第二話 先に来た男
※本作は、現実の国際犯罪に関する報道から着想を得て構成したフィクションです。
登場する人物・企業・事件・捜査内容などは創作であり、実在する特定の人物・企業・団体とは関係ありません。
第二話 先に来た男
最初の三軒は空振りだった。
「見たことないね」
「分からんなあ」
「外国人なんて毎日来るから」
港の近くにある食堂で、四軒目だった。
店主は遺体の写真を見るなり言った。
「あんたら、何回も来るんだな」
真壁の手が止まった。
「何回も?」
「昨日も来たぞ」
「誰が?」
「知らんよ」
「警察ですか?」
「さあ」
真壁は椅子へ座り直した。
「警察手帳、見せました?」
「いや」
「警察だと言いました?」
「言ってないな」
「何を聞いたんです」
「同じようなことだよ。この男を知らないかって」
真壁は遺体の写真を指した。
「この写真を?」
店主は首を振った。
「違う」
「違う?」
「もっと普通の写真だった」
「普通?」
「生きてる写真だよ」
真壁は黙った。
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二軒目でも同じ話が出た。
三軒目でも出た。
謎の男は、真壁より少し先を歩いている。
しかも生前の写真を持っている。
午後三時過ぎ。
古いビジネスホテルで、真壁はその男を見つけた。
目が合った。
男が動いた。
真壁も動いた。
ホテルの裏口。
路地。
駐車場。
そして見失った。
「……五十六歳走らせんなよ」
膝に手をついて息を整えながら、真壁は思った。
逃げ方を知っている。
ただの知人ではない。
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県警へ戻ると、係長が言った。
「お前、何やってんだ?」
「聞き込み」
「聞き込みでなんでそんな汗だくなんだよ」
「健康のため」
「仕事中に健康になるな」
真壁は自分の机へ戻った。
窓際。
手回しミルを一度見た。
午後四時を過ぎている。
コーヒーを飲むか迷った。
十秒ほど考えて、やめた。
夜眠れなくなる。
こういうところだけは妙に合理的だった。
お読み頂きありがとう御座います。
続きは明日、3話投稿予定です。
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