「勝利とは、敵を滅ぼすことだけではありません」

議員は黙った。

「我々の国を守り、戦争を終わらせることも勝利です」

俺は、その言葉を聞いて胸が熱くなった。

本来の歴史では、ザマの敗北によってカルタゴは厳しい和平条件を受け入れる。

そして、長い年月の末に滅亡する。

だが、今回は違う。

カルタゴは勝った。

だからこそ、何をするかを選べる。

俺は立ち上がった。

「ハンニバル将軍の意見に賛成です」

ハンノが尋ねた。

「アドン、何か提案があるのか?」

「はい」

俺は書簡を掲げた。

「ローマの商人代表と、交易再開に関する共同提案をまとめました」

議場がざわめいた。

「ローマの商人と?」

「敵国の商人ではないか!」

俺は答えた。

「だからこそ意味があります」

俺は共同提案の内容を説明した。

商船の安全。

港での検査規則。

海賊対策。

そして、戦争が終わった場合の交易再開。

ハンノは書簡を読み、しばらく考えていた。

「……ローマの商人も、和平を望んでいるのか」

「少なくとも、交易を再開したいと考えています」

「元老院を動かせるか?」

「分かりません」

俺は答えた。

「ですが、ローマ国内にも和平によって利益を得る人々がいます」

議論の末、カルタゴ元老院は新たな方針を決めた。

防衛のための軍備は維持する。

だが、ローマ本土への侵攻は行わない。

和平交渉を継続する。

そして、正式な使節団をローマへ派遣する。

俺は深く息を吐いた。

「……よし」

数日後。

俺はハンニバルと港を歩いていた。

ハンニバルが言った。

「アドン」

「はい」

「あなたは、戦争が始まる前から、商売のことばかり考えていましたね」

俺は笑った。

「そうでしたっけ?」

「そうでした」

ハンニバルも笑った。

「戦争中も、食料と輸送の話ばかりでした」

「……それは否定できません」

「そして、戦争が終わりそうになると、また商売の話です」

俺は肩をすくめた。

「商人ですから」

ハンニバルは、海を見つめた。

「……私は、長い間、ローマを倒すことだけを考えていました」

俺は黙って聞いていた。

「しかし、ザマで勝ったあと、ようやく考えるようになりました」

「何をです?」

「戦争に勝ったあと、何を残すべきなのかを」

俺は頷いた。

「……そうですね」

ハンニバルは、港の商船を見つめた。

「戦争が終われば、兵士たちは家へ帰れる」

「はい」

「農民は畑を耕せる」

「はい」

「商人は、また海へ出られる」

俺は笑った。

「それが一番です」

ハンニバルも笑った。

「……あなたらしい答えですね」

その夜。

俺はローマへ向かう使節団の準備を始めた。

正式な外交使節。

商人代表。

通訳。

記録係。

そして、護衛。

メルカルが尋ねた。

「アドン殿も行くんですか?」

俺は頷いた。

「もちろん」

「ローマですよ?」

「知ってる」

「敵の首都ですよ?」

「それも知ってる」

メルカルはため息をついた。

「……また危険な仕事ですね」

俺は笑った。

「でも、これが最後の仕事になるかもしれない」

数日後。

使節団を乗せた船が、カルタゴの港を出航した。

俺は甲板に立ち、遠ざかる街を見つめていた。

長い戦争。

アルプス越え。

カンナエ。

ヒスパニア。

メタウルス。

そして、ザマ。

そのすべてが、頭の中を駆け巡った。

俺は呟いた。

「……今度こそ、終わらせよう」

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