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転生したらカルタゴ人だったので、ハンニバルを勝たせてローマに勝利します  作者: レモンティー


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第百二話 ヌミディアの独立を認めたくない元老院に、戦争に負けた場合の損失を計算して見せた

紀元前205年。

カルタゴ。

元老院の議場では、怒号が飛び交っていた。

「ヌミディアの独立を認めるだと!」

「そんなことをすれば、カルタゴの権威が失われる!」

「マシニッサは我々を脅しているのだ!」

俺は、議員たちの議論が一段落するのを待っていた。

だが、いつまで経っても終わらない。

とうとう俺は立ち上がった。

「一つ、資料を見ていただけませんか?」

ハンノが眉をひそめた。

「また帳簿か?」

「はい」

議場のあちこちからため息が聞こえた。

俺は気にせず、木板を机に並べた。

「まず、ヌミディア騎兵を敵に回した場合です」

俺は説明した。

「騎兵の数だけが問題ではありません。

彼らはアフリカの地形を知っています」

議員たちが黙った。

「水場の位置、季節ごとの移動経路、放牧地、夜間に軍が通れる道。

ローマ軍は、そうした情報を手に入れることになります」

ハンノが腕を組んだ。

「それがどうした?」

俺は答えた。

「カルタゴ軍がアフリカで戦う場合、敵の騎兵に補給路を脅かされます」

さらに別の木板を示した。

「食料輸送に必要な護衛兵が増えます。

軍馬も増やさなければなりません。

敵の騎兵に対抗するため、歩兵の行動も制限されます」

俺は議員たちを見回した。

「つまり、ヌミディアを敵に回すということは、騎兵を失うだけではないんです」

「……」

「ローマ軍に、アフリカで戦うための目と足を与えることになります。」

議場が静かになった。

俺は続けた。

「では、ヌミディアの独立を認めた場合はどうでしょう?」

ハンノが答えた。

「将来、カルタゴの脅威になる」

「はい。

その可能性はあります」

俺は頷いた。

「ですが、条約で国境を定め、相互不可侵を約束することはできます」

「約束が守られる保証はない」

「そのとおりです」

俺は答えた。

「でも、約束しなければ、最初から敵になる可能性が高い」

ハンノは黙った。

俺は最後の木板を置いた。

そこには、カルタゴの現在の戦費が記されていた。

兵士の給与。

軍船の維持費。

食料。

武器。

負傷者への補償。

そして、失われた交易収入。

「我々は、すでに長い戦争で莫大な費用を使っています」

俺は言った。

「今から新しい敵を増やす余裕があるでしょうか?」

誰も答えなかった。

俺は静かに続けた。

「ヌミディアの独立を認めることは、確かに譲歩です」

「……」

「ですが、戦争に敗れれば、もっと多くのものを失うかもしれません」

長い沈黙のあと。

ハンノが口を開いた。

「アドン」

「はい」

「お前の言うことは分かった」

俺は顔を上げた。

「では……」

「だが、条件がある」

「何でしょう?」

「ヌミディアの統一を認めるとしても、カルタゴの領土を勝手に奪うことは許さない」

俺は頷いた。

「当然です」

「国境を定めること」

「はい」

「そして、ローマ軍がアフリカへ侵攻した場合、少なくともカルタゴを攻撃しないこと」

俺は考えた。

「軍事協力までは求めないのですか?」

ハンノは首を振った。

「最初から要求しすぎれば、交渉は壊れる」

俺は思わず笑った。

「……ハンノ殿も、商売が上手くなりましたね」

「馬鹿者。

政治だ」

議場に小さな笑いが起きた。

その日の夕方。

カルタゴ元老院は、歴史的な決定を下した。

ヌミディア諸部族の自治を正式に承認する。

マシニッサが進める統一について、平和的な協議を通じて承認する方針を示す。

国境と交易条件を定めるため、共同委員会を設置する。

そして、相互不可侵条約を締結する。

俺は議場を出ると、深く息を吐いた。

メルカルが待っていた。

「どうでした?」

俺は答えた。

「通ったよ」

「本当ですか!」

「ああ」

メルカルは笑った。

「よかったですね」

俺も笑った。

だが、すぐに表情を戻した。

「まだ終わってない」

「……?」

「マシニッサが受け入れるとは限らない」

俺は西の空を見つめた。

三十日の期限まで、残りわずかだった。

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