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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百六話 スキピオが農村を攻め始めたので、住民を守りながら敵の補給を止めることにした

紀元前204年。

カルタゴ北方。

収穫前の麦畑が、風に揺れていた。

だが、その風景は穏やかではなかった。

遠くの丘には、ローマ軍の偵察騎兵が見える。

農民たちは畑仕事を中断し、村の入口へ集まっていた。

俺は村長に尋ねた。

「収穫まで、あとどのくらいですか?」

「十日ほどだ」

村長は苦々しく答えた。

「だが、ローマ軍が来れば全部持っていかれる」

俺は麦畑を見つめた。

まだ青みの残る穂。

刈り取るには早い。

「……困ったな」

メルカルが小声で言った。

「焼いてしまえば、ローマ軍には渡りません」

俺は首を振った。

「それでは村の人たちも飢える」

「では、どうするんです?」

俺は村長に向き直った。

「収穫を早められる場所だけ先に刈りましょう」

村長は眉をひそめた。

「まだ十分に実っていないぞ」

「分かっています」

俺は答えた。

「でも、全部失うよりはいい」

そして続けた。

「残りの畑は、収穫まで守れるかどうか軍と相談します」

その日の午後。

俺はカルタゴ軍の指揮官と会った。

「農村の防衛に兵を回していただけませんか?」

指揮官は首を振った。

「全村を守る兵力はない」

「では、重要な村だけでも」

「それでも難しい」

俺は地図を広げた。

「この三つの村を見てください」

指揮官が覗き込んだ。

「川沿いの村か」

「はい。

ここを押さえられると、ローマ軍は内陸へ食料を運びやすくなります」

指揮官は考え込んだ。

「つまり、村を守ることが敵の補給妨害にもなる?」

「そうです」

「……なるほど」

俺は続けた。

「すべての村を守れなくても、輸送路の要所だけは守る価値があります」

指揮官は頷いた。

「兵を出そう。

ただし、長くは守れない」

「十分です」

俺は頭を下げた。

「その間に住民を避難させます」

数日後。

ローマ軍の先遣隊が、川沿いの村へ接近した。

カルタゴ軍は、村の外に陣地を築いていた。

ローマ軍は正面攻撃を避け、周囲の道路を調べ始めた。

俺はその報告を受け取った。

「……スキピオらしいな」

メルカルが尋ねた。

「攻めてこないんですか?」

「守りの固い場所を無理に攻める必要がないからね」

俺は地図を指差した。

「敵は、別の道を探している」

翌朝。

予想どおり、ローマ軍の一部が南側へ回り込んだ。

カルタゴ軍は、その動きに対応するため兵を動かした。

その間に、村の住民は避難を始めた。

荷車には麦袋。

家畜を引く老人。

母親に抱かれた子供。

俺は道端に立ち、避難の列を見守っていた。

一人の少女が、俺に尋ねた。

「おじさん、また家に帰れる?」

俺は言葉に詰まった。

「……帰れるように、みんなで頑張ってる」

少女は頷いた。

「じゃあ、畑も残してね」

俺は笑おうとした。

だが、うまく笑えなかった。

夕方。

ローマ軍が村へ入った。

カルタゴ軍は、住民の避難が終わったことを確認して撤退した。

村は奪われた。

収穫できなかった麦も残された。

俺は丘の上から、その光景を見つめていた。

メルカルが言った。

「……負けましたね」

俺は頷いた。

「そうだね」

「でも、住民は助かりました」

「……ああ」

俺は、避難していく荷車を見た。

戦争に勝つための方法はいくつもある。

だが、勝ったあとに守るべき人々がいなくなっていたら、何の意味があるのだろう。

俺は拳を握った。

「……次は、村を取り戻そう」

そのころ。

ローマ軍の陣営。

スキピオは、村の占領報告を受けていた。

将校が言った。

「食料は期待したほど残っていません」

スキピオは頷いた。

「住民を逃がしたのだろう」

「追撃しますか?」

スキピオは首を振った。

「避難民を追っても、軍の目的は達成できない」

そして地図を見た。

「カルタゴ軍の補給拠点を探せ」

スキピオは理解していた。

カルタゴ側には、以前とは違う補給体制がある。

そして、その仕組みを壊さなければ、長期戦になる。

「……敵にも、優秀な補給担当者がいるようだな」

スキピオは小さく呟いた。

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