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8.初依頼1(カレーの時間?)

買い物の後、大森林の町ギルドへ爺ちゃんと顔を出した。

中に入ると多くの冒険者でごった返しており大声で騒いでいる。

何か問題が起こっているみたいだった。

とりあえず爺ちゃんと受付へ行き、ギルド証を出した。

受付には、何となく旅立ちの町のギルド嬢のレイさんと顔つきが

似ている感じの人で栗色のショートカットの髪で青い瞳の女性だった。

「ああノリオ様、それとこの男の子はアツシさんですか?。

 私は大森林の町ギルドの受付のレイです。よろしくお願いします」

「ああわしの孫じゃ。このたび魔物使いで冒険者デビューじゃ」

「えっ魔物使い?それもA級?・・・すごいですね。

 さすがノリオ様のお孫さんです。

 このギルド証は旅立ちの町で作成されたのですね。

 レイ姉さんは元気でしたか?」

「レイさんとはお知り合いかな?」

「ええ従妹なんです。以前は姉さんと冒険に行ったものです」

「私は弓で姉さんは剣で、それはそれは強かったですよ。

 もちろん私の弓も結構な威力ですよ。

 ・・・ちょっとそこ喧嘩しない。

 するなら外でやってよ。聞こえないの?

喧嘩始めたら耳に入らないから仕方ないわね。はぁ・・・」

アスカさんは、受付のテーブルの下から弓を出すと

掴み合いの喧嘩している二人へ弓矢を一緒に二本構えて放った。

その矢は、二人のお尻へ『ブスッ』と当たる。

「イテー」「ギャー」と悲鳴が響く。

「ねぇ、いつも喧嘩しないで!って言ってるでしょ?

 今度はこっちの方(鏃(やじり)付き)になるわよ」

「わかったよ。もう止めるよ。

 本当にアスカさんは怖いなぁ。

 旅立ちの町のレイさんはあんなにお淑やかなのに

 従妹のアスカさんときたら、らんぼ・・・」

「私がなんだってぇ? ねぇ今度は眉間に一発欲しい?」

「「いえ、何でもありません。ごめんなさい」」

喧嘩していた二人は、お尻を擦りながら

仲良く肩を組んでしょんぼりして外へ出て行った。


「それで何があったんじゃ?」

「実はですね。大森林で魔物が大量発生してるって情報があったんです。

 みんな、そんなにたくさんの魔物は無理だ。どうしようって・・・

 あの大森林の中にはたくさんの食材があるからみんなが困るんです」

「そう・・・じゃあ、わしらで討伐といこうか。アツシよ」

「そうだね。爺ちゃんがいるし安心だね」

「魔物なんぞ、火球や氷結一発で終わりじゃ」

「あのー、あの森の木や花は傷付けないで下さいね。

 少しならいいんですけど・・・後の回復が大変ですから」

「そうか・・・ふーん、ちまちま一匹ずつ狩るしかないかのぅ」

「爺ちゃん、大森林はすごく食材が豊富らしいんだ。

 森って元に戻るのは時間がかかるからなるべく傷付けない方がいいよ」

「そうじゃなぁ。アツシがそう言うならそうかのぅ」

「爺ちゃん、とりあえず行ってみて考えようよ」

「そうじゃな。先ずは行ってくるぞい」

「はい、ノリオ様、アツシ様ありがとうございます。

 ではこれが依頼票です。みんなのためによろしくお願いします」

「わかったぞい」

「はいがんばります」

爺ちゃんと二人でギルドを出発した。

受付のアスカ嬢が、僕達が見えなくなるまで手を振っている。


「爺ちゃん、初めてのクエストだね。僕、がんばるよ」

「それは楽しみじゃ」

「先ずはホークで偵察だね。ホーク頼むね」

『はい、ご主人様、承りました』

ホークが影から飛び出して、5体へ別れて偵察へ向かった。

大森林の手前の草原で太陽の光で『キラリ』と光る何かがいる。

よく見ると濃い灰色の『メタルスライム』だった。

「爺ちゃん、メタルスライムだよ」

「ほう、珍しいのぅ。今まで鉱山でしか見たことがないが、

 あいつはすぐに逃げるし、すごくすばしっこいんじゃ。

 その上、とても硬くて龍の一撃でも傷つかないんじゃ」

「すごいなぁ。そういえばゲームでもなかなか出なかったもんね」

スラちゃんが影から出て行って、メタルスライムに近づいていく。

そして2匹で何やら話をしている。

しばらくしてスラちゃんが戻って来て

『ご主人様。あのメタルスライムさん、魔物から逃げすぎて

 いまどこにいるかわからなくて迷子になったらしいです』

「そうなんだ。それは困ってるだろうね。

 じゃあ一緒に行こうかって聞いてよ。

 どこか知らないけど君の故郷まで送るよって」

スラちゃんがピョンピョン跳ねていき、2匹で話し合ってる。

2匹が一緒に近づいて来る。

『ご主人様、彼が一緒に連れて行って欲しいって言ってます』

「じゃあ、僕の帽子の中にでも乗っていく?」

 メタルスライムがおずおずと近づいてきている。

 なぜかメタルスライムの上に魔法陣が浮かんでいる。

「えっ?仲間にはしない方がいいんじゃないの?

 故郷へ帰るまでのことなんだから・・・」

『その時には、契約解除で仲間を外してくれればいいって』

「わかったよ。じゃあ仲間をお願いしますね」

メタルスライムの魔法陣の真ん中に黒い粒子が浮いている。

手のひらをかざして、それらを吸収する。

「じゃあ名前は、メタルスライムだから名前はハガネね。

 君、黒光りして強そうじゃん?だからね」

『ハガネという立派な名前、ありがとうございます。

 私はご主人様の表面に常にいますし、温度調節も汚れも取ります。

 それ以外大した役には立てませんが、防御力には自信があります』

「ハガネ、よろしくね。僕はまだまだ弱いから守ってね」

『はい、全力を上げてお守りしますからよろしくお願いします』

「爺ちゃん、メタルスライムの名前はハガネにしたよ。

 ハガネの故郷まで一緒に・・・って思ってる」

「とうとうメタルスライムまで仲間に・・・

 まぁこれから大森林へ入るからちょうどいいかのう」


ホークから連絡があった。

大森林の中に洞窟があって、そこから魔物たちが湧いているらしい。

魔物討伐の前に腹ごしらえの時間だった。

今朝に買い込んだたっぷりの野菜がある。

昼ご飯は『ミミ―肉のカレー』にした。

カレールーは元の世界で買ってあるから

ミミ―肉と野菜を一緒に煮込めばいいだけだった。

大きな鍋や俎板を指輪から出して、爺ちゃんが持っている竈を頼んだ。

爺ちゃんはいつもの様に木の妖精に焚き木を集めて貰い、

火の妖精に点火して貰い、水の妖精に鍋へ水を半分だけ入れて貰ってる。

それと水差しへたっぷりと入れて貰った。


さっそく指輪からミミ―肉のブロックを出す。

その肉を大きめの一口大に切る。

今朝買った野菜のオオニン(玉ねぎ代用)、ジンサン(ニンジン代用)

モイジャ(じゃがいも代用)、ウリキ(キュウリ代用)、マトト(トマト代用)

カベツ(キャベツ代用)、モロトー(コーン代用)を出して切り始めた。

そして指輪空間から干しワカメを出して水で戻した。

爺ちゃんは暇そうにしていたが、

「ちょっと森の中を見てくるぞい。グリンちゃんここをよろしくね」

『ノリリンわかったわ。ここを守ればいいのね。おっまかせ!』


爺ちゃんは、『スラちゃんは、いるかのう?』と声をかけている。

そしてホークとスラちゃんと爺ちゃんで何か話している。

話がまとまったのか、爺ちゃんの頭の上にスラちゃんが乗って

いつものように「ほい」と言って

ヒョコヒョコと空中を歩いて、ホークと一緒に楽しそうに飛んでいる。

爺ちゃんとスラちゃんとホークの姿が小さく豆粒みたいになった時、

『ドガーン』

『ゴォー』

『ベチャン』

『ギャー』

など様々な音と叫び声が聞こえて来た。

やがて静かになって、爺ちゃんとスラちゃんとホークが帰って来た。


「爺ちゃん、どこに行ってたの?今さぁすごい音や声が聞こえたよ」

「あぁ、今さっき大森林中の大量に発生してた魔物をやっつけて来た。

 ボスらしき奴と適当に強そうなやつを見繕って連れて来た」

「・・・もう終わっちゃたの?」

「まだまだアツシは弱いから、スラちゃんやホークも鍛えて来た。

 ご飯の後、仲間にできる奴はして、無理なら解体しよう。

 その後、大森林の中の魔石拾いや食材探しに行こうや」

「うーん、何もしてないのに依頼が終わっちゃったの?

 ・・・まぁいいか。爺ちゃんがすごく強いから安心したよ」


やがてグツグツ音と共にカレーの匂いが周りに漂っていく。

「おっ、この匂いは・・・あれじゃな。

 この世界であれが食べられるとは・・・感激じゃ」

『ノリリン、このいい香り・・・唾が出てくるわ』

「そうじゃろう、そうじゃろう。アツシと一緒で大正解じゃ」

「そうね。私も楽しみだわ」

突然、女神様が僕の隣に現れた。

「おぉ、女神様ご降臨じゃ、ありがたやありがたや」

「ねえ、…アッツン・・・私も食べたいよー」

「どうぞどうぞ、

 来られないようならお呼びするつもりだったんです。

 爺ちゃん曰く、この世界初めてのカレーだそうです」

「この香り・・・お腹にくるわ・・・唾が・・・」

『女神様、グリンも同じです。とても楽しみです』


やがてカレーが出来上がった。

爺ちゃんが大きなテーブルを出してその真ん中にお鍋が置かれた。

元の世界から持ち込んだ米をお皿に盛り、ワカメ野菜サラダを添えた。

この世界の木を彫って作ったスプーンとフォークを皆さんの前へ置いた。

もちろんグリンさんや妖精さん用の小さなスプーンとフォークは僕が昨夜作った。

鍋の横には、ドレッシングとマヨネーズを置いた。


みんなのお皿の米の上へたっぷりカレーをかけた。

「皆さま、どうぞ召し上がれ。ミミ―のカレーでございます」

「「『いっただっきま~す』」」

「モグモグ、このガツンと来る辛さとその奥から現れる甘さ・・・幸せじゃ

 それにこのホロホロまで煮込まれたミミ―肉、最高じゃ。

 このカレーにはやはり生ビールじゃ。ゴクリ・・・うー最高じゃ」

「これ・・・辛いけどとっても美味しい。手が止まらないわ」

『女神様・・・私ももう手が止まりません』

「『こんな美味しいもの食べてたら、太っちゃうかも・・・』」

「女神様、グリンちゃん、カレーは太らないと言われてるぞい」

「『???!!!そうなの・・・じゃおかわりし~ちゃお』」

二人がカレーを待っている間に、

爺ちゃんが注いだ生ビールを渡している。

「『プハー、最高。はぁーほんと今日の疲れが吹き飛ぶわ』」

「はい、おかわりです。どうぞ」

「『はぁーい、ありがとう。アッツン』」

「えーアッツンってなんじゃ?

 アツシのニックネームかのう。何かかっこいいのう」

「ノリリンも、かわいいわよ」

「わしはかわいいよりかっこいい方が・・・」

「だってノリリンが好きなお酒飲むお店の人は、

 みんなノリリン、ノリリンって呼んでるじゃないの?

 それでノリリンたら『なーんじゃ』と答えてるでしょ?

 だからそれでいいと思うわ」

「それは?!・・・はい、よろしいかと存じます。

 ですがその件は、その~なにとぞ妻には内緒に・・・」

「わかったわ。内緒にしてあげる。ノリリン貸しひとつね」

「うっ、何か嫌な予感が・・・まぁいいか・・・

 それよりも今はカレーとビールじゃ。う、美味い」

爺ちゃんはマヨネーズが好きでサラダにたっぷりとかけている。

「ワカメは髪の毛を生やすんじゃ。たっぷりと食べなければ・・・」

女神様もグリンさんも『美容に良さそう』とサラダを食べている。

「この緑色の葉っぱワカメっていうのね。

 確かよく似たものを“港のある町”で見たことがあるわねぇ」

「女神様、グリンさん、

 ワカメや野菜は美容にとってもいいと聞いていますから

 お二人には今よりももっともっとと思い、たっぷり入れました」

「本当にノリリンのお孫さんと思えないくらい素敵な考え方だわ」

「なんか・・・わし、ボロクソ言われている様な・・・

 まぁいいか・・・モグモグ。なんせ、カレーとビールは最高じゃ」

「『ノリリンには感謝してま~す』」と二人が笑っている。

戦いの前にもう爺ちゃんが終わらせてしまいました。

魔物界防御力最強の迷子のメタルスライムも仲間になりました。

まぁ美味しいカレーをみんなが幸せそうで良かったです。

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