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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百八話 ハンニバルを帰国させるかで元老院が揉めたので、兄弟を別々に動かさないよう説得した

紀元前203年。

カルタゴ元老院。

「ハンニバルを呼び戻すべきだ!」

議場に大きな声が響いた。

「ローマ軍がアフリカへ侵攻している!」

「本国を守らずに、イタリアで戦い続けるつもりか!」

俺は、その議論を聞いていた。

本来の歴史でも、ハンニバルはアフリカへ呼び戻される。

そして、ザマの戦いへ向かう。

だが、今回は状況が違う。

ハスドルバルは生きている。

二人の兄弟はイタリアで合流している。

そして、カルタゴ軍には、まだ一定の戦力が残っていた。

俺は立ち上がった。

「帰国には賛成です」

議場が静かになった。

ハンノが尋ねた。

「お前もそう考えるのか?」

「はい」

俺は答えた。

「ですが、条件があります」

「何だ?」

「ハンニバルだけを呼び戻さないことです」

議員たちが顔を見合わせた。

「どういう意味だ?」

俺は答えた。

「ハスドルバル軍も、可能な限り一緒に帰国させたいんです」

議場がざわめいた。

「イタリアの軍をすべて引き揚げるのか!」

「それでは、長年の戦いが無駄になる!」

俺は首を振った。

「無駄にはなりません」

そして、続けた。

「ハンニバルがイタリアで戦ったことで、ローマは長年、本土に大軍を置かなければなりませんでした」

「……」

「しかし、今はローマ軍がアフリカへ来ています」

俺は地図を広げた。

「戦場が移ったんです」

ハンノが尋ねた。

「イタリアの同盟都市はどうする?」

俺は答えた。

「撤退前に、できる限り安全な条件を整える必要があります」

「……」

「そして、現地に残る兵士を見捨てないことです」

俺は続けた。

「最も避けたいのは、ハンニバルだけを帰国させ、ハスドルバル軍をイタリアに孤立させることです」

議員たちは黙った。

「二つの軍を別々に動かせば、ローマ軍に各個撃破される危険があります」

ハンノは考え込んだ。

「……確かにな」

元老院は長時間議論した。

そして、最終的に決定した。

ハンニバル軍とハスドルバル軍の帰国を準備する。

ただし、海上輸送の安全を確認すること。

イタリアに残る同盟勢力の処遇について、可能な限り交渉すること。

そして、帰国後は両軍を再編し、アフリカ防衛に投入すること。

俺は深く息を吐いた。

「……よし」

数週間後。

イタリア。

ハンニバルの陣営。

ハンニバルは、元老院からの書簡を読んでいた。

隣にはハスドルバルがいた。

「兄上」

ハスドルバルが尋ねた。

「帰国するのですか?」

ハンニバルは頷いた。

「そのようだ」

ハスドルバルは黙った。

「……長かったですね」

ハンニバルは地図を見つめた。

イタリア。

アルプス。

そして、ローマ。

「私は、この土地でローマを倒すつもりだった」

ハスドルバルは頷いた。

「知っています」

「だが、ローマは倒れなかった」

「……」

「何度敗れても、兵士を集め、軍を立て直した」

ハンニバルは静かに続けた。

「敵ながら、恐るべき国だ」

ハスドルバルが尋ねた。

「帰国すれば、勝てますか?」

ハンニバルは、すぐには答えなかった。

そして言った。

「分からない」

ハスドルバルは兄を見た。

「……」

「だが、今度は本国で戦える」

ハンニバルは続けた。

「そして、お前もいる」

ハスドルバルは笑った。

「はい」

そのころ。

俺は、カルタゴの港で輸送船の準備を進めていた。

軍船。

商船。

食料。

水。

馬の輸送設備。

そして、負傷者を受け入れる場所。

メルカルが帳簿を見ながら言った。

「……大変な数ですね」

俺は頷いた。

「そうだね」

「全部、運べるんですか?」

「一度には無理だ」

「では?」

「何回かに分ける」

メルカルは顔をしかめた。

「ローマ海軍に狙われませんか?」

「狙われるだろうね」

俺は答えた。

「だから、護衛と航路の情報が必要なんだ」

アドヘルバルが港へやってきた。

「また船の仕事か」

俺は笑った。

「はい」

「今度は何を運ぶ?」

俺は答えた。

「ハンニバル将軍とハスドルバル将軍の軍です」

アドヘルバルは目を見開いた。

「……大仕事だな」

「ええ」

俺は海を見つめた。

「失敗できません」

数か月後。

最初の輸送船団が、イタリアから出航した。

俺はカルタゴの港で、その到着を待っていた。

そして、ある日の朝。

見張りが叫んだ。

「船影!」

俺は顔を上げた。

「……来たか!」

港の向こうに、カルタゴの旗を掲げた船が見えた。

一隻。

二隻。

そして、さらにその後ろ。

俺は胸が熱くなった。

長い戦争を戦い抜いた兵士たちが、ようやく故郷へ帰ってくる。

船が接岸した。

最初に降りてきたのは、疲れ切った兵士たちだった。

傷のある者。

足を引きずる者。

そして、長い間故郷を離れていた者たち。

港には、家族が集まっていた。

「お父さん!」

「帰ってきた!」

「無事だったのね!」

俺は、その光景を見つめていた。

メルカルが静かに言った。

「……戦争が終わったみたいですね」

俺は首を振った。

「まだだよ」

「……」

「でも、終わらせたいね」

その日の夕方。

最後の船から、ハンニバルが降りてきた。

そして、その隣にはハスドルバルがいた。

二人の兄弟が、並んでカルタゴの港に立った。

俺は駆け寄った。

「お帰りなさい!」

ハンニバルは笑った。

「ただいま戻りました」

ハスドルバルも頷いた。

「アドン、世話になったな」

俺は首を振った。

「まだ、これからですよ」

ハンニバルは港を見渡した。

そして、静かに言った。

「……故郷か」

長い間、イタリアで戦い続けてきた男。

ローマを恐怖に陥れた将軍。

そのハンニバルが、ついにカルタゴへ帰ってきた。

だが。

彼が帰ってきた理由は、勝利ではなかった。

ローマ軍が、アフリカへ攻め込んできたからだ。

その夜。

俺はハンニバル、ハスドルバル、メルカルとともに地図を囲んだ。

ハンニバルが尋ねた。

「スキピオの軍は、どこにいる?」

俺は地図を指差した。

「現在、この地域を中心に行動しています」

ハスドルバルが尋ねた。

「ヌミディアは?」

俺は答えた。

「マシニッサとは相互不可侵協定を結んでいます」

ハンニバルが顔を上げた。

「……それは大きいですね」

俺は頷いた。

「はい」

そして、続けた。

「ただし、シュファクスの動きはまだ不安定です」

ハンニバルは地図を見つめた。

しばらくして、静かに言った。

「……では、次の戦いはアフリカですね」

俺は頷いた。

「はい」

ハスドルバルが尋ねた。

「決戦になるのか?」

俺は答えた。

「可能性は高いと思います」

ハンニバルは俺を見た。

「アドン」

「はい」

「あなたは、何か知っているようですね」

俺は息を呑んだ。

ハンニバルは続けた。

「以前から、ザマという地名を気にしている」

俺は黙った。

「なぜです?」

俺は地図を見つめた。

ザマ。

本来の歴史では、紀元前202年。

ハンニバルとスキピオが戦う場所。

そして、カルタゴが敗北する場所。

俺はゆっくり口を開いた。

「……その場所で、大きな戦いが起きる気がするんです」

ハンニバルは静かに頷いた。

「なるほど」

そして言った。

「では、その場所についても調べておきましょう」

俺は顔を上げた。

「……はい」

こうして、カルタゴは新しい戦いの準備を始めた。

ハンニバル。

ハスドルバル。

マシニッサ。

シュファクス。

そして、スキピオ。

すべての勢力が、アフリカに集まりつつあった。

俺は地図を見つめた。

「……いよいよ、ザマか」

だがそのときメルカルが新しい報告を持ってきた。

「アドン殿!」

俺は顔を上げた。

「どうした?」

メルカルは答えた。

「スキピオ軍が、カルタゴ軍との決戦に備えて移動を始めたようです!」

俺は立ち上がった。

「……もう動いたのか」

メルカルが頷いた。

「はい!」

俺はハンニバルを見た。

ハンニバルも、静かに頷いた。

「では、我々も準備しましょう」

紀元前203年。

ハンニバルとハスドルバルは、ついにアフリカへ帰還した。

そして、カルタゴとローマの運命を決める戦いが、少しずつ近づいていた。

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