第三話 消えた人間
※本作は、現実の国際犯罪に関する報道から着想を得て構成したフィクションです。
登場する人物・企業・事件・捜査内容などは創作であり、実在する特定の人物・企業・団体とは関係ありません。
解剖結果だけでは、名前は出なかった。
推定年齢、四十代後半から五十代半ば。
東アジア系。
DNA型も指紋も取れた。
だが照合先がなければ数字の列でしかない。
真壁は中国から日本へ入国した人物を中心に候補を潰し始めた。
二日目。
三日目。
そして四日目。
一人の記録で手が止まった。
中国籍の男性。
正規に日本へ入国している。
しかし、その後が妙だった。
さらに調べる。
もう一人。
もう一人。
五人。
全員、日本へ正規に入っている。
だが真壁が追える範囲では、その後の足取りが途中から見えなくなる。
そして五人とも、遺体ではなかった。
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翌朝。
真壁はいつも通り豆を挽いた。
モカ・マタリ。
ブラジル・サントス。
手回しミル。
八十度。
三十秒蒸らす。
その間も机の上には、五人の資料が広げられていた。
係長が通りかかった。
「朝からまたそれか」
「コーヒー?」
「違う。そっちだ」
五人の資料を指した。
真壁は湯を落としながら答えた。
「気になるんだよ」
「お前は何でも気にしすぎなんだ」
「そうか?」
「だからそこにいるんだよ」
係長は窓を指した。
真壁も窓を見た。
「明るくていいぞ」
「そういう意味じゃない」
「知ってる」
コーヒーが落ち終わった。
真壁は一口飲んだ。
少し考える。
「今日、ちょっと苦いな」
係長は何も言わずに去っていった。
真壁は五人の資料へ目を戻した。
男の名前を探していたはずだった。
いつの間にか、
**名前の分かっている人間たちを探すことになっていた。**
机の端には、水損したレシートのコピー。
**美宜佳**
**寧**
真壁はもう一口コーヒーを飲んだ。
やはり少し苦かった。
次は豆を一グラム減らそう。
五人の方は、減らすわけにはいかなかった。
お読み頂きありがとう御座います。
続きは明日、3話投稿予定です。
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